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ルーチェ(4-3)
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「だめだ、勝てっこない! あと、何体倒せばぐぁっ!」
誰かの悲痛な叫び声が響く。
戦場のあちこちで冒険者達が怪我を負っていた。
続く戦闘に減らない敵。疲れと絶望感から冒険者達は攻撃を避けられなくなっていのだ。
「クロ、交代頼む。悪いが、少し休憩させてくれ」
誰よりも魔物に突っこんで戦っていたアーヴェンが息も絶え絶えにルーチェ達の側へ戻ってきた。
しかし、そうなれば魔物達がより前進してくるのも当然のこと。それを押し留めるためにクロが魔物達へと向かって行った。
「もう仕方ないわね! 術師を前に行かせるなんて普通あり得ないんだから!」
影の刃を振り回しながら魔物を刻んでクロは前進する。その後ろ姿をアーヴェンとルーチェは見送るしかなかった。
剣気を常にまとわせて戦う戦士である二人は既に消耗しきっていたのだ。
「それにしてもまずいな。強力な魔物を倒すために高位の冒険者は出払っている。このままだと無防備な街が襲われるぞ」
「それに、本来なら戦いに参加してくれるはずの王国兵も動いてないですからね」
周囲で傷ついていく冒険者を険しい顔で見つめながらアーヴェンとルーチェは言葉を交わす。
「ルー、今からでも逃げるか? 安全な道に出るくらいまでなら今の俺でもどうにか守れるかもしれないぞ」
「何を言ってるんですか。わたくしはこの街を見捨てませんよ」
「……そうか。お前には死んで欲しくないんだがな。なら、もう少し頑張るとするか」
アーヴェンは苦笑いを浮かべて槍に再び剣気を練り上げた。限界を超えてなお絞り出した魔力は生命力そのものだ。
「それ以上戦ったらアーヴェンさんの命が……」
「別に死ぬわけじゃない。……俺はな、お前たちとの冒険が楽しかったんだ。金に固執するよりも冒険自体を楽しむお前達との冒険が楽しかった。だからな……」
槍に収束する剣気は次第に強さを増していき、可視化できるほどにまで至る。
「せっかくの冒険を、こんなところで終わらせたくないんだ」
再びアーヴェンは魔物の群れの中へと飛びこんでいった。
連続する爆発音、飛び散る魔物の血肉。アーヴェンの捨て身の攻撃は魔物の群れを大きく削る。
それでも、魔物は減らなかった。大きく空いたあなを埋めるように周囲の魔物がアーヴェンに集まっていく。
「どうすれば……。どうすれば魔物達を全て倒せるの?」
傷ついていく仲間達を見ることしかできずにルーチェは必死に考えた。
減り続ける体力と魔力。回復する余裕もない戦況。考えるほどに詰んでいるという絶望感がルーチェを襲う。
そうして頭を抱えそうになったその時、ルーチェの目の前でとうとうクロが魔物の振り下ろした腕に直撃し吹き飛ばされた。
ぐったりと横たわるクロの姿。止めの一撃を加えようと、魔物がクロに迫る。
ドクンッと心臓が跳ねた。
「クロ!」
頭が真っ白になる感覚。絶望が大きく口を開けルーチェを飲みこもうとしていた。
ドクドクと巡る血が煩い。魔物の咆哮も、冒険者達の叫び声もただ煩かった。
ただルーチェは仲間達を救う方法を考える。自分にできることは何か。どうすれば魔物達を全て倒せるか。
「全て、倒す? ……ちがう」
全て倒す必要などない。魔物を追い払えさえすればいいのだ。
魔物は何故街に向かうのか。それは背後に迫るより強い魔物達から逃げるため。恐怖に駆られているのだ。
「より強い恐怖で、押し返す……」
魔物を圧倒できるような恐怖。ルーチェは懐にしまった瓶を思い出す。けれど、それだけでは足りない。
より相手を威圧できれば。そう考えたとき、ルーチェは自らに付与された効果とアーヴェンの言葉を思い出した。
【ピリピリ】と周囲を威圧する敵意。それではまだ足りない。だが、アーヴェンが言った通りに敵意をより強めることができれば。
集中し、自らの効果を意識する。それは剣気を練り上げるのに似ていた。
敵意を研ぎ澄まし、殺意に。ただそれだけを意識したとき、ルーチェを巡る血が何かと結びついた。
