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双星の落日
双極星
しおりを挟む空を⾒上げれば、そこには常に「絶望」が浮かんでいた。
この世界――⻯界(DragonRealm)は、⼆つの惑星が互いの重⼒で引き合う双⼦星によって成り⽴っている。
⼀つは、緑と⽔に恵まれ、⾼度な知性と魔法⽂明が栄える「⽩銀の星(Argentum)」。
もう⼀つは、有毒なガスとマグマに覆われ、⼒こそがすべての魔獣たちが跋扈(ばっこ)する**「漆⿊の星(Obsidia)」**。
⽩銀の星の⾸都、クリスタルパレス。
透き通るような尖塔が林⽴し、空には翼を持たない⻯たちが魔導船(マナ・シップ)で⾏き交う、⾼度な⽂明都市だ。
その最上階にあるババルコニーで、銀⾊の髪をした少⼥が、憂いを帯びた瞳で空を⾒上げていた。
おしん(Oshin)。
⼈の姿を取っているが、その正体はこの星の王族、シルヴァードラゴンの最後の姫君だ。
彼⼥の視線の先には、空の半分を覆い尽くすほど巨⼤な、どす⿊い惑星が不気味に脈動していた。
「……また、近づいている」
おしんは呟いた。
彼⼥の指先には、⼩さな重⼒球が浮かんでいる。物理法則を無視して空間を歪めるその⼒は、王族だけに許された絶対防衛の要(かなめ)だ。
「恐れることはありません、おしん」
背後から、慈愛に満ちた声が響いた。
振り返ると、そこには光り輝くドレスを纏った⼥性が⽴っていた。
おしんの⺟であり、この星の守護神と呼ばれる存在だ。
⼈の姿をしていても、その背後には⼭脈をも超える巨⼤な銀⻯の幻影(オーラ)が揺らめいている。
「お⺟様……。でも、ブラックドラゴンの波動が強まっています。あちらの星から、空間転移の準備をしている気配が……」
「奴の狙いは、我らシルヴァードラゴンの根絶。そして⼆つの星を強制的に融合させ、混沌の世界を作ること」
⺟は静かに、しかし断固として⾔った。
「ですが、私がいる限り結界は破らせません。我ら⼀族は、悠久の時を超えてこの星の知性を守り抜いてきたのですから」
⻯に寿命はない。
⽼いることも、病むこともない。
だが、殺されれば消滅する。
かつて数多(あまた)いたシルヴァードラゴンの⼀族は、ブラックドラゴンとの永きにわたる戦争で次々と討たれ、消滅していった。
今や残された純⾎の守護⻯は、この⺟と娘の⼆⼈だけとなっていた。
「私の⼒など、まだ未熟です」
おしんは唇を噛んだ。
「重⼒制御も、せいぜい岩⼭⼀つを潰すのがや
っと……。空間ごと転移してくる奴らには……」
「⼒ではありません」
⺟はおしんの頬に⼿を添えた。
「お前に必要なのは、守りたいと願う『⼼』です。それがいつか、種族の壁を超えた新たな希望(シンジ)を紡ぐことになるでしょう」
その時だった。
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