幼馴染の推しは僕のガワ!?〜僕がVtuberになって1ヶ月、いつの間にか幼馴染に推されていた件。〜

河 空太

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#0.まずは俺が配信を始めた理由を聞いてくれ。

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「今日も最後まで見てくれてありがとうね!それじゃみんな!おつとら~!」
いつもの締めの挨拶を終え、コメント欄に流れるみんなの『おつとら』という挨拶を確認し、配信を終了する。
配信が完全に終了していることを確認し、
「…ふぅ、今日のゲームはなかなかにハードだったなぁ…。」
と1人つぶやく。
僕の名前は三又みまた大我たいが。ピチピチの高校2年生だ。万年帰宅部、唯一の趣味はゲームという一般的な高校生。でも僕には周りには言えない秘密がある。
そう、この時点でなんとなくお分かりだろうが、僕は配信者だ。
 『MyTubeマイチューブ』という動画サイトで動画配信者をしている。
そして、チャンネル登録者10万人にもなる、人気配信者でもある。
………いや、実は、普通の動画配信者というわけではないんだ。
ここ最近で猛烈に伸びを見せている、仮想の体を画面に映し、配信者がそれに声をあてるという、新たな配信のカタチ、つまり僕はいわゆる『バーチャル配信者』に当たる。
もしバーチャルの体で配信してるなんてバレたら…と考えるとゾッとする。
…そうだ、ちょこっとだけ長い回想をさせてもらおう。うん。ほんとにちょっとだけだから。先っちょだけだから!!
おっと、お下ティックな(下ネタ的な)発言はここまでにしておこう。
そう、あれは配信を始めたのは1ヶ月前、高校2年生になってすぐだった(あまりにも円滑で違和感のない回想シーン入りだ、自分でも惚れ惚れする)。

