黒いカルテ

ショー・ケン

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黒いカルテ

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 ある学生の男女5人組が、心霊スポットにむかった。そこは廃病院で、様々探索するうちに、診察室らしき場所があった。そこだけは荒らされておらず、後から調べると、そこで黒い影を見たという人が多いらしいのだ。そこでその学生たちは、そんな事もしらずに荒らしまわった。学生の一人が、一つのカルテをみつけた。それは真っ黒な人影で、名前も読めないような奇妙な文字で書かれて、その上ぬりつぶされている。一説には精神病院だったという噂のある場所だったので、皆はうわさをしあった。そこである人間が無茶ぶりをする
「そのカルテ、やぶいてやろうぜ」
「それはやめときなよ」
 少女がとめるも、男子たちはいうことをきかず、ついにはふざけた一人がそのカルテを踏みつけてしまいました。
「ちょっと」
「なんだよ」
「バチがあたるよ」

 それから、さんざん荒らしまわった一行は飽きてその場所をあとにした。同じ方向が帰り道の女子二人。一人に電話がかかってくる。
「あれ?お母さんだ、もしもし……は?」
 母親と電話しているもようだが様子がおかしい。
「してないって、電話なんて、それよりどういう事、”本当にあなた?”って」
「ちょっと、あなた、誰と話をしているの?」
 と、友人がその横からちょっかいをだしてくる。妙なこというなあと思いながら、手を伸ばしてくるので払っていると、何度目かに友人が、電話をとりあげていった。
「あなた誰ですか!!それに、あんた(少女)もおかしいわよ」
「え?」
 奇妙に思う少女、取り上げられた瞬間から、違和感をかんじていた、受話器に耳を近づける。確かにおかしい。電話からする声は、男のものだった。
「どういうこと?」
「どうもこうも、ずっとあんた知らない男と話してたわよ、早く切りなさい」

 家に帰り母親に話をきく、と母親は、その少女から電話を受けていたらしい。だがそれは、彼女が電話する少し前だという。その後は電話していないという、どういう事か尋ねると、彼女と同じように、奇妙な男の声がして、それにすぐ気づき尋ねる。
「あなただれですか?」
 すると男は答える。
「カルテの男だよ」
それから、ほどなくして、その母親は心臓発作でなくなったそうだ。

 少女と例の電話に気づいた友人の少女は、話をした。友人の少女いわく
「あの心霊スポットは、”なりすまし”の幽霊がでるんじゃなかった?あの心霊スポットを訪ねると、尋ねたメンバーが多くなっていて、その一人をよくみると、メンバーの中の一人とそっくりで、見分けがつかなくなりパニックになるっていう」
「でも、害は加えないはずよね、その"なりすまし"」
「うん、でもあの時"男子たち"がカルテをふみつけたから……」

暫くの間、彼らの家族や親せきに不幸が相次いだ。それも“なりすまし”をそうでないと気づき、会話をした人間にだけ、不幸な目にあうのである。

そのあと、心霊スポットにいったメンバーたちは連絡をとりあった。合言葉をきめ、電話をするときには、相手が”なりすまし”だと気づいたらすぐに電話をきるようにきめた。というのも、ある有名な寺でお祓いをしようとしたのである。連絡をとれた皆でお祓いをうけ、除霊した。一人例の件から引きこもり気味になり、連絡が取れなかったメンバーもいたが、なんとか接触すると、連絡をするようになった。そしてお祓いをすると、ぱったりと不幸はとまったのである。

彼らが大人になったころ、ある噂がたった。
”なりすまし”から電話がかかってきて、会話をすると魂がつれていかれてしまう。彼らは、あの心霊スポットで何かあったのではないかと件の場所をたずねる。するとカルテはびりびりに引き裂かれていて、お寺にもっていくと”これはどうしようもない”と住職。

皆は、できることはした。とそこで手を合わせ、解散をした。だがその噂は広がりをみせ、その地域では、語り継がれる伝承となったのだそうだ。



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