幼馴染の推しは僕のガワ!?〜僕がVtuberになって1ヶ月、いつの間にか幼馴染に推されていた件。〜

河 空太

文字の大きさ
1 / 2

#0.まずは俺が配信を始めた理由を聞いてくれ。

しおりを挟む
「今日も最後まで見てくれてありがとうね!それじゃみんな!おつとら~!」
いつもの締めの挨拶を終え、コメント欄に流れるみんなの『おつとら』という挨拶を確認し、配信を終了する。
配信が完全に終了していることを確認し、
「…ふぅ、今日のゲームはなかなかにハードだったなぁ…。」
と1人つぶやく。
僕の名前は三又みまた大我たいが。ピチピチの高校2年生だ。万年帰宅部、唯一の趣味はゲームという一般的な高校生。でも僕には周りには言えない秘密がある。
そう、この時点でなんとなくお分かりだろうが、僕は配信者だ。
 『MyTubeマイチューブ』という動画サイトで動画配信者をしている。
そして、チャンネル登録者10万人にもなる、人気配信者でもある。
………いや、実は、普通の動画配信者というわけではないんだ。
ここ最近で猛烈に伸びを見せている、仮想の体を画面に映し、配信者がそれに声をあてるという、新たな配信のカタチ、つまり僕はいわゆる『バーチャル配信者』に当たる。
もしバーチャルの体で配信してるなんてバレたら…と考えるとゾッとする。
…そうだ、ちょこっとだけ長い回想をさせてもらおう。うん。ほんとにちょっとだけだから。先っちょだけだから!!
おっと、お下ティックな(下ネタ的な)発言はここまでにしておこう。
そう、あれは配信を始めたのは1ヶ月前、高校2年生になってすぐだった(あまりにも円滑で違和感のない回想シーン入りだ、自分でも惚れ惚れする)。

高校に入学して1年が経ち、一人暮らしの生活にも慣れてきて暇な時間が増えた。そして、その暇な時間に『MyTube』を見ているとオススメの動画として出てきた1つのコンテンツ。それがバーチャル配信者の配信だった。
存在は知っていた。
たしか、最初にバーチャルの姿で配信者として現れたのはたったの個性的な3人だったはずだ。だが、自分のスマホの画面に映っている配信者はその3人の誰とも一致しなかった。関連動画にある他のバーチャル配信者の動画をみても、その3人とはまた違う、個性豊かな姿だった。そしてその登録者を見ると。
「半年で120万人!?!?」
僕は驚愕した。驚かざるを得なかった。
「普通の配信者なら10年かかって到達するかしないかのレベルの登録者数だよ!?」
それを、半年で。マジかよ。
流石にちょっとだけ興味が湧いてきた。
僕は少し調べてみることにした。
色々な配信を覗き見し、配信の名場面が切り抜かれた短い動画などを漁りまくった。
………なるほど。最初のバーチャル配信者3人が流行りに流行り、1年で200万人もの登録者を獲得した結果、その流れに乗じて色々なバーチャル配信者が配信を開始し、現在も絶賛大流行中というわけだ。
しかもバーチャル配信者は総じて『バーチャル配信者』ではなく#virtual My Tuber_バーチャルマイチューバー__#を略称した『Vtuberブイチューバー』と呼ばれているらしい。安易なネーミングだが、それが気にならないほど流通し、定着しているということだろう。
この流れは今も止まっておらず、止まる気配すら感じない。
このビッグウェーブに乗らない手は無い。
僕は辺りを見渡した。
配信ができるパソコンは、ある。他の機材は流石に無いが、もともと趣味の少ない僕はお金を使うことがあまりなく、こまめに貯めていたお金があるので問題無いだろう。
1番の問題は、立ち絵だ。仮想の姿が必要となる。
僕は大した絵は描けないし…。
…1人、SNSで知り合った、絵が得意な友達、五月雨という人がいる。その人に頼んでみるか…。
でも、無料でやってくれるわけもないしなぁ…。ダメ元で頼んでみるか。
スマホを手に取り、SNSアプリを開く。
『五月雨さん、こんばんは。今、時間あったりしない?』
DMを送ってる。既読は付かない。
『実は頼みごとがあるんだけど…。』
既読はまだ付かない。
『僕、Vtuberになろうと思ってて…。』
既読が付いた。すぐに付いた。1秒も経たずに付いた。今までの未読スルーが嘘のよう。そして2秒も経たずに返信が送られてくる。
『Vtuberデビュー!?立ち絵は!?どんな見た目なんだ!?!?』
すごい勢いだ。このまま画面から出てきそうな勢い。
『あ、いや、まだ見た目は決まってなくて。』
『なんだ、まだなのか』
『うん。僕の立ち絵を君に描いて欲しくて。』
これにも既読が付く。
既読が付いて、沈黙が5分続く。
『あの~?』
既読が付く。
『この時間は一体…?』
そこで
『…いいのか?』
と一言だけ、返信が送られてきた。
…この一言を打つのに5分かけたのか…?
まぁ、答えは決まっている。
『もちろん。』
『…わかった。見た目のイメージとかはあるか?』
『あ、引き受けてくれるって事で良いの?!だったらお金とか払った方が』
『いらない』
『は?』
『無料でやってやる』
マジか。これはデカい。1番の問題が1番簡単に解決できた。
『それで、見た目のイメージは?』
五月雨さんはすでに、かなりやる気らしい。
『あ、虎をモチーフにしたいんだけど…。』
『たしかに、今のVtuberは誰も虎をモチーフにした人はいないな』
…そうなのか。そんな考えは無かったが、誰とも被っていないというのは大きな武器になる。これはラッキーだ。
『それで、三又の槍を背負っておきたいんだけど…』
『名前を槍の名前にしたくて…』
『ちょっと幼めの見た目にして欲しい…』
そのあとも詳細を話し合い、その日の深夜、ついに大体の姿が決まった。
そしてそれから一週間後、機材も全て揃ったというところで、とうとう立ち絵が完成した。
『ありがとう五月雨さん!お礼はどうしたらいいかな!?』
『貸し1つだ。』
…実質無料ってことで良いのだろうか?
少し含みのある返信に違和感を覚えつつも、「ほんとにありがとね」と、もう一度礼を伝えた。
そのあとすぐに配信の準備をし、2日かけて入念に準備して、配信を開始した。

