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第15話 終奏(アウトロ)
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草木も眠りに 就いたかと思うほど、静かな静かな真夜中に……ギリィはそっと1人で抜け出して行きました。感動と 興奮で浅い眠りの入口に立っていたアントンは、その気配にすっかり目を覚まします。
こんな夜中にギリィさん……どこに行くんだろう……
アントンは他のメンバーを起こさないように気を付けて抜け出すと、静かにギリィの後を追いました。
「よう、アントン……ついて来たのか?」
ギリィは広い野原の小高い丘に座り、辺りを見渡していました。月明かりも無く、優しい星の輝きが空一杯に広がり、辺りを静かに照らしています。
「なんだかよく眠れなくって……ギリィさんは?」
「ん? 俺かぁ?」
ギリィは照れ臭そうな苦笑いを浮かべました。そんなギリィの横に、アントンもちょこんと腰を下ろします。
「何だろうなぁ……目が覚めちまった。最高のコンサートを終えた気分でよ……。さっき……お前ぇらと一緒に演ってる間に……俺ん中の大歓声にドップリ浸かったからなぁ……。なんだか、全部やり 遂げた気分になっちまったから『いやいや、秋野原はまだだろ!』って思ってよ……現場を見に来たんだよ」
「え? そうですよ! これからもっと練習して、完成させて、最高のステージに立たないと!」
アントンは急に不安を感じました。星明りを受けているギリィの表情が、いつになく 穏やかで……満ち足りていて……。これ以上に無いくらい、輝いて見えたからです。
「いつかよぉ……」
ギリィはポツリと口を開きました。
「お前ぇ言ってたよな? 冬にも生きられるように夏の間は働き続けてるって……」
アントンは話が突然変わったように感じ、なんと答えれば良いのか迷います。でも、別にアントンに答えを求めているワケではない様子で、ギリィは語り続けました。
「ただ死なねぇためだけに生きてんなら……そんなの、死んでるのと変わんねぇよ……。冬を生き延びたら、次の冬に備えてまた働き続ける……それじゃつまんねぇ。死なねぇ事を目的に生きるんじゃなくってよ……生きてることを楽しんで生きていてぇじゃねぇか……」
「……はい」
ギリィの言葉はまるで、自分の心の声をひとつひとつ確かめながら表現しているようです。
「……さっき 演ってる時、『俺ん中の大観衆』が大喜びでよ……。今まで聞いた事も 無ぇほどの歓声を上げやがったんだ!……最高の大歓声さ! そしたらよ……もう、充分に俺の人生を楽しんだ気がしてよ……。何か、秋野原ステージなんか……もうどうでもいいや! って気分になっちまってさ……」
「……」
アントンは 呆然とした表情でギリィを見つめます。その視線に気づいたギリィは「ハッ!」と我に返ったように笑顔を作りました。
「なんてな! ほら……だから言っただろ? 興奮してんだよ! 興奮して何が何だか分かんなくなっちまって……そんで目が覚めたんだよ」
「……もう! 変なこと言い出さないで下さいよ! ビックリしたじゃないですか!」
ようやくアントンも笑顔でギリィに答えられました。
「ハハハ……すまねぇな。ビックリさせて……さて! 戻って寝るか!」
先に立ち上がったギリィが、アントンの手を取り立ち上がらせます。その時アントンは、ギリィが秋野原を見渡し、ポツリと呟く声を聞きました。
「最高の 人生を……あんがとよ……」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
翌朝……アントンは激しく泣き叫ぶリン達の声で目を覚ましました。
「……この冷え込みだし……やっぱりステージまでは持たなかったか……。 儚い命のキリギリスとは言え、早過ぎだぜギリィ……。終奏まで即興なんてよぉ……」
ブンが残念そうに 呟く足元に、満足そうな笑みを浮かべたまま冷たく横たわるギリィの姿がありました。リンとテン子が抱き合って泣き叫んでいます。
「 兄ィ……早過ぎですよ……」
