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第2章:謎の町にて
人でない者
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だんだんと明るくなる。
石で囲まれた地下通路の奥。
冷たい空気は湿り気があって少し気持ち悪い。
古い木の扉から光が漏れている。
隙間から中を覗く事はできなかった。
ポコポコ。
ブーン。
機械的な音。
誰かがいる気配はなさそうだ。
扉を開けるとそこには、教会にあるとは思えない機械が並んでいた。
部屋の半分を埋めるような大きなコンピューターには、僕が両手を広げても全然足りないくらいの大型のモニターが付いている。
壁の一部はガラス張りになっていて、隣の部屋が見えた。
大きなカプセルがいくつも並んで中にはニンゲンの子供が入っていた。
ポコポコとカプセルの中で泡が立つ。
何かの液体で満たされたカプセルの中の子供たちは目を閉じ、ずっと眠りについているかのようだ。
カプセル一つに子供が一人。
ニンゲン製造工場。
頭にそんな言葉が浮かんだ。
父さん、母さんがいて、そして僕がいる。
ニンゲンには父親と母親から生まれると習った。
なのに、ここは、何だ。
僕が学んだ事は事実じゃないって事なのか?
僕の知ってる世界は全て偽物だったのか?
本当は僕も、こんな風に工場で生まれたんだろうか。
モニターにはたくさんの数字。
ゲージとパーセンテージ。
一桁から九〇%台まで様々。
栄養状態、成長段階、残り時間という表示。
本当にここはニンゲンを製造しているのだ。
その事実に吐きそうになる。
きっとこの町の人はこの工場で造られた人たちなんだ。
だから「私たちと同じじゃない」って僕に。何かが彼らとは違うんだ。
そう、彼らと……。
違う……?
だったら、やっぱり僕にはちゃんと父さんと母さんが、いる?
ロボットの両親だけでなく、本物の両親が……。
会いたい。
本物の両親がいるなら会ってみたい。
でも僕は最後の人類で。
だから唯一のニンゲンで。
あのお墓の中に両親のお墓があるかもしれない。
帰りたい。
あの町へ帰りたい。
出口を探す。
部屋を調べる。
カプセルの部屋。
まだ先に何かあるのか。
カプセルの間をすり抜け奥へと進む。
ポコポコ。
割らないように。
割らないように。
あいつらもここに気付くのだろうか。
いつ追ってくるか分からない。
ポコポコ。
思った以上に広い部屋を右へ左へ出口を探してさ迷う。
ポコポコ。
!?
遠くで音がしたような気がする。
足を止めて耳を澄ませる。
足元がいつの間にか濡れていた。
「救世主様?」
振り返ると風呂上がりのような姿の子供が立っていた。
「救世主様だよね? ずっと聞いていたよ。救世主様が僕らを素晴らしい世界へ連れて行ってくれるって。それでね、僕たちは進化するんだよ。シン人類ってのになれるんだって」
子供が一生懸命に語る。
僕が会ったあの人たちも同じ事を教えられてきたんだろうか。
うん、きっとそうなんだろう。
「僕は、お兄さんは、救世主じゃないよ」
「そうなの?」
「そうだ」
「じゃあ、偽者なの?」
「偽者かどうかは分からない」
「ふーん」
子供はどこかに行ってしまった。
本能的に出口を知っているのか、カプセルの中で教えられたのか。きっとついて行けば外に出られるはず。この町の人たちがカプセルから生まれたのなら、どこかから地上に出なければならないから。
程なく新しい部屋が見つかる。
ここからなら……。
「来たぞ。偽救世主だ」
そこには何人ものニンゲンが待ち構えていた。
彼らに捕まってしまったら僕はどうなってしまうのだろう。
僕はまた来た道を急ぎ戻る。
捕まるわけにはいかない。
エリーにもう一度会わなきゃ。
エリーに聞かなきゃいけない事がたくさんあるんだ。
僕が地下に来る時に使ったはしご。それで上に戻ろう。後ろから誰かが来た気配は無かったから。まだ安全なはずだから。
石で囲まれた地下通路の奥。
冷たい空気は湿り気があって少し気持ち悪い。
古い木の扉から光が漏れている。
隙間から中を覗く事はできなかった。
ポコポコ。
ブーン。
機械的な音。
誰かがいる気配はなさそうだ。
扉を開けるとそこには、教会にあるとは思えない機械が並んでいた。
部屋の半分を埋めるような大きなコンピューターには、僕が両手を広げても全然足りないくらいの大型のモニターが付いている。
壁の一部はガラス張りになっていて、隣の部屋が見えた。
大きなカプセルがいくつも並んで中にはニンゲンの子供が入っていた。
ポコポコとカプセルの中で泡が立つ。
何かの液体で満たされたカプセルの中の子供たちは目を閉じ、ずっと眠りについているかのようだ。
カプセル一つに子供が一人。
ニンゲン製造工場。
頭にそんな言葉が浮かんだ。
父さん、母さんがいて、そして僕がいる。
ニンゲンには父親と母親から生まれると習った。
なのに、ここは、何だ。
僕が学んだ事は事実じゃないって事なのか?
