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1章
アイリーンとマルグリッド
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二つに分かれたエリアを小さな城のような建物の屋上から、ヴァルシュヴァル卿が見下ろしている。マルグリッドがすれ違いざまにつけたのか、彼も腹部に大きな傷跡と出血があったが、彼が見つめるとジリジリとその傷が治っているようだった。
見下ろす地上の路地で、プラグは衝撃的な事が続いて奇妙にもある記憶を思い出していた。それはマルグリッドに言われた言葉、しかしその言葉の細部が思い出せない。
(あなたはやさしい)
そんな言葉だった気がするが。
少し距離を保ち、腹部をかかえ目の前の憔悴しきっているクランは、顔半分がかけて、ゴーグルからはっきりとその顔が現れていた。
突然プラグは思い出した、マルグリッドの過去のくちぐせ、優しい
「あなたは私よりも優しい……あなたはまだ若く無垢で、私より間違いを認めやすい、あなたは決して間違えないわ」
クランと今戦うべきか、どうやって逃げるか。そんな事を考えながら。
「プラグ、君はマルグリッドをしらない、マルグリッドは君をよく知っていて、しかし、裏切っているというのに」
「何?」
「彼女と親友の話だ、二人は、暗殺しかけあっていた、それから、彼女のおいたち、シスターとなった理由もだ、お前はあの時、初めて出会ったときなんと聞いたのだ?」
「マルグリッドは……かつて復讐心を持っていたけれど、自分を助けてくれたシスターは変わりに自分を恨めといっていた……そして俺にも“恨むなら自分を恨め、その嘘で救われるのなら”といった、そのシスターの死後、はじめて彼女を恨みきつく当たっていた事を後悔し、道をあらためたのだと……それまではシスターでなく侍女だったと」
「お前は彼女に救われたのだな、彼女の大人になる前にお前のような犯罪者だったとしてもか?そう……今とは逆に、両親の死を逆恨みして、アルシュヴェルド人を殺していた、彼女の両親の死……それもまた、アルシュヴェルド人の怒りをかって行われたのだ」
「……そんな必要ないじゃないか」
「彼女の話は嘘ばかりだ、彼女の親友であり兄と慕っていた男―彼はアルシュヴェルド人なのだ、そして親友の両親を殺したのが、彼女の両親、大量虐殺をおこなっていたのは、彼女の両親、彼女と親友は恨みあう仲にあった」
「……」
「彼女は聖人であると、それは嘘だ、彼女は冷徹な人殺し“青の夜鳥”彼女の大嘘だ、偉大なる指導者などいなかった。それが死んだ事実もなかった、彼女にとっては、親友こそが指導者だった、その親友の死後、彼女は変わった、お前を必ず裏切る、そんな人間を信じて命を危険にさらすこともない」
クランが右手をあげた、その先端に小さなナイフが握られていた。
一方マルグリッドはアイリーンと対峙しながら、頭を巡らせているようだった。
「あなたは……いくらとりつくろうと“復讐”にとらわれたままだ、そしてただの人殺しにすぎない」
「では……あなたはどうなの?“回収人”アイリーン、時折ヴァルシュヴァル卿と一緒に、青の民族、アルシュヴァルド人を回収して、何を行っているの?」
「黙れ!!私は運命から逃れていない、確かに改造はされたが、これは私たちをよりよくするための実験で……」
「本当に、本当にそう思っているの?大多数を占めるラウル人が、少数民族となった私たちを生かそうとしていると」
「私たち?」
「そうよ、私もアルシュベルド人、半分ね……」
「何をいっている、そんなわけ……」
「親友は……最後に私に譲ってくれたの、“青の夜鳥”は、もともと親友だった、友人はそうして彼に、ヴァルシュヴァル卿に目を付けられるまで人殺しを、復讐を続けた、私は、贖罪としてそれを続けた、あるいは友人を殺した、ラウル人の偏見や憎悪を殺そうとしたのかもしれない」
マルグリッドが右手をかかげる、その右手は呪文のような黒いものに包まれていた。
「何なの、それは」
