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四章:王都攻防戦
47 当然の事ながらアジトには人がいる
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「こんにちは」
俺たちは町外れにある敵のアジトと思われる場所に来ていた。
元は農場か何かだったようで柵の中に広い空き地があり、その端に小屋がポツンと建っていた。俺たちは小屋の前にいる。
「あ? 誰だ?」
小屋の中から野太い声が返ってきた。
「あの、私たち、田舎から出てきた冒険者なんですが、何か仕事はないかと思ってまして訪ねたんですが……」
「冒険者だと?」
「は、はい。王都の方は物々しくてこちらにやって来たんです」
「そうかそうか。王都はそんな風になっているのか」
キィと木製の扉が開く。
声から感じたイメージ通りのガタイの良い男が現れる。
「どうも。おや? 戦士が一人とお嬢さんが二人?」
「彼女たちも冒険者だ」
「ふむ」
男は少し伸びたヒゲをさすりながらマルチナとミファを見る。
「どうにも頼りなさそうなお嬢さん方だ。これじゃ戦力の足しにもならない」
「どうにかなりませんか? 俺たち、もうあまりお金もないんです」
俺は財布を逆さにして振ってみせる。
銅貨が三枚程地面に落ちた。
「あ! あ!」
マルチナが慌てて銅貨を拾い集める。
そして大事そうに拾った銅貨をポケットに入れた。
「おい! それは俺の金だ!」
俺は躊躇わずマルチナのポケットから銅貨を抜き取る。
「ちょっと! 触らないでよ!」
「うっさいな。お前が俺の金を盗るのがいけないんだろ」
「おいおい。こんな所でケンカすんな。と、とりあえず話は聞いてやるから小屋に入りな」
男が手招きして中に入るよう促す。
ここまで作戦通りだ。
マルチナに目配せして中に入る。
木造の小屋の中は簡素で中央にあるテーブルと数脚のイス、壁際に剣や槍が立て掛けられている以外には何もなかった。
そしてテーブルには一枚の地図。
遠目でははっきり分からない。だが、地図の真ん中辺りに城のようなマークがある事から王都周辺の地図だろうとは察しが付いた。
「この町には冒険者ギルドが無いみたいだが?」
俺は何も知らない風を装って尋ねる。
「そうだ。だからオレも冒険者じゃねえし、仲間にも冒険者じゃない奴はいくらでもいる」
「ならあの武器は何だ?」
「オレたちはこれから戦うのさ」
「それでさっきは戦力がどうとか言ってたのか」
「そうさ。これから戦うって時に足手まといになる女は要らねえのよ」
俺は内心ほくそ笑む。
「つまり、アンタたちは戦争でも起こそうと?」
「そんな大した事じゃあない。オレたちはな、冒険者になるために王都へ行った。だが、あそこの連中は転生者じゃないと冒険者として認められないって突っぱねたんだ。だからよ、オレたちはアイツらに目にもの見せたいんだよ」
「それで王都に攻め込むと?」
「そうだ。アンタも王都で相手にされなかった口だろ?」
「何でそう思う? そんなに弱そうに見えるか?」
如何にも心外そうに言う。
自分の装備品を見ながら不服そうに。
さあ、どう出る?
もっと喋ってくれるか?
「アンタはまだ良いさ。だがな、まともに剣を振る事さえできなさそうなお嬢さんを二人も連れてるんだ。まともな冒険者には見えねえな」
「一応彼女たちも冒険者だ。さっきも説明しただろ」
「だとしても役には立たねえよ」
「何でだ?」
「冒険者は冒険者らしいそれなりの格好ってもんがあるだろ。どう見ても戦士系じゃねえ。かと言ってヒーラーや魔法使いっぽい感じでもねえ。あとは吟遊詩人か商人くらいしか残ってねえんだ。とてもじゃないが戦場では役には立たんよ」
男はニヤニヤと笑う。何とも下品な顔になっていた。
「まあ、オレたちの相手してるなら仲間にしてやっても良いが」
マルチナとミファから嫌悪のオーラを感じた。
俺は奴を気持ち悪いと思った。きっと彼女たちもそう思ってるだろう。間違いない。
「オレたちの世話をしてくれるなら十分に役に立つからな。どうだ?」
ぐへへ、と笑いながらマルチナに触ろうとする男。
俺は思わず男の腕を払う。
見過ごすなんてできなかった。
「な、何するんだ」
「大事な仲間だ。変な事はするな」
「金がないんだろ? 言う事聞けば飯くらいは食わせてやるのに」
「あいにく、こっちにもプライドがあるんでね」
「ふん! まあ良いさ。だったらさっさと出ていきな!」
「それは困る」
「じゃあ言う事を聞きな」
「ここのボスはお前か?」
俺は剣を抜き、男の喉元に突き付ける。
「いきなり何だ!?」
「ボスはお前か?」
「ち、違えよ。オレはただの留守番だ」
「ボスはリヒトって奴か?」
「知らん。オレは知らん。冒険者になれずに帰る途中で知らない奴に誘われたんだ『王都に復讐しないか?』って」
「どんな奴だ?」
「す、すぐ来るよ。仲間の中にいる」
