最強の剣豪と見込みのある弟子

ショー・ケン

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最強の剣豪と最強の弟子

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「私は、無駄に永らえるより人々の中に名を残したい」
 それが口癖のその時代最強の一角といわれるある剣豪、剣術家がいた。その生い立ちと人を寄せ付けぬオーラをもち、人々から尊敬されるも、怖れられていた、畏敬の念といった感じだ。しかし老いには勝てず病も抱えていたが、彼には弟子がいた、唯一の希望。良い弟子で、技術もあり、見込みも十分だったが気弱なのだった。虫の一匹も殺せない。師が問う。”お前は見込みがあるが、なぜそんなに気弱なのに、私の弟子についたのだ”と、弟子はいった。
「私には思い人がある、幼馴染であり、優しい女性だ、ある女を守れるほど強くなり、強くなったあとで恋仲になりたいのだと、彼女は強く優しいものを愛するし、彼女自身も底なしにやさしい」
と。

 なんたる軟弱な、と師は思う。だがしかしこの女というのを彼に紹介されたこともあったが、彼の幼馴染で、たしかに妙な魅力のある女だ。だがしかし、何度も師はいった。
「あれは魔物だ、取りつかれてはならぬ、お前自身が強くならねばならぬ理由を探せ」
 だが師がいくら言おうとも、弟子は虫一匹殺せぬまま。

 幼馴染の女に接触して関係を断つようにと懇願しても、女は拒みいうのだった。
「私はいいのです、私のために強くならずとも、私は彼を愛していますから、それに彼には私が必要です」

 ある時、師は決心した。
「このままでは私の代で私の流派は終わる、奴に期待し、時間を費やしすぎたのだ」
 そう仲間につげると、仲間に頼み事をした。

 ある日の事、弟子が目を覚ますと自分は後ろ手に縄をしばりつけられており、身動きが取れない。傍らには自分の刀があるが手がとどかない。
「何をっ!!」
 顔を上げると、そこには丸太にしばりつけられている愛する女―幼馴染の姿があった。
「鬼畜め!!何奴!!」
 と叫んでみた先には見覚えのある屋敷と、その主である彼の師、剣豪がいた。剣豪はいう。
「お前はこの女に現を抜かすばかり、私と戦え、私を倒せばこの女を解放しよう、だが私を倒せずば、お前も女の命もない、私はもともと剣豪になる前は”盗賊”だったのだ、師に拾われ心を入れ替えたが、お前ら血のフヌケ具合にはほとほとあきれた」
 あまりの事に動揺していたが、全身を熱い血が流れ始め頭が徐々に回り始めると、怒った弟子は縄をくいやぶり、傍らの剣をとり、師に切りかかった。
「ハハハ!!良い調子だ!!もっともっと!!」
 だが覚悟を決めて怒った彼でも、師にはなかなか歯が立たない。初めはいい調子で互角だったが、徐々に手加減をされ、ついにはいつもの稽古のように、師と弟子の関係があらわになった。なん十分、何時間がたっても決着はつかず、師は顔をゆがめていった。
「お前は力任せに考えすぎだ、もっと勢いに強弱をつけろ」
 彼はへばっていたが、師はまだ体力がありあまっている。弟子を生かさずころさず、峰内や、剣の柄でなぐってくる。
「うっ……はあ、はあ!!」
「所詮お前はこの程度か、お前の得たい名声や愛情はこの程度か!!ならば……」
 飽きれた師は、剣豪は剣をふりおろした。彼はめをつぶった、圧倒的な殺意にそうせざるを得なかったのだ次の瞬間、女の悲鳴が聞こえた。
「キャッ!!!」
 顔を上げた弟子、眼前にひろがる光景に怖れおののき言葉を失い、衝撃によって気が遠くなりそうになった。
「し……師匠」
 そこには血しぶきをあげて地面に倒れる幼馴染の恋人の姿があった。
「誓いを、誓いをやぶったなああああ!!!」
 怒りにみをまかせ、そして逃れられない苦しみを知った彼は、彼の目の前にあるすべてをきりふせた、羽虫、木の葉、師の呼吸まできりふせて、ついに師の目の前にきていった。
「お前は万死に値する!!」
《ブシャアアアアッッッ!!!》
 血しぶきがあがり、師は倒れた。弟子は一瞬自分の顔が鬼神のようになっていると思い、その顔に手を伸ばして、たじろいだ。師の顔をみる。その顔はなぜか満足気だった。その傍らで、のっそり立ち上がるものがあった。
「!!!○○!!」
 弟子の名前を呼ぶ女、幼馴染であった。弟子が驚き、師に目を向ける。師はいった。
「血のりじゃよ、彼女に手を出してはおらぬ、初めから、たくさんの芝居道具を彼女の着物の腹に詰めておいたのじゃ、お前を成長させるための芝居じゃ」
「…………!!な、なぜ、師匠、初めから全部芝居だったのですか!!なぜここまでなさるのです!!」
 剣豪は笑い、時に意識をうしないながら、ぽつぽつと語った。
「お前は優しすぎるのじゃ……そして諦めるのがはやすぎた、これは荒療治だ、私の死も織り込み済みじゃ」
「師匠!!私は、こんな事も見抜けず」
「いいのじゃ……お前はわしよりはるかにやさしく優れておる、命への愛がある、じゃが……それが弱さだ……それゆえ失敗をおそれている、それで自分を抑えておるのじゃ、お前にもお前の内なる鬼神がおるはずなのじゃが……じゃがわしにはわしの目的がある、わしは……流派を閉ざすわけにはいかん、お前はわしのあとをつげ、わしはお前が強くなるためにおまえののために殺されよう、それでいい、わしの名は残る」
 そして、師の間際、剣豪はいった。
「強さと弱さのいいとこどりはできない、人は時に弱くなり、時につよくなり、何が正しいのかわからなくなり自分に迷い、その葛藤をのりこえてこそ、また自我をもち強くなる」