…正直な話をすると、初配信はグダグダで、ひどい配信だったと思う。
でもそうなることはわかっていた。だからこその幼い見た目だ。可愛い見た目の男の子を責められる人間なんて、Vtuberを見ている方々の中には存在しない。いや知らんけどね?偏見だけどね?
幼く可愛い見た目、そして初配信というタイトルに釣られたのか、想像以上に視聴者が来てくれた。
どうにか自分のできる限りの愛想を振りまき、場を繋ぎ、グダグダながらも自己紹介を含めた初配信を終えた。
初配信にして登録者7000人。やはり破格の数字だ。Vtuber恐るべし。
そこから毎日もともとの趣味であったゲームなどの配信を行い、順調に登録者を伸ばし、僕はそれなりの配信者になった。
幸い、僕は帰宅部で時間が余っていたので余裕を持って配信ができた。
一昨日も順調。昨日も円滑。今日ももちろん問題無し。

そこから僕は周りにバレることもなく、僕は高校生の顔と「虎威でんと」というバーチャルの顔を使い分けて生活し、登録者が10万人に至ったというわけだ。
うん。トップというわけでは無いけれど、それなりによくやっていると思う。
そんなことを思いながら洗濯物を干す。
干し終えたあと、SNSアプリを開き、
『明日も学校だし、僕は寝るよ!おやすみ!!』
と投稿する。
すると数秒で
『おやとら!』
『おやすみなさい!』
『良い夢見てね!!』
『でんときゅん大好き!!』
『学校頑張ってね!』
と返信が大量に送られてくる。
…なんか愛の告白が含まれていたような気がするが。
そして僕はいつも通りスマホの画面と部屋の照明を消して、いつも通りの明日を迎えるべく、いつも通り僕は眠りについた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

貞操逆転世界で出会い系アプリをしたら

普通
恋愛
男性は弱く、女性は強い。この世界ではそれが当たり前。性被害を受けるのは男。そんな世界に生を受けた葉山優は普通に生きてきたが、ある日前世の記憶取り戻す。そこで前世ではこんな風に男女比の偏りもなく、普通に男女が一緒に生活できたことを思い出し、もう一度女性と関わってみようと決意する。 そこで会うのにまだ抵抗がある、優は出会い系アプリを見つける。まずはここでメッセージのやり取りだけでも女性としてから会うことしようと試みるのだった。

友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった

海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····? 友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...