単話完結のショートストーリー集

ヤギー

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読心能力

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「君、かわいいね」

 俺は人の心を読めるナンパ師。今日も一人、やれそうな子に話しかけていた。

「何よ、あんた」

 気の強そうな子。こんな子が可愛く喘ぐのがたまらなく好きだ。

「単刀直入に言うけど、君と付き合いたい。どうかな?」
「いや、あたし彼氏いるんだけど」

 彼氏持ちか。こんなにかわいいなら当然か。

『彼氏はいるけど、喧嘩中⋯⋯。嫌なこと思い出させんなよ』

 へえ、喧嘩してるんだ。これはチャンスだな。

「そうなんだ。今日は一緒にいないの?」
「あんたには関係ない」
「喧嘩してる、とか?」
「⋯⋯」

 無言で睨まれる。

「理由、当ててみようか?」
「はあ?」

『当てるも何も、無いし。ただ、あたしのことをわかってくれないだけだから』

「理由はね、自分のことを理解してくれないから。当たってるでしょ?」
「⋯⋯は? 当たってないし」

『当たってるけど、誰にでも当てはまることじゃん』

 まあ、そうだな。それじゃあ、

「今思ってること、当ててあげようか」
「外れてたらどっか行ってよ」
「じゃあ当たってたらデートして?」
「当てたらね」

『どうせ当たらないし、偶然当たっても違うって言えばいいや』

「じゃあ、何か考えて。具体的なヤツがいいな」

『まあ、考えるか。私の悩みは胸が小さいこと。ま、どうせわかんないだろうけど』

「ふうん、俺はかわいいと思うけどね」
「⋯⋯え、何が?」
「胸が小さいこと。今想像したよね?」

『嘘? なんで?』

「ま、まぐれよ。もう一問よ!」
「ええ? じゃあそれも当てたらデートの最後にホテルに行ってくれる?」
「え? い、いいわよ。当ててみろ!」

『彼氏のえっちが気持ち良くない』

「それでいい? 俺なら気持ちよくさせてあげるよ?」

『な、何者よ、こいつ!』

「デート、行ってくれるかい?」
「⋯⋯」
「ホテルもいいよね?」
「⋯⋯」
「君のことが好きになってしまったんだ。俺は君に尽くすよ。俺は君のこと、手に取るようにわかるから、したいこともされたいこともわかるんだ」

 そう言って彼女の手を、両手の指先で恭しく持つ。

「好きなんだ。デートして欲しい」
「で、でも⋯⋯」
「一日だけでいい。それで諦めるから」

 誠心誠意、真面目ぶって言う。当然、演技だ。こうするとこの女はなびく。

『顔も悪く無いし、なんかあたしのこと好きって言ってくれるし⋯⋯、一日だけなら、いいかも』

「今日だけなら⋯⋯、明日からはすっぱり忘れてくれるなら、いいよ?」
「本当か! 本当にいいのかい?」
「いいよ、もう⋯⋯」

『こんなに喜んじゃうの?』

「嬉しいよ! 一日だけでも天にも昇るようだ! じゃあ早速行こうか。どこに行きたい?」
「当ててみてよ」

『ホテルに行きたい♡』

「いいよ、行こうか。気持ち良くしてあげるよ」

 逃さないように手を取り、ホテル街へと連れて行った。

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