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四章:王都攻防戦

46 敵の潜伏先が判明する

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「ん?」

 さっきの子ネコだ。
 マルチナと目を合わせると彼女は大きく頷いた。

「おかえりネコちゃん」

 ミファが屈んで両手を広げる。
 お迎えポーズだ。

「私のネコだからね」

 マルチナが頬を膨らませる。

「わ、分かってるよお」

 そう言いつつもネコを抱くミファ。
 離す気はなさそうだ。

「ふう。まあ良いわ。しばらくは抱っこしてて良いよ」

「やった」

 ミファはニコニコしてネコに頬擦りする。
 俺たちは宿へと歩く。
 町の人はチラチラと俺たちを見ている。
 冒険者が珍しいのだろう。この町に来てから他に冒険者らしき人を見ていないから。

「あー!」

 俺は思わず叫んだ。

 叫んだ瞬間、子ネコはミファの手から飛び出しどこかに走り去ってしまう。

「もう! ジンさん!」

「ご、ごめん」

「急にどうしたんですか?」

「あ、いや、あの子ネコ、アーマータイガーの子どもだって急に思い出したんだよ」

「それで?」

「つい声が出てしまった」

「驚いて逃げちゃったじゃないですか!」

「だからごめんって」

 俺は手を合わせて何度も頭を下げる。

「別に気にしなくて良いよ。私がテイムした子だから呼べば戻ってくるし」

 マルチナが呆れたように話す。

「良かった」

 ミファは胸を撫で下ろす。

「驚かせてすまなかった」

 俺は改めて二人に頭を下げた。

「それより早く宿に行こう」

 マルチナ?
 さっきからいつもと何か違うような。

   ーーーーーーーー

「気づいた?」

 部屋に入るなりマルチナが口を開く。

「何の事?」

 ミファが不思議そうに聞き返す。

「ジンさんは?」

「分かってるくせに」

 俺はマルチナにそう言い返した。

「マルチナが言いたいのは俺たちを付けてた奴がいた事か? それとも俺たちの話を聞いて慌ててアーマータイガーを追っていった奴の方か?」

「さすが」

 マルチナがドアを開けるとさっき逃げたはずの子ネコが入ってきた。

「あ!」

「だから言ったでしょ、ミファ」

 マルチナが子ネコを抱き抱える。

「ふんふん」

「会話できるのか?」

「テイムした子なら何となく意志疎通できるよ」

「す、凄いです」

「なるほどね」

 マルチナが子ネコを床に離す。

 子ネコはまたどこかに行ってしまった。

「さて」

「何か分かったのか?」

「うん。奴ら、町の北東にあるボロ小屋にたむろしてるみたい。人が出入りしてるって。小屋に何本も剣とか武器があったみたいだし、そこに装備品を置いて町中に出向いてるのね」

「なるほど。それで町には兵隊や冒険者みたいな格好の奴がいなかったのか」

「でも何でこの町を選らんだんでしょうか?」

 ミファが首を傾げる。

「ここは王都から近いから都合が良いのさ。ここで補給をして準備を進める。そして期を見て一気に王都へと攻めいる事ができる」

「たしかに」

「それにここには冒険者ギルドがないようだからな」

「?」

「関係あるの?」

「そりゃ冒険者やらギルド関係者がうろうろしてたら向こうも警戒して行動しなけりゃならないからな。王都に近いせいでこの町には冒険者ギルドを作る必要がなかったみたいだけど、逆に利用された形になってるんだ」

「む、難しくて頭が混乱してます……」

「まあ、無理に理解する必要はないさ。とにかく敵さんにとってこの町は都合が良かったって事さ」

「で、どうしますか?」

「今、攻めても俺たちの戦力では何もできない。何か策を考えないと……」

「そうですね。向こうは私たちを警戒してたようですし」

 俺たちは作戦を練る事にした。
 もう間もなく王都への進攻が始まるだろう。
 汗が頬を伝って滴る。
 何かアイデアはないか……。
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