高校に入学して1年が経ち、一人暮らしの生活にも慣れてきて暇な時間が増えた。そして、その暇な時間に『MyTube』を見ているとオススメの動画として出てきた1つのコンテンツ。それがバーチャル配信者の配信だった。
存在は知っていた。
たしか、最初にバーチャルの姿で配信者として現れたのはたったの個性的な3人だったはずだ。だが、自分のスマホの画面に映っている配信者はその3人の誰とも一致しなかった。関連動画にある他のバーチャル配信者の動画をみても、その3人とはまた違う、個性豊かな姿だった。そしてその登録者を見ると。
「半年で120万人!?!?」
僕は驚愕した。驚かざるを得なかった。
「普通の配信者なら10年かかって到達するかしないかのレベルの登録者数だよ!?」
それを、半年で。マジかよ。
流石にちょっとだけ興味が湧いてきた。
僕は少し調べてみることにした。
色々な配信を覗き見し、配信の名場面が切り抜かれた短い動画などを漁りまくった。
………なるほど。最初のバーチャル配信者3人が流行りに流行り、1年で200万人もの登録者を獲得した結果、その流れに乗じて色々なバーチャル配信者が配信を開始し、現在も絶賛大流行中というわけだ。
しかもバーチャル配信者は総じて『バーチャル配信者』ではなく#virtual My Tuber_バーチャルマイチューバー__#を略称した『Vtuberブイチューバー』と呼ばれているらしい。安易なネーミングだが、それが気にならないほど流通し、定着しているということだろう。
この流れは今も止まっておらず、止まる気配すら感じない。
このビッグウェーブに乗らない手は無い。
僕は辺りを見渡した。
配信ができるパソコンは、ある。他の機材は流石に無いが、もともと趣味の少ない僕はお金を使うことがあまりなく、こまめに貯めていたお金があるので問題無いだろう。
1番の問題は、立ち絵だ。仮想の姿が必要となる。
僕は大した絵は描けないし…。
…1人、SNSで知り合った、絵が得意な友達、五月雨という人がいる。その人に頼んでみるか…。
でも、無料でやってくれるわけもないしなぁ…。ダメ元で頼んでみるか。
スマホを手に取り、SNSアプリを開く。
『五月雨さん、こんばんは。今、時間あったりしない?』
DMを送ってる。既読は付かない。
『実は頼みごとがあるんだけど…。』
既読はまだ付かない。
『僕、Vtuberになろうと思ってて…。』
既読が付いた。すぐに付いた。1秒も経たずに付いた。今までの未読スルーが嘘のよう。そして2秒も経たずに返信が送られてくる。
『Vtuberデビュー!?立ち絵は!?どんな見た目なんだ!?!?』
すごい勢いだ。このまま画面から出てきそうな勢い。
『あ、いや、まだ見た目は決まってなくて。』
『なんだ、まだなのか』
『うん。僕の立ち絵を君に描いて欲しくて。』
これにも既読が付く。
既読が付いて、沈黙が5分続く。
『あの~?』
既読が付く。
『この時間は一体…?』
そこで
『…いいのか?』
と一言だけ、返信が送られてきた。
…この一言を打つのに5分かけたのか…?
まぁ、答えは決まっている。
『もちろん。』
『…わかった。見た目のイメージとかはあるか?』
『あ、引き受けてくれるって事で良いの?!だったらお金とか払った方が』
『いらない』
『は?』
『無料でやってやる』
マジか。これはデカい。1番の問題が1番簡単に解決できた。
『それで、見た目のイメージは?』
五月雨さんはすでに、かなりやる気らしい。
『あ、虎をモチーフにしたいんだけど…。』
『たしかに、今のVtuberは誰も虎をモチーフにした人はいないな』
…そうなのか。そんな考えは無かったが、誰とも被っていないというのは大きな武器になる。これはラッキーだ。
『それで、三又の槍を背負っておきたいんだけど…』
『名前を槍の名前にしたくて…』
『ちょっと幼めの見た目にして欲しい…』
そのあとも詳細を話し合い、その日の深夜、ついに大体の姿が決まった。
そしてそれから一週間後、機材も全て揃ったというところで、とうとう立ち絵が完成した。
『ありがとう五月雨さん!お礼はどうしたらいいかな!?』
『貸し1つだ。』
…実質無料ってことで良いのだろうか?
少し含みのある返信に違和感を覚えつつも、「ほんとにありがとね」と、もう一度礼を伝えた。
そのあとすぐに配信の準備をし、2日かけて入念に準備して、配信を開始した。

…正直な話をすると、初配信はグダグダで、ひどい配信だったと思う。
でもそうなることはわかっていた。だからこその幼い見た目だ。可愛い見た目の男の子を責められる人間なんて、Vtuberを見ている方々の中には存在しない。いや知らんけどね?偏見だけどね?
幼く可愛い見た目、そして初配信というタイトルに釣られたのか、想像以上に視聴者が来てくれた。
どうにか自分のできる限りの愛想を振りまき、場を繋ぎ、グダグダながらも自己紹介を含めた初配信を終えた。
初配信にして登録者7000人。やはり破格の数字だ。Vtuber恐るべし。
そこから毎日もともとの趣味であったゲームなどの配信を行い、順調に登録者を伸ばし、僕はそれなりの配信者になった。
幸い、僕は帰宅部で時間が余っていたので余裕を持って配信ができた。
一昨日も順調。昨日も円滑。今日ももちろん問題無し。

そこから僕は周りにバレることもなく、僕は高校生の顔と「虎威でんと」というバーチャルの顔を使い分けて生活し、登録者が10万人に至ったというわけだ。
うん。トップというわけでは無いけれど、それなりによくやっていると思う。
そんなことを思いながら洗濯物を干す。
干し終えたあと、SNSアプリを開き、
『明日も学校だし、僕は寝るよ!おやすみ!!』
と投稿する。
すると数秒で
『おやとら!』
『おやすみなさい!』
『良い夢見てね!!』
『でんときゅん大好き!!』
『学校頑張ってね!』
と返信が大量に送られてくる。
…なんか愛の告白が含まれていたような気がするが。
そして僕はいつも通りスマホの画面と部屋の照明を消して、いつも通りの明日を迎えるべく、いつも通り僕は眠りについた。
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