ドクンッと再び心臓が跳ねる。
「アーヴェン!」
魔物の群れの中で奮闘するアーヴェンに声をかけながら、ルーチェは駆けた。
クロを助けなければいけない。魔物の群れを超えた先に倒れ伏すクロに向けてルーチェは走る。
「俺を踏み台にしろ!」
ルーチェの目的を察したアーヴェンが咄嗟に屈んで手を差し出した。
ルーチェはアーヴェンの手に足を乗せる。
「行くぞ!」
アーヴェンの手に力が入るのと同時、ルーチェは高く跳び上がった。
上から見下ろす魔物の群れ。その先、クロに腕を振り下ろす直前の魔物が見える。
間に合わない。そう確信したルーチェは、【キンッ】と研ぎ澄ました殺意を一気に解き放つ。
刹那、全ての魔物がルーチェを見上げて固まった。
喉元に剣を押しつけられような感覚に魔物達は動きを止めたのだ。
「死になさい!」
空中で練り上げた剣気を着地と同時に放つ。クロを殺そうとしていた魔物の首が一瞬で切り落とされた。
同時に全ての魔物が首を押さえて倒れ伏す。自らの首が切られたと錯覚したのだ。
「クロ!」
「うっさい、わね。アタシの魔法、忘れたの? けほっ、背中打って動けなかっただけ、よ」
煩わしそうに顔を歪めるクロを見てルーチェは安堵に息を大きく吐き出す。
そして、ようやくルーチェは魔物達の異変に気がついた。
「怯えてる。これなら……」
懐から飛び出した瓶を目の前の魔物に投げつける。パリンッと割れた瓶から黒い靄が漏れ出し、魔物を包んだ。
瞬間、【ぞわぞわ】とした恐怖に魔物の身体がガクガクと震える。その震えは、次々に魔物の群れへと伝染していった。
「みなさん、あと少しです! 魔物達を混乱させてください!」
ルーチェが草原を見渡し、声を響かせる。
その声に、魔物と同様にルーチェの殺意にあてられて呆然としていた冒険者達が闘志を取り戻した。
「よくわからんが、いける! いけるぞ!」
誰ともなく雄叫びを響かせ、無防備な魔物へと冒険者は斬りかかる。
魔物は、逃げることさえできずに切り裂かれた。その様子を見つめていた魔物が、泡を吹いて気絶する。
はたまた、半狂乱になって逃げる魔物まで現れた。
大混乱に落ちいる魔物の群れ。勝鬨を響かせる冒険者。戦況は一気に冒険者に傾いていた。
誰かの悲痛な叫び声が響く。
戦場のあちこちで冒険者達が怪我を負っていた。
続く戦闘に減らない敵。疲れと絶望感から冒険者達は攻撃を避けられなくなっていのだ。
「クロ、交代頼む。悪いが、少し休憩させてくれ」
誰よりも魔物に突っこんで戦っていたアーヴェンが息も絶え絶えにルーチェ達の側へ戻ってきた。
しかし、そうなれば魔物達がより前進してくるのも当然のこと。それを押し留めるためにクロが魔物達へと向かって行った。
「もう仕方ないわね! 術師を前に行かせるなんて普通あり得ないんだから!」
影の刃を振り回しながら魔物を刻んでクロは前進する。その後ろ姿をアーヴェンとルーチェは見送るしかなかった。
剣気を常にまとわせて戦う戦士である二人は既に消耗しきっていたのだ。
「それにしてもまずいな。強力な魔物を倒すために高位の冒険者は出払っている。このままだと無防備な街が襲われるぞ」
「それに、本来なら戦いに参加してくれるはずの王国兵も動いてないですからね」
周囲で傷ついていく冒険者を険しい顔で見つめながらアーヴェンとルーチェは言葉を交わす。
「ルー、今からでも逃げるか? 安全な道に出るくらいまでなら今の俺でもどうにか守れるかもしれないぞ」
「何を言ってるんですか。わたくしはこの街を見捨てませんよ」
「……そうか。お前には死んで欲しくないんだがな。なら、もう少し頑張るとするか」
アーヴェンは苦笑いを浮かべて槍に再び剣気を練り上げた。限界を超えてなお絞り出した魔力は生命力そのものだ。
「それ以上戦ったらアーヴェンさんの命が……」
「別に死ぬわけじゃない。……俺はな、お前たちとの冒険が楽しかったんだ。金に固執するよりも冒険自体を楽しむお前達との冒険が楽しかった。だからな……」
槍に収束する剣気は次第に強さを増していき、可視化できるほどにまで至る。
「せっかくの冒険を、こんなところで終わらせたくないんだ」