「禁忌の魔術、アルシュベルド・ユル、自らの寿命を捧げ、青き力、アシュヴァの力を増幅する、私の中に流れるわずかなアルシュヴェルドの血がたぎり、私に告げている、この憎悪をとめよ、差別という憎悪を……」
「たわごとを!!」
アイリーンは、鞭をかまえ、前傾姿勢で突進した。
見下ろす地上の路地で、プラグは衝撃的な事が続いて奇妙にもある記憶を思い出していた。それはマルグリッドに言われた言葉、しかしその言葉の細部が思い出せない。
(あなたはやさしい)
そんな言葉だった気がするが。
少し距離を保ち、腹部をかかえ目の前の憔悴しきっているクランは、顔半分がかけて、ゴーグルからはっきりとその顔が現れていた。
突然プラグは思い出した、マルグリッドの過去のくちぐせ、優しい
「あなたは私よりも優しい……あなたはまだ若く無垢で、私より間違いを認めやすい、あなたは決して間違えないわ」
クランと今戦うべきか、どうやって逃げるか。そんな事を考えながら。
「プラグ、君はマルグリッドをしらない、マルグリッドは君をよく知っていて、しかし、裏切っているというのに」
「何?」
「彼女と親友の話だ、二人は、暗殺しかけあっていた、それから、彼女のおいたち、シスターとなった理由もだ、お前はあの時、初めて出会ったときなんと聞いたのだ?」
「マルグリッドは……かつて復讐心を持っていたけれど、自分を助けてくれたシスターは変わりに自分を恨めといっていた……そして俺にも“恨むなら自分を恨め、その嘘で救われるのなら”といった、そのシスターの死後、はじめて彼女を恨みきつく当たっていた事を後悔し、道をあらためたのだと……それまではシスターでなく侍女だったと」
「お前は彼女に救われたのだな、彼女の大人になる前にお前のような犯罪者だったとしてもか?そう……今とは逆に、両親の死を逆恨みして、アルシュヴェルド人を殺していた、彼女の両親の死……それもまた、アルシュヴェルド人の怒りをかって行われたのだ」
「……そんな必要ないじゃないか」
「彼女の話は嘘ばかりだ、彼女の親友であり兄と慕っていた男―彼はアルシュヴェルド人なのだ、そして親友の両親を殺したのが、彼女の両親、大量虐殺をおこなっていたのは、彼女の両親、彼女と親友は恨みあう仲にあった」
「……」
「彼女は聖人であると、それは嘘だ、彼女は冷徹な人殺し“青の夜鳥”彼女の大嘘だ、偉大なる指導者などいなかった。それが死んだ事実もなかった、彼女にとっては、親友こそが指導者だった、その親友の死後、彼女は変わった、お前を必ず裏切る、そんな人間を信じて命を危険にさらすこともない」
クランが右手をあげた、その先端に小さなナイフが握られていた。
一方マルグリッドはアイリーンと対峙しながら、頭を巡らせているようだった。
「あなたは……いくらとりつくろうと“復讐”にとらわれたままだ、そしてただの人殺しにすぎない」
「では……あなたはどうなの?“回収人”アイリーン、時折ヴァルシュヴァル卿と一緒に、青の民族、アルシュヴァルド人を回収して、何を行っているの?」
「黙れ!!私は運命から逃れていない、確かに改造はされたが、これは私たちをよりよくするための実験で……」
「本当に、本当にそう思っているの?大多数を占めるラウル人が、少数民族となった私たちを生かそうとしていると」
「私たち?」
「そうよ、私もアルシュベルド人、半分ね……」
「何をいっている、そんなわけ……」
「親友は……最後に私に譲ってくれたの、“青の夜鳥”は、もともと親友だった、友人はそうして彼に、ヴァルシュヴァル卿に目を付けられるまで人殺しを、復讐を続けた、私は、贖罪としてそれを続けた、あるいは友人を殺した、ラウル人の偏見や憎悪を殺そうとしたのかもしれない」
マルグリッドが右手をかかげる、その右手は呪文のような黒いものに包まれていた。
「何なの、それは」
「禁忌の魔術、アルシュベルド・ユル、自らの寿命を捧げ、青き力、アシュヴァの力を増幅する、私の中に流れるわずかなアルシュヴェルドの血がたぎり、私に告げている、この憎悪をとめよ、差別という憎悪を……」
「たわごとを!!」
アイリーンは、鞭をかまえ、前傾姿勢で突進した。
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