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笑う当主と踊る幽霊
10ー1 月の夜の空騒ぎ
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「この様な時間に面会でごさいますか」城の門番は訝しげに馬車を見る。
高位貴族の馬車と一目で解る、意匠を凝らした豪華な馬車。
馬車に掲げられているのは最近巷を賑わす貴族家の家紋だ。
「この様な時間帯だが、明日は我が家と王家との間に結納の義がある。王女殿下にお渡ししたい品が有るんだ」
銀髪の貴公子が、門番に理由を述べる。
「お兄様、あれを見せましょう」
少女は、ビロードの箱を青年に渡しているようだ。
馬車から降りてきた青年は、門番と衛兵に対し箱を開ける。
「・・・・・・・・」
品物を見た衛兵は冷静をよそおう。
他の衛兵が馬車に灯りを当てる。
「車内に居るのはテアルスティア侯爵と、ドレスのデザイナーだ」
ヴァジールは冷淡に告げる。
「只今、許可がでました!」
走りながら向かって来た衛兵が告げる。
「失礼致しました。どうぞお通り下さい」
カラカラ・・・・カラカラ
「お兄様、上手くいきましたね」
「此れからだよ」
テアルスティア家の馬車が城門を通過する少し前の時間。
法務部の室長、ジェラール・フォン・シェイクは報告書を読み頭を抱える。
彼が読んでいるのは先日、新たな女当主を擁立したエバー伯爵家の・・・・違うようだ。
勿論、そちらも重要な案件で有る。
何せ、実績がどんどん重なっているのだから。
彼が居るのは、法務部で室長に与えられた個室。
机の上に置いたリボンの付いた袋を見詰める。
リリィ・スチュワート・・・・最近独立した新鋭のデザイナーの殺害事件。
そして、城の幽霊騒動で幽霊の正体と言われている。
彼女が第二王子の婚約者が婚約披露の場で着たドレスを手掛けたことが、流行好きの令嬢の間では話題になったみたいだ。
ジェラールは報告書を見詰める。
リリィ・スチュワートは、同時期にテアルスティア家の令嬢のドレスも手掛けていたらしい。
ジェラールは流行に感心は無いが、公の場で影響が有る女性が着るドレスは、デザイナー等は極秘で政策されるらしい事は知っていた。
報告書には、極めて似せて造られていて色合いも同じようにしてあったらしい。
ジェラールは眉をしかめる。
それは、あからさまな悪意でしかない。
テアルスティア家の当主交代劇は、悪意の回避の為なのか?
ジェラール自信も当時その場にいた。
国王の指示で短時間で、相続の合法正を検証した1人だ。
その時の令嬢の姿を思い出す。
格式高い薄紫のドレスを着ていた、令嬢の年齢に会わない気品が記憶に残っていたからだ。
もし、当主交代劇が無く令嬢がデザイナーの用意したドレスを着ていたら。
もし、王家から、内定取り消しの連絡が無かったとしたら。
令嬢は、傷ついた心で嘲りの的になっていただろう。
だが、ドレスの一枚で殺されて良いのか?
殺したのは誰なんだ。
王家かテアルスティアか・・・・。
ジェラールは、報告書に有る妹の欄を読み始める。
名前・・・・。
火災の為、死亡。
火の勢いがあり、骨も残らなかったと載っている。
妹・・・・。
ジェラールは、天上を見上げ額に手をおく。
一抹の不安が胸を過る。
彼女はどちらにしろ、知り過ぎているかもしれない。
高位貴族の馬車と一目で解る、意匠を凝らした豪華な馬車。
馬車に掲げられているのは最近巷を賑わす貴族家の家紋だ。
「この様な時間帯だが、明日は我が家と王家との間に結納の義がある。王女殿下にお渡ししたい品が有るんだ」
銀髪の貴公子が、門番に理由を述べる。
「お兄様、あれを見せましょう」
少女は、ビロードの箱を青年に渡しているようだ。
馬車から降りてきた青年は、門番と衛兵に対し箱を開ける。
「・・・・・・・・」
品物を見た衛兵は冷静をよそおう。
他の衛兵が馬車に灯りを当てる。
「車内に居るのはテアルスティア侯爵と、ドレスのデザイナーだ」
ヴァジールは冷淡に告げる。
「只今、許可がでました!」
走りながら向かって来た衛兵が告げる。
「失礼致しました。どうぞお通り下さい」
カラカラ・・・・カラカラ
「お兄様、上手くいきましたね」
「此れからだよ」
テアルスティア家の馬車が城門を通過する少し前の時間。
法務部の室長、ジェラール・フォン・シェイクは報告書を読み頭を抱える。
彼が読んでいるのは先日、新たな女当主を擁立したエバー伯爵家の・・・・違うようだ。
勿論、そちらも重要な案件で有る。
何せ、実績がどんどん重なっているのだから。
彼が居るのは、法務部で室長に与えられた個室。
机の上に置いたリボンの付いた袋を見詰める。
リリィ・スチュワート・・・・最近独立した新鋭のデザイナーの殺害事件。
そして、城の幽霊騒動で幽霊の正体と言われている。
彼女が第二王子の婚約者が婚約披露の場で着たドレスを手掛けたことが、流行好きの令嬢の間では話題になったみたいだ。
ジェラールは報告書を見詰める。
リリィ・スチュワートは、同時期にテアルスティア家の令嬢のドレスも手掛けていたらしい。
ジェラールは流行に感心は無いが、公の場で影響が有る女性が着るドレスは、デザイナー等は極秘で政策されるらしい事は知っていた。
報告書には、極めて似せて造られていて色合いも同じようにしてあったらしい。
ジェラールは眉をしかめる。
それは、あからさまな悪意でしかない。
テアルスティア家の当主交代劇は、悪意の回避の為なのか?
ジェラール自信も当時その場にいた。
国王の指示で短時間で、相続の合法正を検証した1人だ。
その時の令嬢の姿を思い出す。
格式高い薄紫のドレスを着ていた、令嬢の年齢に会わない気品が記憶に残っていたからだ。
もし、当主交代劇が無く令嬢がデザイナーの用意したドレスを着ていたら。
もし、王家から、内定取り消しの連絡が無かったとしたら。
令嬢は、傷ついた心で嘲りの的になっていただろう。
だが、ドレスの一枚で殺されて良いのか?
殺したのは誰なんだ。
王家かテアルスティアか・・・・。
ジェラールは、報告書に有る妹の欄を読み始める。
名前・・・・。
火災の為、死亡。
火の勢いがあり、骨も残らなかったと載っている。
妹・・・・。
ジェラールは、天上を見上げ額に手をおく。
一抹の不安が胸を過る。
彼女はどちらにしろ、知り過ぎているかもしれない。
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