スターダスト・ジョーカーズ

劇団バスターズ

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8月2日

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まじめに生きるって何だろうな。

ずっとそう思っていた。

完全なる正義が全てなのだろうか。
じゃあ正義って何?
人の道理? 正しいと思ったこと?


それだったら悪なんてこの世にはいない。


いるのは正義の心を持った人間と
そのまた別の正義の心を持った人間だ。
自分が思った「正しいこと」をする人間。
そして戦争が生まれる。


それぞれが、それぞれの守るべきものの為に「相手を悪」と思い争う。


そこには、悪なんてない。
愚かさしか存在しないのだと、考えた17歳の夏の補習授業中・・・。


日中から37℃を超える外気から守られるように、エアコンのある教室はまるで、3日間さ迷った末に見つけた砂漠のオアシスとでもいうべきか・・・。

とにかく夏のF市は熱い。盆地であり、周りを山に囲まれているため熱気が逃げづらく、夜でも35℃を超える日が何日もある。


「・・・・・・」


にしても熱い。

補習が終わっても教室を出る気にはならない。幸い、補修が行われていたのが自分の教室だったのもあり、ほかのクラスの奴はすぐ出て行った。同じクラスの奴も部活やら遊びやらで帰ったようだった。

いつまでも居る気はないが、外の灼熱の外気が足を動かすのを躊躇させる。時刻は16時49分だというのに、廊下の巨大な砂時計型の珍しい温度計は、36℃を指したまま動かない。


夕陽が教室に差し込む。柱の位置が影になって、不規則的に模様を描く。


忘れ物は無いだろうかと自分の机の中を、のぞかずに手だけで探る。昨日は、ちゃんと持って帰ってきたと思ったスマートホンを、机の中に忘れてしまってひどい目に合った。

「・・・・・・」


今日は何も忘れてたまるかと念入りに探る。時間にして7秒ほど。
よしと思い学校指定のスクール鞄を肩にかけて帰る。夏休み中のため、教科書などの勉強道具は少ないのでとても軽く感じた。その軽さに少し不安になり、一応再び机の中をざっと、今度は目視確認。


完全に空になった教室を出る瞬間にいつも虚しさを感じる。


でもこんな思いも、卒業して就職してしまえば感じることも無くなるのだろうか。たまに思うが、俺は幸運だと思う。普通の人は、過ぎ去ってから、こういう「祭りの後の寂しさ」というのだろうか、それを認識するのだろうが、


俺は青春時代が進行している間に気づけた。それはすごく幸運なのだろうと思える。


学校からの帰り道。俺はF市の隣のD市に住んでいて、いつも徒歩と電車で片道1時間の道のりを帰っている。

普段の平日は15時に学校が終わる。そこから一番早い電車には、中学時代からの会いたくない連中が乗ってくる。だから俺は、わざわざ田舎で一時間に一本しかない電車をずらして乗っている。

それは夏休み期間中も同じだった。

なので俺は、わざと最後まで残ってから帰る。別に独りが好きとかそういうわけではないが、合わない人間もいるということなんだろうな。そいつらも別に喧嘩したわけでもないし、話しかけられれば全然話せる。むしろ仲良くもなれるんではないだろうかとも思っているぐらいだ。

誰しも、そんな間柄の人間はいるのではないだろうか。


「藤田ぁ、帰ろうぜ。なあ、今日はカラオケ行かね?」


次の日、クラスメートの土谷がへらへらしながら話しかけてきた。明るい性格で、ほかのクラスにも友人が多いように思う。俺が唯一腹を割って話ができる親友ってやつだ。ほかにこれといって親しい友人もいない俺に、気を使っていつも二人で遊んでくれる。俺はこいつを大切にしていかないとな、と思う。


「いいけど、その前に職員室に行って鍵返してくる・・・ちょっと待っててくれないか」


ああ、もちろんと土谷が言う。職員室は昇降口の近くだからと、そこで待ち合わせと言って俺は先に教室を後にする。


(土谷の色は赤。平和を好む)


夕日が差し込む階段を下りる途中で、同じクラスの藤崎通瑠(ふじさき みちる)に会う。中学が同じで普通に会話する程度ではあるが、見知った仲だ。


「今日も補修?」


肩甲骨くらいまで伸びたきれいな髪をなびかせながら声をかけてくる。


「1学期は休みすぎちゃってね。日数が足りなくてこうなった」

「いい加減治さないと、ほんとに留年しちゃうんじゃない?」


普段から休みがちな俺は、いつも冗談で留年などどいっていたが、通瑠の言う通りそろそろ悪い意味で現実味を帯びてきてしまった・・・。


先生に用事があるからと、そこで通瑠とはさよならする。


下駄箱の靴を取り出し外へ向かう。
…ほんとにこの町は暑い、妹が神隠しにあったあの日も、こんなに暑かったな、とそう思う。

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