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その十六
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席に着く頃には完全に涙はかわいていた。
顔を上げればバルドと目が合う。
「待った?」
「いえ。
……貴女が俺を気遣ってくれるなんて……夢でも見ているのでしょうか?」
「現実だ現実」
気遣ったつもりもさらさらない。
いわゆる社交辞令ってやつだよ。
「でも意外」
「なにがです?」
「隣に座るかと思ってた」
バルドの座る席は私の正面。
ちゃっかり隣に座っているのだろう、と予想していたので純粋に驚く。
「俺の心臓が保ちません」
「なるほど。……だったらなぜ私と同じ馬に乗れた!?」
「いえ……それは……その……」
目をそらすバルド。
恥ずかしがるような理由、あるのだろうか?
「答えなくていいよ」
一種の恐怖を感じ、聞くのをやめる。
答えが怖い。
「そうですか」
ホッとしたようでどこか残念そうな微笑を浮かべるバルドになんとなく引っかかりを感じつつも、運ばれてきた料理に手をつける。
「美味しい……」
つい口の前に手をかざしてしまったその料理。
冷製スープ……カボチャかな……?
「これ、カボチャ?」
「ええ。喜んで頂けました?」
「……え?」
「昔からアメリアはカボチャが好きなので、家の庭園で作らせたんです」
「ふーん、私のために作ったんだ……」
皮肉のような口調。
「アメリアのために、作ったんです」
自分でも幼いとは思ったけれど、『アメリアのため』という言葉に苛立ちを覚えてしまった。
アメリアのため……アメリアのため、か。
私のためであって私のためでないソレ。
さっきまで美味しいと思えたそのスープは、味気なく感じた。
顔を上げればバルドと目が合う。
「待った?」
「いえ。
……貴女が俺を気遣ってくれるなんて……夢でも見ているのでしょうか?」
「現実だ現実」
気遣ったつもりもさらさらない。
いわゆる社交辞令ってやつだよ。
「でも意外」
「なにがです?」
「隣に座るかと思ってた」
バルドの座る席は私の正面。
ちゃっかり隣に座っているのだろう、と予想していたので純粋に驚く。
「俺の心臓が保ちません」
「なるほど。……だったらなぜ私と同じ馬に乗れた!?」
「いえ……それは……その……」
目をそらすバルド。
恥ずかしがるような理由、あるのだろうか?
「答えなくていいよ」
一種の恐怖を感じ、聞くのをやめる。
答えが怖い。
「そうですか」
ホッとしたようでどこか残念そうな微笑を浮かべるバルドになんとなく引っかかりを感じつつも、運ばれてきた料理に手をつける。
「美味しい……」
つい口の前に手をかざしてしまったその料理。
冷製スープ……カボチャかな……?
「これ、カボチャ?」
「ええ。喜んで頂けました?」
「……え?」
「昔からアメリアはカボチャが好きなので、家の庭園で作らせたんです」
「ふーん、私のために作ったんだ……」
皮肉のような口調。
「アメリアのために、作ったんです」
自分でも幼いとは思ったけれど、『アメリアのため』という言葉に苛立ちを覚えてしまった。
アメリアのため……アメリアのため、か。
私のためであって私のためでないソレ。
さっきまで美味しいと思えたそのスープは、味気なく感じた。
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