すぐに外が騒がしくなる。
ちょうど仲間とやらが戻ってきたらしい。
俺は剣を懐にしまった。
俺たちは町外れにある敵のアジトと思われる場所に来ていた。
元は農場か何かだったようで柵の中に広い空き地があり、その端に小屋がポツンと建っていた。俺たちは小屋の前にいる。
「あ? 誰だ?」
小屋の中から野太い声が返ってきた。
「あの、私たち、田舎から出てきた冒険者なんですが、何か仕事はないかと思ってまして訪ねたんですが……」
「冒険者だと?」
「は、はい。王都の方は物々しくてこちらにやって来たんです」
「そうかそうか。王都はそんな風になっているのか」
キィと木製の扉が開く。
声から感じたイメージ通りのガタイの良い男が現れる。
「どうも。おや? 戦士が一人とお嬢さんが二人?」
「彼女たちも冒険者だ」
「ふむ」
男は少し伸びたヒゲをさすりながらマルチナとミファを見る。
「どうにも頼りなさそうなお嬢さん方だ。これじゃ戦力の足しにもならない」
「どうにかなりませんか? 俺たち、もうあまりお金もないんです」
俺は財布を逆さにして振ってみせる。
銅貨が三枚程地面に落ちた。
「あ! あ!」
マルチナが慌てて銅貨を拾い集める。
そして大事そうに拾った銅貨をポケットに入れた。
「おい! それは俺の金だ!」
俺は躊躇わずマルチナのポケットから銅貨を抜き取る。
「ちょっと! 触らないでよ!」
「うっさいな。お前が俺の金を盗るのがいけないんだろ」
「おいおい。こんな所でケンカすんな。と、とりあえず話は聞いてやるから小屋に入りな」
男が手招きして中に入るよう促す。
ここまで作戦通りだ。
マルチナに目配せして中に入る。
木造の小屋の中は簡素で中央にあるテーブルと数脚のイス、壁際に剣や槍が立て掛けられている以外には何もなかった。
そしてテーブルには一枚の地図。
遠目でははっきり分からない。だが、地図の真ん中辺りに城のようなマークがある事から王都周辺の地図だろうとは察しが付いた。
「この町には冒険者ギルドが無いみたいだが?」
俺は何も知らない風を装って尋ねる。
「そうだ。だからオレも冒険者じゃねえし、仲間にも冒険者じゃない奴はいくらでもいる」
「ならあの武器は何だ?」
「オレたちはこれから戦うのさ」
「それでさっきは戦力がどうとか言ってたのか」
「そうさ。これから戦うって時に足手まといになる女は要らねえのよ」
俺は内心ほくそ笑む。
「つまり、アンタたちは戦争でも起こそうと?」
「そんな大した事じゃあない。オレたちはな、冒険者になるために王都へ行った。だが、あそこの連中は転生者じゃないと冒険者として認められないって突っぱねたんだ。だからよ、オレたちはアイツらに目にもの見せたいんだよ」
「それで王都に攻め込むと?」
「そうだ。アンタも王都で相手にされなかった口だろ?」
「何でそう思う? そんなに弱そうに見えるか?」
如何にも心外そうに言う。
自分の装備品を見ながら不服そうに。
さあ、どう出る?
もっと喋ってくれるか?
「アンタはまだ良いさ。だがな、まともに剣を振る事さえできなさそうなお嬢さんを二人も連れてるんだ。まともな冒険者には見えねえな」
「一応彼女たちも冒険者だ。さっきも説明しただろ」
「だとしても役には立たねえよ」
「何でだ?」
「冒険者は冒険者らしいそれなりの格好ってもんがあるだろ。どう見ても戦士系じゃねえ。かと言ってヒーラーや魔法使いっぽい感じでもねえ。あとは吟遊詩人か商人くらいしか残ってねえんだ。とてもじゃないが戦場では役には立たんよ」
男はニヤニヤと笑う。何とも下品な顔になっていた。
「まあ、オレたちの相手してるなら仲間にしてやっても良いが」
マルチナとミファから嫌悪のオーラを感じた。
俺は奴を気持ち悪いと思った。きっと彼女たちもそう思ってるだろう。間違いない。
「オレたちの世話をしてくれるなら十分に役に立つからな。どうだ?」
ぐへへ、と笑いながらマルチナに触ろうとする男。
俺は思わず男の腕を払う。
見過ごすなんてできなかった。
「な、何するんだ」
「大事な仲間だ。変な事はするな」
「金がないんだろ? 言う事聞けば飯くらいは食わせてやるのに」
「あいにく、こっちにもプライドがあるんでね」
「ふん! まあ良いさ。だったらさっさと出ていきな!」
「それは困る」
「じゃあ言う事を聞きな」
「ここのボスはお前か?」
俺は剣を抜き、男の喉元に突き付ける。
「いきなり何だ!?」
「ボスはお前か?」
「ち、違えよ。オレはただの留守番だ」
「ボスはリヒトって奴か?」
「知らん。オレは知らん。冒険者になれずに帰る途中で知らない奴に誘われたんだ『王都に復讐しないか?』って」
「どんな奴だ?」
「す、すぐ来るよ。仲間の中にいる」
すぐに外が騒がしくなる。
ちょうど仲間とやらが戻ってきたらしい。
俺は剣を懐にしまった。
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