ロギーも肩を震わせ泣いています。呆然とその光景を見ていたアントンは、不意に、昨夜聞いたギリィの呟きを思い出しました。
『最高の 人生を……あんがとよ……』
こんな夜中にギリィさん……どこに行くんだろう……
アントンは他のメンバーを起こさないように気を付けて抜け出すと、静かにギリィの後を追いました。
「よう、アントン……ついて来たのか?」
ギリィは広い野原の小高い丘に座り、辺りを見渡していました。月明かりも無く、優しい星の輝きが空一杯に広がり、辺りを静かに照らしています。
「なんだかよく眠れなくって……ギリィさんは?」
「ん? 俺かぁ?」
ギリィは照れ臭そうな苦笑いを浮かべました。そんなギリィの横に、アントンもちょこんと腰を下ろします。
「何だろうなぁ……目が覚めちまった。最高のコンサートを終えた気分でよ……。さっき……お前ぇらと一緒に演ってる間に……俺ん中の大歓声にドップリ浸かったからなぁ……。なんだか、全部やり 遂げた気分になっちまったから『いやいや、秋野原はまだだろ!』って思ってよ……現場を見に来たんだよ」
「え? そうですよ! これからもっと練習して、完成させて、最高のステージに立たないと!」
アントンは急に不安を感じました。星明りを受けているギリィの表情が、いつになく 穏やかで……満ち足りていて……。これ以上に無いくらい、輝いて見えたからです。
「いつかよぉ……」
ギリィはポツリと口を開きました。
「お前ぇ言ってたよな? 冬にも生きられるように夏の間は働き続けてるって……」
アントンは話が突然変わったように感じ、なんと答えれば良いのか迷います。でも、別にアントンに答えを求めているワケではない様子で、ギリィは語り続けました。
「ただ死なねぇためだけに生きてんなら……そんなの、死んでるのと変わんねぇよ……。冬を生き延びたら、次の冬に備えてまた働き続ける……それじゃつまんねぇ。死なねぇ事を目的に生きるんじゃなくってよ……生きてることを楽しんで生きていてぇじゃねぇか……」
「……はい」
ギリィの言葉はまるで、自分の心の声をひとつひとつ確かめながら表現しているようです。
「……さっき 演ってる時、『俺ん中の大観衆』が大喜びでよ……。今まで聞いた事も 無ぇほどの歓声を上げやがったんだ!……最高の大歓声さ! そしたらよ……もう、充分に俺の人生を楽しんだ気がしてよ……。何か、秋野原ステージなんか……もうどうでもいいや! って気分になっちまってさ……」
「……」
アントンは 呆然とした表情でギリィを見つめます。その視線に気づいたギリィは「ハッ!」と我に返ったように笑顔を作りました。
「なんてな! ほら……だから言っただろ? 興奮してんだよ! 興奮して何が何だか分かんなくなっちまって……そんで目が覚めたんだよ」
「……もう! 変なこと言い出さないで下さいよ! ビックリしたじゃないですか!」
ようやくアントンも笑顔でギリィに答えられました。
「ハハハ……すまねぇな。ビックリさせて……さて! 戻って寝るか!」
先に立ち上がったギリィが、アントンの手を取り立ち上がらせます。その時アントンは、ギリィが秋野原を見渡し、ポツリと呟く声を聞きました。
「最高の 人生を……あんがとよ……」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
翌朝……アントンは激しく泣き叫ぶリン達の声で目を覚ましました。
「……この冷え込みだし……やっぱりステージまでは持たなかったか……。 儚い命のキリギリスとは言え、早過ぎだぜギリィ……。終奏まで即興なんてよぉ……」
ブンが残念そうに 呟く足元に、満足そうな笑みを浮かべたまま冷たく横たわるギリィの姿がありました。リンとテン子が抱き合って泣き叫んでいます。
「 兄ィ……早過ぎですよ……」
ロギーも肩を震わせ泣いています。呆然とその光景を見ていたアントンは、不意に、昨夜聞いたギリィの呟きを思い出しました。
『最高の 人生を……あんがとよ……』
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