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第一章 スキル授与
帰宅
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ケローネはその後帰宅し、勢いよく玄関のドアをあけた。ここは“ある理由から”つとめて明るくふるまおうときめていたのだ。
「お、おかえりー……ご、ごめんなさい散らかして!」
なぜかソファーには、水でぬれている箇所ができていた。ヘリオのその手に目を向ける、水浸し……。
「ヒ、ヒィイ!!」
「何々!?ど、どうしたの?」
「あ、いや、なんでも……」
あのお女の気配がする。今まではそんな事はなかったのに。ヘリオをよくみる。いつものような愛らしい、慈愛に満ちたようなまなざしだ。だが間違いない。“マナ”を感じる、ヘリオはすでに”あの恐ろしい魔術を使ったのだ、呪いの水の魔術を……”
「ケ……ケローネ?」
「どどど、どうしたヘリオ!私はいたって万全だよ!どこへだっていけるさ……」
「本当に大丈夫?このソファ、そんなにお気に入りだったっけ?」
「ああ、大丈夫さ、コーヒーでも入れよう、今日は疲れただろう」
ヘリオは椅子にすわった、お気に入りの小説を持ち、それを読みなおそうかと迷いながらも、手持無沙汰で困惑する、思い切ってキッチンのケローネに話しかけた。
「ねえ……ケローネ」
「ん!?なんだい?」
「私……水のスキルだった……冒険者になりたくてずっと頑張ってきたのに」
そう。ヘリオは小さいころからこの日を楽しみにしてきたのだ。ケローネだってそのために鍛練に付き合ってきた。おかげて今では十分すぎる―時にはケローネを超えるほどの武術や剣術を使える。もちろん、人に容易に使うなといって人前で披露したことはないが。
「……そんな事か……」
「え?」
ケローネのほうをみる、キッチンで二人分のコップを用意し、こちらをみながら微笑んでいた。
「君がどんなスキルを使おうと、どんな未来を選ぶ事だってできる、聞かせてきただろう?僕の英雄譚を……」
ケローネは神父になる前冒険者だったと聞かされていた、いつものように励まし、勇気づける言葉に目を輝かせるヘリオ。ここまで育ててくれた恩に報いていいスキルをもらおうと思っていた事が頭からふっとんだ。
(そうだ、ケローネはいつもケローネじゃないか……儀式で前世の記憶が色濃くよみがえったからといって、それは変わらない……)
にっこり笑って膝を抱えると、ふと様々な記憶がよみがえってくる。人形やおもちゃを買ってもらった記憶、頬をスリスリされた記憶、一緒にお風呂に入った記憶。
―人々は彼を変人といったが、彼女にとっては間違いない家族だった。なにせ、前世で異性にすら感じたことのなかった“愛着”をこの太陽のように微笑む人間に覚えていたのだ。
コーヒーが二人分机におかれた。
「ありがとう」
ケローネが、新聞を手に取り、忙しく目を通せなかった欄に目を向けようとする、が、そこで妙なものが空中に浮いているのをみたような気がした。が、それはすぐにふっと消えて、ケローネは目をこすった。だが、何もない。しかし、上空から声がする。
「ヤイ!!」
上を見て何もないのを確認する、左右をみる。ヘリオをみると、ヘリオは小説を読んでいた。立ち上がり、頭をかく。
「ちょ、ちょっと危ない」
「?」
ふと、その声は自分の頭の上に乗っかった“何か”だと思った。しかし、そんな馬鹿なはずがない。こんな小さなものは……その瞬間、ぬっと何かがおでこの先から顔をだした。
「ヤア!!こんにちは神父さん」
そう、それはさっきヘリオが出会った妖精だった。
「ふあああ……」
挨拶がてらに手を振る妖精、眼前に現れた“水の魔術の結晶”に、ケローネは目を回して、そのまま後ろ向きに倒れた。
「お、おかえりー……ご、ごめんなさい散らかして!」
なぜかソファーには、水でぬれている箇所ができていた。ヘリオのその手に目を向ける、水浸し……。
「ヒ、ヒィイ!!」
「何々!?ど、どうしたの?」
「あ、いや、なんでも……」
あのお女の気配がする。今まではそんな事はなかったのに。ヘリオをよくみる。いつものような愛らしい、慈愛に満ちたようなまなざしだ。だが間違いない。“マナ”を感じる、ヘリオはすでに”あの恐ろしい魔術を使ったのだ、呪いの水の魔術を……”
「ケ……ケローネ?」
「どどど、どうしたヘリオ!私はいたって万全だよ!どこへだっていけるさ……」
「本当に大丈夫?このソファ、そんなにお気に入りだったっけ?」
「ああ、大丈夫さ、コーヒーでも入れよう、今日は疲れただろう」
ヘリオは椅子にすわった、お気に入りの小説を持ち、それを読みなおそうかと迷いながらも、手持無沙汰で困惑する、思い切ってキッチンのケローネに話しかけた。
「ねえ……ケローネ」
「ん!?なんだい?」
「私……水のスキルだった……冒険者になりたくてずっと頑張ってきたのに」
そう。ヘリオは小さいころからこの日を楽しみにしてきたのだ。ケローネだってそのために鍛練に付き合ってきた。おかげて今では十分すぎる―時にはケローネを超えるほどの武術や剣術を使える。もちろん、人に容易に使うなといって人前で披露したことはないが。
「……そんな事か……」
「え?」
ケローネのほうをみる、キッチンで二人分のコップを用意し、こちらをみながら微笑んでいた。
「君がどんなスキルを使おうと、どんな未来を選ぶ事だってできる、聞かせてきただろう?僕の英雄譚を……」
ケローネは神父になる前冒険者だったと聞かされていた、いつものように励まし、勇気づける言葉に目を輝かせるヘリオ。ここまで育ててくれた恩に報いていいスキルをもらおうと思っていた事が頭からふっとんだ。
(そうだ、ケローネはいつもケローネじゃないか……儀式で前世の記憶が色濃くよみがえったからといって、それは変わらない……)
にっこり笑って膝を抱えると、ふと様々な記憶がよみがえってくる。人形やおもちゃを買ってもらった記憶、頬をスリスリされた記憶、一緒にお風呂に入った記憶。
―人々は彼を変人といったが、彼女にとっては間違いない家族だった。なにせ、前世で異性にすら感じたことのなかった“愛着”をこの太陽のように微笑む人間に覚えていたのだ。
コーヒーが二人分机におかれた。
「ありがとう」
ケローネが、新聞を手に取り、忙しく目を通せなかった欄に目を向けようとする、が、そこで妙なものが空中に浮いているのをみたような気がした。が、それはすぐにふっと消えて、ケローネは目をこすった。だが、何もない。しかし、上空から声がする。
「ヤイ!!」
上を見て何もないのを確認する、左右をみる。ヘリオをみると、ヘリオは小説を読んでいた。立ち上がり、頭をかく。
「ちょ、ちょっと危ない」
「?」
ふと、その声は自分の頭の上に乗っかった“何か”だと思った。しかし、そんな馬鹿なはずがない。こんな小さなものは……その瞬間、ぬっと何かがおでこの先から顔をだした。
「ヤア!!こんにちは神父さん」
そう、それはさっきヘリオが出会った妖精だった。
「ふあああ……」
挨拶がてらに手を振る妖精、眼前に現れた“水の魔術の結晶”に、ケローネは目を回して、そのまま後ろ向きに倒れた。
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