【ひっそり】たたずむ効果屋さん

龍尾

文字の大きさ
25 / 51

?????(2)

しおりを挟む
「何故これだけ探して見つからない?」

 夜も深くなってきた頃、ナコが率いる白装束の男達は街中でルーチェを捜索していた。街の出入り口から酒場や商会。夜に開いている場所は全て回った。唯一の情報は、冒険者組合にボロボロの貴族がやってきたという噂があることだけ。誰かに匿われているわけでもなければ、見つからないはずがなかった。

「仕方ない。一度しか使えないが、捜索の奇跡を使うか」

「それで捕まえればいいだけのことだからな」

 黒師から念のためにと渡されていた箱をナコは取り出す。それは中に探したい人の血を入れることで対象を探し出すことのできる呪具だ。ルーチェの生贄の血を分析するために採取した血を使えば、その呪具でナコはルーチェを見つけることができる。ただし、採取した血は一回分しかなかった。

「よし、箱に血を垂らした。後は待つだけか……」

 ルーチェの血を捧げられた箱が淡い光を放つ。光は形を変えて蝶の姿となった。ひらりひらりと羽を広げて、光の蝶は闇夜を進んだ。

「あっちだ。けど、これは裏路地に向かってるのか?」

 何者かにルーチェは保護されているのかと思っていたナコは、光の蝶がどんどん人気がない方へ進み困惑する。そうして蝶を追いかけた先、ナコたちを遮ったのは黒髪の青年だった。

「おや、どうも。フェクトと申します。貴方達は探し人の最中でしょうか?」

 狭い路地に立ちはだかった青年はフェクトと名乗りながらにこりとした笑顔を浮かべた。

「あぁ、そうだ。このような人相の少女を探している。心当たりはあるか?」

「あぁ、はい。もちろんですとも」

 フェクトに白装束の一人がルーチェの人相描きを見せて問いかける。するとフェクトは考えるように斜め上を見上げた後に、小さく頷いた。

「居場所を教えてくれ」

 白装束がフェクトに詰め寄る。けれどフェクトは気圧された様子もなくにこにこと笑っていた。不気味な人だとナコは一歩後退りする。

「構いませんが、貴方達は何を差し出してくれるのでしょう?」

「はっ、なんだ見返りか。何でもくれてやるぞ。金だろうが命だろうがくれてやる。私達の崇高な使命の前には、命さえ惜しくないのだからな」

 フェクトの現金な問いかけに白装束の一人が笑いながらそう返した。フェクトはその言葉を嬉しそうに聞いて頷く。

「わかりました。確認ですが、その女性に貴方を会わせれば良いのですね? その代わり、何でもいただけると」

「あぁ、その通りだ」

「他の方々も?」

 フェクトはナコを含めた白装束達全てに視線を向けた。その視線を受けた白装束達はナコを除いて一様に頷きを返す。ナコだけは、フェクトの不気味さに頷きを返すことができなかったのだ。

「承りました。では……」

 パチンとフェクトが指を鳴らした瞬間、白装束の一人が倒れ伏す。それはフェクトと言葉を交わしていた白装束の一人だ。

「何を……」

 咄嗟に倒れた白装束に寄った一人が、その脈を確認して言葉を失う。たしかに倒れた白装束は死んでいたのだ。

「命をいただけるとのことでしたので」

 にこりとした笑みを崩さぬままにフェクトは悪気のない様子で白装束達に近寄った。それだけで、一人また一人と白装束が倒れていく。

「何が……。何が起こってるんだ!」

 白装束の一人が錯乱して叫ぶ。それも束の間、その白装束も即座に死んだ。

「おかしい! 何故倒れた奴らは死んだのに転化しないんだ!」

 自らの命を差し出すことも躊躇わないと言っていた白装束達が、激しく動揺をしていた。

「転化……。生贄をそう呼んでいるのですか。だから貴方達は死を恐れていなかったと。ですが、変なことを言いますね。命を先に私に差し出したのだから、貴方達の信じる者へ届けられるはずもないでしょうに」

「そんな! 我らが主にこの身を捧げることもできないというのか! 先ほどの話は無しだ、逃してくれ! 頼む!」

 ばたばたと白装束が倒れていく中で、一人がフェクトに擦り寄る。しかし、フェクトが冷たい目で見つめただけでその白装束も倒れ伏してしまったのだ。

 そこで白装束達は半狂乱となり逃げだし始めた。

「おや、逃げるのですか? まぁ、いいでしょう。十分に私は利を得られましたからね」

 逃げ惑う白装束を見つめてフェクトは冷酷に笑うと右手を掲げる。そこの上には、脈動する光のようなものがあった。

「【トクトク】と刻む命の効果。なかなかこれは得られませんからね。ところで、貴方様は逃げないので?」

 手のひらの光を見つめていたフェクトは、未だ逃げないナコに視線を移してにこりと微笑む。その笑顔を受けて再び後退りながらも、ナコは逃げ惑うことはなかった。

「ルーチェはお前が匿っているのか?」

「えぇ、現状は」

「そうか、ならば伝えておけ。お前がこの街にいる限り、我らは必ずお前を捕まえると」

「承りました。では貴方様の上に立つ者にはこれを渡すといいでしょう。逃げた罪は問われないはずですよ」

 ナコの言葉に頷いたフェクトは、脈動する腕輪を一つ投げ渡した。それは、命の効果を付与した腕輪だ。

『助けて。私を主へと導いて』

 腕輪から声が聞こえて、ナコは背筋を震わせた。死んだ白装束の命がその腕輪に宿っていると気がついたのだ。そしてナコが腕輪から再び視線をフェクトに向けようすると、すでにフェクトの姿はどこにもなくなっていた。

 捜索の蝶も消えルーチェの居場所はわからず、従えていた白装束達も死ぬか逃げた状況にナコは深く息を吐く。

「ふぅ、戻るか」

 誰にともなく呟いたナコは、王城へと戻っていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

戦国転生・内政英雄譚 ― 豊臣秀長の息子として天下を創る

丸三(まるぞう)
ファンタジー
戦国時代に転生した先は、豊臣秀吉の弟にして名宰相――豊臣秀長の息子だった。 現代では中世近世史を研究する大学講師。 史実では、秀長は早逝し、豊臣政権は崩壊、徳川の時代と鎖国が訪れる。 ならば変える。 剣でも戦でもない。 政治と制度、国家設計によって。 秀長を生かし、秀吉を支え、徳川の台頭を防ぎ、 戦国の終わりを「戦勝」ではなく「国家の完成」にする。 これは、武将ではなく制度設計者として天下を取る男の物語。 戦国転生×内政改革×豊臣政権完成譚。 (2月15日記) 連載をより良い形で続けるため、更新頻度を週5回とさせていただきます。 一話ごとの完成度を高めてお届けしますので、今後ともよろしくお願いいたします。 (当面、月、水、金、土、日の更新)

処理中です...