虚ろ青年、水の巫女に転生する

ショー・ケン

文字の大きさ
5 / 29
第一章 スキル授与

帰宅

しおりを挟む
 ケローネはその後帰宅し、勢いよく玄関のドアをあけた。ここは“ある理由から”つとめて明るくふるまおうときめていたのだ。
「お、おかえりー……ご、ごめんなさい散らかして!」
 なぜかソファーには、水でぬれている箇所ができていた。ヘリオのその手に目を向ける、水浸し……。
「ヒ、ヒィイ!!」
「何々!?ど、どうしたの?」
「あ、いや、なんでも……」
 あのお女の気配がする。今まではそんな事はなかったのに。ヘリオをよくみる。いつものような愛らしい、慈愛に満ちたようなまなざしだ。だが間違いない。“マナ”を感じる、ヘリオはすでに”あの恐ろしい魔術を使ったのだ、呪いの水の魔術を……”
「ケ……ケローネ?」
「どどど、どうしたヘリオ!私はいたって万全だよ!どこへだっていけるさ……」
「本当に大丈夫?このソファ、そんなにお気に入りだったっけ?」
「ああ、大丈夫さ、コーヒーでも入れよう、今日は疲れただろう」
 ヘリオは椅子にすわった、お気に入りの小説を持ち、それを読みなおそうかと迷いながらも、手持無沙汰で困惑する、思い切ってキッチンのケローネに話しかけた。
「ねえ……ケローネ」
「ん!?なんだい?」
「私……水のスキルだった……冒険者になりたくてずっと頑張ってきたのに」
 そう。ヘリオは小さいころからこの日を楽しみにしてきたのだ。ケローネだってそのために鍛練に付き合ってきた。おかげて今では十分すぎる―時にはケローネを超えるほどの武術や剣術を使える。もちろん、人に容易に使うなといって人前で披露したことはないが。
「……そんな事か……」
「え?」
 ケローネのほうをみる、キッチンで二人分のコップを用意し、こちらをみながら微笑んでいた。
「君がどんなスキルを使おうと、どんな未来を選ぶ事だってできる、聞かせてきただろう?僕の英雄譚を……」
 ケローネは神父になる前冒険者だったと聞かされていた、いつものように励まし、勇気づける言葉に目を輝かせるヘリオ。ここまで育ててくれた恩に報いていいスキルをもらおうと思っていた事が頭からふっとんだ。
(そうだ、ケローネはいつもケローネじゃないか……儀式で前世の記憶が色濃くよみがえったからといって、それは変わらない……)
 にっこり笑って膝を抱えると、ふと様々な記憶がよみがえってくる。人形やおもちゃを買ってもらった記憶、頬をスリスリされた記憶、一緒にお風呂に入った記憶。
―人々は彼を変人といったが、彼女にとっては間違いない家族だった。なにせ、前世で異性にすら感じたことのなかった“愛着”をこの太陽のように微笑む人間に覚えていたのだ。

 コーヒーが二人分机におかれた。
「ありがとう」
 ケローネが、新聞を手に取り、忙しく目を通せなかった欄に目を向けようとする、が、そこで妙なものが空中に浮いているのをみたような気がした。が、それはすぐにふっと消えて、ケローネは目をこすった。だが、何もない。しかし、上空から声がする。
「ヤイ!!」
上を見て何もないのを確認する、左右をみる。ヘリオをみると、ヘリオは小説を読んでいた。立ち上がり、頭をかく。
「ちょ、ちょっと危ない」
「?」
 ふと、その声は自分の頭の上に乗っかった“何か”だと思った。しかし、そんな馬鹿なはずがない。こんな小さなものは……その瞬間、ぬっと何かがおでこの先から顔をだした。
「ヤア!!こんにちは神父さん」
 そう、それはさっきヘリオが出会った妖精だった。
「ふあああ……」
 挨拶がてらに手を振る妖精、眼前に現れた“水の魔術の結晶”に、ケローネは目を回して、そのまま後ろ向きに倒れた。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

今更……助けてくれと……言われても……

#Daki-Makura
ファンタジー
出奔した息子から手紙が届いた…… 今更……助けてくれと……言われても……

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

ねえ、今どんな気持ち?

かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた 彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。 でも、あなたは真実を知らないみたいね ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

処理中です...