転生者だらけの王都で無転生Fラン冒険者の最弱剣士が成り上がる!

田中マーブル(まーぶる)

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四章:王都攻防戦

55 王都陥落

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 ようやく戻って来た俺たちを待っていたのは王都の惨状だった。

 崩れた建物群、横たわる城の兵士たち、瓦礫があちらこちらに転がっている。

 どうやら市民はほとんどが避難していたようだ。一般人は誰一人見あたらない。

「あ、あんたは……?」

 兵士の一人が俺に話し掛ける。

「俺は、ジンだ。無転生のジン」

「くっ。援軍でも来たかと思えば、役立たずのFラン野郎かよ……」

 ふむ。

 こいつ、まだまだ元気らしい。

「そうだな。役立たずだ。だから、あんたは放っておく」

「ちょ、待てよ。せめて回復アイテムくらい出せよな」

「悪態つくくらいに元気じゃねえか。回復アイテムなんて無くても大丈夫だろ」

「国軍の兵士に向かって何て態度だ」

 仕方なくアイテムを出してやろうとした時だった。

 何かが上から飛んできて兵士の頭を貫いた。即死だった。

「これは槍か?」

「ですね」

「誰が……」

 俺たちは警戒を強める。

 どこから攻撃してきたというのだろう。

 辺りを見回しても特に誰かがいるようには思えなかった。
 倒れて動かなくなった兵士が数人いるだけ。

 !?

「危ない!」

 俺はマルチナを突き飛ばす。

 マルチナがいた所に槍が突き刺さった。

「あ、ありがと」

「何かが飛んでくる感じがしたんだ。しかし、正確に俺たちのいる所に槍を投げるなんてとんでもない奴がいるもんだ」

「ここにいたら危ないですね。ジンさん、退避しましょう」

 ミファが俺の手を引く。

 マルチナは腰を抜かしたのか、へたり込んだまま立ち上がれないでいた。そんなマルチナを何とか立ち上がらせると、俺たちは急いで王都からの脱出を試みた。

 時折、どこからともなく降ってくる槍。

 白い柄に異国の文字が刻まれている美しい槍。青い魔法石が刃の付け根で光っていた。

「魔槍グングーニル……」

「何だそれは?」

 ミファの言葉に反応してしまう。

「異世界の神話に出てくる槍の名前です。神々の王が操る百発百中の魔法の槍」

「百発百中……」

「そうです。投げた槍は必ず敵を貫き、そして主の手に返るという恐ろしい武器です」

「魔法の槍、か」

 さっきまであった槍はすでに消えていた。持ち主の手に戻ったのだろう。
 なるほど。
 連続で攻撃してこないわけだ。

 早く脱出しないと。

 いつまでも攻撃を避け続けるなんて芸当、ほぼ不可能な話なんだから。
 敵の位置が把握できない限りこちらから攻撃を仕掛けるのも無理。
 今、俺たちにできる事は王都から無事に脱出して逃げ切る事くらいだ。

「もう少しだ。門が、出口が見える」

 振り返って二人に声を掛ける。

「危ない!」

 俺の体は勝手に動いていた。

「ジンさん!」

「きゃあああああ!」

 激痛が走る。
 右胸に槍が突き刺さっている。

 ああ。

 良かった。

 ミファは無事だったようだ。

「ぐうあああ!」

 俺は渾身の力を籠めて槍を折ろうとした。が、そう簡単に折れるような代物ではなかった。

「ミファ。とにかくジンさんを王都の外まで運ぶよ」

「ぐすっ。は、はい!」

 俺は二人に支えられどうにか王都から出る。

「はあ、はあ」

 息をするのが辛い。

 俺はこのまま死んでしまうのか……。

 そんな事さえ頭をよぎる。

「ジン! ジンじゃないか! どうした!?」

 誰かが来たようだ。

 この声、バランだ。

「大丈夫だ。ヒーラーと一緒に行動しててラッキーだった」

 俺はもう目を閉じたまま、見る事も話す事もできないような状態だった。暖かなエネルギーを感じたのは覚えている。その後は気を失ったらしく何も記憶にない。

 気が付いたらベッドで寝ていたのだ。

 気を失う前、確かにバランがこう言ったよう聞こえた。

「王都は落ちた。わしらは、王都を守れなかった……」と。
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