再びアーヴェンは魔物の群れの中へと飛びこんでいった。
連続する爆発音、飛び散る魔物の血肉。アーヴェンの捨て身の攻撃は魔物の群れを大きく削る。
それでも、魔物は減らなかった。大きく空いたあなを埋めるように周囲の魔物がアーヴェンに集まっていく。
「どうすれば……。どうすれば魔物達を全て倒せるの?」
傷ついていく仲間達を見ることしかできずにルーチェは必死に考えた。
減り続ける体力と魔力。回復する余裕もない戦況。考えるほどに詰んでいるという絶望感がルーチェを襲う。
そうして頭を抱えそうになったその時、ルーチェの目の前でとうとうクロが魔物の振り下ろした腕に直撃し吹き飛ばされた。
ぐったりと横たわるクロの姿。止めの一撃を加えようと、魔物がクロに迫る。
ドクンッと心臓が跳ねた。
「クロ!」
頭が真っ白になる感覚。絶望が大きく口を開けルーチェを飲みこもうとしていた。
ドクドクと巡る血が煩い。魔物の咆哮も、冒険者達の叫び声もただ煩かった。
ただルーチェは仲間達を救う方法を考える。自分にできることは何か。どうすれば魔物達を全て倒せるか。
「全て、倒す? ……ちがう」
全て倒す必要などない。魔物を追い払えさえすればいいのだ。
魔物は何故街に向かうのか。それは背後に迫るより強い魔物達から逃げるため。恐怖に駆られているのだ。
「より強い恐怖で、押し返す……」
魔物を圧倒できるような恐怖。ルーチェは懐にしまった瓶を思い出す。けれど、それだけでは足りない。
より相手を威圧できれば。そう考えたとき、ルーチェは自らに付与された効果とアーヴェンの言葉を思い出した。
【ピリピリ】と周囲を威圧する敵意。それではまだ足りない。だが、アーヴェンが言った通りに敵意をより強めることができれば。
集中し、自らの効果を意識する。それは剣気を練り上げるのに似ていた。
敵意を研ぎ澄まし、殺意に。ただそれだけを意識したとき、ルーチェを巡る血が何かと結びついた。
ドクンッと再び心臓が跳ねる。
「アーヴェン!」
魔物の群れの中で奮闘するアーヴェンに声をかけながら、ルーチェは駆けた。
クロを助けなければいけない。魔物の群れを超えた先に倒れ伏すクロに向けてルーチェは走る。
「俺を踏み台にしろ!」
ルーチェの目的を察したアーヴェンが咄嗟に屈んで手を差し出した。
ルーチェはアーヴェンの手に足を乗せる。
「行くぞ!」
アーヴェンの手に力が入るのと同時、ルーチェは高く跳び上がった。
上から見下ろす魔物の群れ。その先、クロに腕を振り下ろす直前の魔物が見える。
間に合わない。そう確信したルーチェは、【キンッ】と研ぎ澄ました殺意を一気に解き放つ。
刹那、全ての魔物がルーチェを見上げて固まった。
喉元に剣を押しつけられような感覚に魔物達は動きを止めたのだ。
「死になさい!」
空中で練り上げた剣気を着地と同時に放つ。クロを殺そうとしていた魔物の首が一瞬で切り落とされた。
同時に全ての魔物が首を押さえて倒れ伏す。自らの首が切られたと錯覚したのだ。
「クロ!」
「うっさい、わね。アタシの魔法、忘れたの? けほっ、背中打って動けなかっただけ、よ」
煩わしそうに顔を歪めるクロを見てルーチェは安堵に息を大きく吐き出す。
そして、ようやくルーチェは魔物達の異変に気がついた。
「怯えてる。これなら……」
懐から飛び出した瓶を目の前の魔物に投げつける。パリンッと割れた瓶から黒い靄が漏れ出し、魔物を包んだ。
瞬間、【ぞわぞわ】とした恐怖に魔物の身体がガクガクと震える。その震えは、次々に魔物の群れへと伝染していった。
「みなさん、あと少しです! 魔物達を混乱させてください!」
ルーチェが草原を見渡し、声を響かせる。
その声に、魔物と同様にルーチェの殺意にあてられて呆然としていた冒険者達が闘志を取り戻した。
「よくわからんが、いける! いけるぞ!」
誰ともなく雄叫びを響かせ、無防備な魔物へと冒険者は斬りかかる。
魔物は、逃げることさえできずに切り裂かれた。その様子を見つめていた魔物が、泡を吹いて気絶する。
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