転生者だらけの王都で無転生Fラン冒険者の最弱剣士が成り上がる!

田中マーブル(まーぶる)

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四章:王都攻防戦

48 決闘のようなもの

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「ん? 客か?」

 数人の男が小屋に入ってくる。
 皆がみな、屈強な体をした男だ。

「新入り?」

「今さら新しい奴が来てもなあ」

「おい、女がいるぜ」

 俺は男たちを睨む。

「何だ? ヤル気か?」

 男の一人が気持ち悪い笑みを浮かべる。

「表出な」

 リーダーと思われる男が顎で指図する。
 男たちはぞろぞろと外へ出ていった。

「アンタらも早く」

 促されるまま俺たちも外に出る。

「さて、どうやらアンタは仲間に入りたいようだが、実力のない者を容れるわけにはいかない」

 リーダー格の男は剣を構える。地面から奴の肩程まである大剣。その剣を下から振り上げるような体勢だ。
 黒く焼けた端正な顔。獲物を捉えるかのような鋭い目付き。本気度を窺える。
 小屋の外の広い敷地。
 他の男たちやマルチナたちは、俺とリーダー格の男を離れた位置から囲むようにして見守っている。

「受けよう」

 一言そう言って俺も剣を構えた。

「おいおい。あんな剣で敵うと思うのかい?」

「剣ごと斬られて終わりだな、ありゃ」

 周囲からそんな声が聞こえる。

 大丈夫だ。

 俺はマルチナたちにそう合図を送る。

「いくぞ!」

 男はそう叫び突進してくる。
 剣は引きずった状態。

 どうやって対処する?

 奴の剣とは反対の方に回り込もうと動く。そしてこちらから攻撃しようとした時だった。

 ニヤリと奴が笑った。

 パッと大剣を離すと体を回転させる。

「ハハハッ。決まったな!」

「得意のパターンだ」

 何が決まっただ?
 たしかに剣を振ろうとしたこっちの隙を突く攻撃だが、こちとら鎧を付けてるんだ。拳一つで倒されるわけが……。

「!?」

 蹴りが空を切る。
 もちろん拳ではなく蹴りがくる可能性も考慮してた。
 しかし、奴の蹴りはただの蹴りではなかった。

「ナイフブーツか」

「くくく。その通り。上手く躱したな。もう少しで首を取れたぞ」

 そう、奴のブーツに仕込まれた刃物が俺の首筋を狙ってたのだ。俺がもう一歩踏み込んでいればやられていた。
 奴が笑った瞬間の一瞬、ほんの一瞬だった。その一瞬に違和感を感じた俺は動きが止まってしまった。それが幸いした。

 お互いに間合いを測る。

 緊張感が場を満たす。

 ゆっくりと距離を保ちながら奴の周囲を回る。

 奴も俺から目を離さずゆっくりと動く。一歩、一歩とジリジリ移動すると大剣に手が掛かった。

「さあ、仕切り直しだ」

 奴がまた大剣を手にこちらに向かってくる。

 どうする?

 同じように躱すのは得策ではない。相手もその辺りは対策済みだろう。
 じゃあ、逆に大剣の方に動くか?
 それではあの剣に自ら斬られに行くようなものだ。
 いや、違う。
 大剣はその重さゆえ軌道を読むのが容易じゃないか。
 つまり狙うは……。
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