空海〜仕組まれた罠〜

法は、通じる。

この刻の、金剛薩埵像への、変化を、体得した、
空海は、その後の、瞑想定修行が、長足の進歩を遂げる事になって居た。人生何が、幸いするか、分からない。
一法に、通じれば、諸々の法に通じる。

護身法の、習得。
恵果阿闍梨様は、その変化に、狂喜した。
やはり、千年に、１人の、逸材は、吸収が、早い。

空海を、襲撃した、輩は再度狙っている。
もう、こうなると、ヤクザと同じことである。
男達の、嫉妬は、これこの様に、性質が悪い。

一連の騒動を、観た恵果阿闍梨様は、空海を、支部道場に、移籍させた。
そこは、二つ渓谷を、越えた場所。
空海と、恵果阿闍梨様は、二人して寺を去って行った。

師弟の、真剣な、伝法が本格化した。

聖如意輪法。

金剛界法。

胎蔵界法。

不動護摩法。

そして、

念力の護摩法。
空海の、念力の護摩法、修練が、始まった。
山を駆け、谷を渡り、体を、鍛える。
心身脱落の、行である。
身体を、鍛え抜き、心を、最高度に、整える。
歳月が、流れて行く。一年、二年、三年。
空海は、坊舎念力の護摩壇に、籠って、登高座に、
登ると、不退転の定に、入ると、
護摩壇に、念力を集中して、壇木に、念力を投げた。
2回、３回、試みたが、点火しない。
体力的に、限界を、感じている。これが、最後だ。

全身を、炎に、観相して、踵から頭の中迄、
火になり、
最後の、修法に、挑んだ。
真言を、唱えながら。アジナーチャクラに、気が集まって来た。

よし、今だ！
壇木に、力一杯念力を投げた。

と、同時に気を失った。
どれくらい、刻が経ったのか、空海は、意識を、取り戻した。
何か、匂う。何かが、焦げた匂いだ。

壇木を、手で崩して、霊紙を、観て絶叫した。
紙の半分が、焦げていた。
やった、やった！

南無遍照金剛薩埵。

こうして、大法成就した。空海は、日本へ、戻る刻を感じている。恵果阿闍梨様は、別れを、惜しんだ。然し、空海は、故国日本で法を広める決意が、固い。

空海は、恵果阿闍梨の元を、去った。