ビタースイートデーモン

ショー・ケン

文字の大きさ
10 / 32
第一章 ―出会い―

悪魔のささやき

しおりを挟む
 セレェナは、叫んだ。両手の人差し指と中指をたてて、靴の側面をなぞると足にマナをこめる。
「ホーリー・プットオン!!」
 草履のような魔物が飛び上がる。ふと、墓地でみたものとずいぶん弱いオーラを感じた。敵は両手でセレェナにタックルをしかけるが、のばした手を利用してその上にとびあがり、胴体を横回転させ足蹴りをした。
《ズドオオン!!!》
「ウゴオオオァオオオ」
 まるで、埃をかぶった布を思い切りけったように、煙が飛散し、敵はふぞろいな顔のパーツをめちゃくちゃにゆがませながら、白く美しい光にガラスが割れるような形で〝光の筋〟に浸食され、消滅した。
「実質的なエクソシストの養成高校をなめるなよ!!」
 ふと、地面へ落下し着地した瞬間だった。階段を駆け上ってくる足音とともに、聞き覚えのある甘ったる声が、珍しく覇気を纏い空に響いた。
「危ない!!後ろ!!後頭部!」
 ふと瞬時に首を動かし、それよりも早く目を動かし目の端をみると、ゴミ箱のような魔物が鉄骨を手にしてセレェナの後頭部を強打する寸前だった。セレェナは咄嗟にリンボーダンスのような形で、みをかがめた。
「!!!」
 ゴミ箱のような魔物はおどろいて、ふりきった鉄骨に勢いをもっていかれよろける。その足をセレェナは思い切り蹴り上げた。
「シャアッッ!!!」
《ズドン!!》
 ゴミ箱の化け物は、皮肉にも自分の後頭部を強打し、そのままサラサラと消滅していった。セレェナの美しく長い脚をみて、満足気に笑いながら。

 トレトーは、ペントハウスの上にのって、足をプラプラさせている。セレェナは、乾いた笑いがでた。
「あんた……さすが悪魔ね」
 ぷい、と顔をそむけたトレトーにいら立ちながら、自分とトレトーの間に立つ最後の魔物に目を向けた。
(あの時と同じくらいかしら、評価基準……A+くらいはありそうな魔物だわ)
 セレェナは不意打ちで両手に力をこめ、思い切り的の胴を左右のこぶしで立て続けに二発なぐった……つもりでいた。
《ドン!!ドン!!!》
 むしろ反対に、中世の騎士の魔物は槍のようなものでセレェナの体をうちぬいた。一瞬呼吸が苦しくなる。―霊体―基本的に魔物に実体はないとはいえ、精神的なダメージは感じる。生命エネルギーに直接ダメージが入るようなものだ。その許容量をこえれば、当然死に至る。

 しかし、セレェナには自信があった。
「私は、神の使い!!エクソシストになる女!!!」
 セレェナは、全身からマナを放出し、先ほど両足にためたマナを今度は右手で左足から右足にすべて移した。そして、体を斜めに格闘術の姿勢をとると、甲冑を纏う中世の騎士のような魔物もまた、槍をジリ、とかまえて相対する構えをとった。

 一瞬の静寂。舞い落ちるカラスの羽の残骸……。セレェナは一気に距離をつめった。敵は一瞬何が起きたかわからなかっただろう。敵の視界が悪い事をりようし、姿勢を低くして自分を見失った瞬間に思いきり歩幅を開き距離をつめた。そして、右足をおおざっぱに、左回りにぶん回した。
「!!??」
 本気のケリが来ると思っていた敵はひるみ、後退したが、セレェナは両手を地面につき、次の用意を始めていた。今度は逆に胴を回転させ、勢いよくかかとに力をこめた。
「くらええええ!!!」
《ズドォン!!!》
 すさまじい衝撃とともに、騎士の側頭部に綺麗な一撃がはいった。


 


 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

それなりに怖い話。

只野誠
ホラー
これは創作です。 実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。 本当に、実際に起きた話ではございません。 なので、安心して読むことができます。 オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。 不定期に章を追加していきます。 2025/12/14:『さむいしゃわー』の章を追加。2025/12/21の朝8時頃より公開開始予定。 2025/12/13:『ものおと』の章を追加。2025/12/20の朝8時頃より公開開始予定。 2025/12/12:『つえ』の章を追加。2025/12/19の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/11:『にく』の章を追加。2025/12/18の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/10:『うでどけい』の章を追加。2025/12/17の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/9:『ひかるかお』の章を追加。2025/12/16の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/8:『そうちょう』の章を追加。2025/12/15の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/7:『どろのあしあと』の章を追加。2025/12/14の朝8時頃より公開開始予定。 ※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

あなたのサイコパス度が分かる話(短編まとめ)

ミィタソ
ホラー
簡単にサイコパス診断をしてみましょう

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

意味が分かると怖い話【短編集】

本田 壱好
ホラー
意味が分かると怖い話。 つまり、意味がわからなければ怖くない。 解釈は読者に委ねられる。 あなたはこの短編集をどのように読みますか?

処理中です...