上 下
15 / 32
第2章:謎の町にて

ケンタロー捕まる

しおりを挟む
 僕は囲まれてた。
 前にも後ろにも人、人、人。
 カプセルだらけの部屋で僕たちは追いかけっこをしていた。

「くそ! 素早い!」

「偽者め! 諦めて捕まるんだ!」

「嫌だ!」

 彼らはカプセルを壊さないように動く。
 僕はそれを上手く利用して逃げる。

「どのみち、出口は封鎖してある。逃げ切れはしないさ」

 そうなのだ。
 問題は出口に人を配して僕が出られないようにしている事だ。
 
 逃げ道は無いと言われてるようなものだ。それでもチャンスはくると信じて逃げる。右へ左へと捕まえようとする手をすり抜ける。

「はあはあ」

「息が切れてるぞ。はあはあ、偽者め」

「はあはあ。そっちこそ」

「ふふ。おい、交代だ」

 今まで出口を塞いでいた奴が出てくる。追い掛けてきた方は出口の所へ行き休み始めた。

「…………」

 今度の相手は無言で僕を追い始める。
 
 カプセルに手を付きながらも、何とか逃げきろうと踠く。
 一人が相手なら何とかなったかもしれないけど、こう何人もが相手じゃ……。

 バリン!

 カプセルの一つが割れる。
 こんな所で追いかけっこしてたら、遅かれ早かれこうなるとは思っていた。

 割れた途端に警告ランプが赤く点滅する。続いて大きな音。

 ブー! ブー! ブー!

 激しい警告音。

 この場にいる全員が動揺してた。
 
 いや、これはチャンスかもしれない。

 僕は隙を突いてこの部屋を抜け出せるんじゃないかと思った。
 出口へと急ぐ。

 予想通り、オロオロして出口から離れてしまっている。

 僕は急いで出口へと走る。

「しまった!」

 後ろで声がした。
 僕は残った力を振り絞って走るしかなかった。
 
「ご苦労だったな。まさか、自ら戻って来るとは……」

 僕は自分が来る時に使った道ではなく、反対の道を選んでしまっていたようだ。
 待っていたのは出口へと向かうはしごではなく、偽者救世主を捕らえようとする人々だった。

「もう逃げられんよ。偽救世主」

「何だ! 僕をどうするつもりだ!?」

 声を荒らげる。
 恐怖、不安、そんな感情が僕を叫ばせていた。

「僕は僕だ! 僕を捕まえても何も解決しないぞ! エリーだって僕を探すはずだ。そうなったら全員がひどい目に合うんだからな!」

「捕まえて、本物の救世主様を差し出させるのだ。あの女、絶対に救世主様を出させようとしないからな」

「き、救世主を出させてどうするんだ?」

「救世主様は我らをお救いになるのだ。我らを楽園に……」

「楽園って何だ?」

 僕は違和感を覚えた。

「貴様は知らなくて良い」

 僕にはもう逃げる体力は無かった。

「さあ、生け贄は捕らえた。今度こそ救世主様をお迎えしよう」

「救世主様を騙る悪魔め! 罰を!」

 僕は外へと連れ出される。

「罪人をここへ!」

「罪人を縛れ!」

「神よ! 罪人を捕らえましたぞ!」

 人々は勇んで僕を十字架に縛り付ける。
 僕には抵抗する力など残っていなかった。

「さあ、教会に立て籠る悪魔よ! 救世主様を出せ! 貴様の仲間と交換だ!」

 リーダーらしき男が教会に向かって叫んだ。
 教会からは何も反応が無かった。
しおりを挟む

処理中です...