僕の知ってる世界は全て偽物だったのか?
本当は僕も、こんな風に工場で生まれたんだろうか。
モニターにはたくさんの数字。
ゲージとパーセンテージ。
一桁から九〇%台まで様々。
栄養状態、成長段階、残り時間という表示。
本当にここはニンゲンを製造しているのだ。
その事実に吐きそうになる。
きっとこの町の人はこの工場で造られた人たちなんだ。
だから「私たちと同じじゃない」って僕に。何かが彼らとは違うんだ。
そう、彼らと……。
違う……?
だったら、やっぱり僕にはちゃんと父さんと母さんが、いる?
ロボットの両親だけでなく、本物の両親が……。
会いたい。
本物の両親がいるなら会ってみたい。
でも僕は最後の人類で。
だから唯一のニンゲンで。
あのお墓の中に両親のお墓があるかもしれない。
帰りたい。
あの町へ帰りたい。
出口を探す。
部屋を調べる。
カプセルの部屋。
まだ先に何かあるのか。
カプセルの間をすり抜け奥へと進む。
ポコポコ。
割らないように。
割らないように。
あいつらもここに気付くのだろうか。
いつ追ってくるか分からない。
ポコポコ。
思った以上に広い部屋を右へ左へ出口を探してさ迷う。
ポコポコ。
!?
遠くで音がしたような気がする。
足を止めて耳を澄ませる。
足元がいつの間にか濡れていた。
「救世主様?」
振り返ると風呂上がりのような姿の子供が立っていた。
「救世主様だよね? ずっと聞いていたよ。救世主様が僕らを素晴らしい世界へ連れて行ってくれるって。それでね、僕たちは進化するんだよ。シン人類ってのになれるんだって」
子供が一生懸命に語る。
僕が会ったあの人たちも同じ事を教えられてきたんだろうか。
うん、きっとそうなんだろう。
「僕は、お兄さんは、救世主じゃないよ」
「そうなの?」
「そうだ」
「じゃあ、偽者なの?」
「偽者かどうかは分からない」
「ふーん」
子供はどこかに行ってしまった。
本能的に出口を知っているのか、カプセルの中で教えられたのか。きっとついて行けば外に出られるはず。この町の人たちがカプセルから生まれたのなら、どこかから地上に出なければならないから。
程なく新しい部屋が見つかる。
ここからなら……。
「来たぞ。偽救世主だ」
そこには何人ものニンゲンが待ち構えていた。
彼らに捕まってしまったら僕はどうなってしまうのだろう。
僕はまた来た道を急ぎ戻る。
捕まるわけにはいかない。
エリーにもう一度会わなきゃ。
エリーに聞かなきゃいけない事がたくさんあるんだ。
僕が地下に来る時に使ったはしご。それで上に戻ろう。後ろから誰かが来た気配は無かったから。まだ安全なはずだから。
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