 数年後。弟子は立派な剣豪となった。向かうところ敵なしといった様子。だが、この真相を、どことなく気づいている部分もあった。
 師は、生前いっていた。
「お前の好いている女は優しすぎる」
 弟子はつぶやく
「師匠はきっと、この結果をしっていたのだろう……俺たちがこうなることを……」
 
 女もわかっていた。何度も師と接触するうちに、彼と別れをつげよといううちに彼、つまり師匠が自分に恋心をよせていることを。師は関係を断とうと接触するうちに好きになっていた。それもそのはず、弟子の言う通り彼女は”底なしにやさしかった”何よりも、師にとって意外だったのは、その恐ろしい形相やオーラをみても一歩もたじろぐことなく、自分の内面をみてくれた人は、女であれ男であれ初めてだったのだ。そして年甲斐もなく弟子に嫉妬した。
 時に師は自分の病の事や、力が芽吹かぬ弟子の事を相談したこともあった。そして一芝居うとうとした時に、彼女もまた乗り気だったのだ。そして師はその芝居の場で死のうと決心していた……師は、弟子に問題があることを知っていたし、もし弟子がその問題を克服しないなら、すべてを諦める気でいた。だが実際弟子は師を打ち倒し、師は、死に際に彼女に言葉を残した。
「これでいいのだ、ワシの事を忘れてくれ、奴を本気で怒らせる方法はこれしかなかったし、奴が本気で怒ると、奴の中の鬼神が顔を出すのをしっていた、わしの寿命はすでに僅か、おぬしに入ってあったじゃろう」
 それでも"優しく強いもの"を愛する女は、師の以後、死した師の事を思うようになった。師もまた、それを予期しており、また、実は弟子と女がすでに深い愛をお互いに向けている事をしっていて、これだけが、唯一女に好かれる方法だと知っていた。


 その話は、師の死する決闘の間際に、付き人の間でも噂だっていた。
「あの女は魔物だ、妙な魅力がある」
 といいながら、いつしか師のその顔に笑みが生じはじめていたのを。師を心配するものさえいた。それまで女に興味を持ったことなど生涯一度もなかった師が、頻繁に会う女など、彼女だけだった。そして彼女と接するうちに彼の腕が落ちていったのを……周囲は認識していた。師が死して示したかったものは、”弟子より優しく深い愛を持つもの愛情”女への愛情だ、その結果、やはりやさしすぎる女はは死んだ師の事を思い、生き残った男と女の二人はいつまでも、恋仲にはなれなかったという。しかし、弟子は師の死を境につよくなっており、女の命を生涯守り続けたという。
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