ホラー短編集

鏡合わせの人形

　どうしてそんなに気にしているの？気にしなくていいのに。そんな言葉がでてこなかった。

　高校のクラスで私を仲間外れにしていじめていたAちゃん。昔は仲が良かったのに、高校デビューに出遅れないために私をだしにしていたみたい。私は古い人形師を親にもっていて、いやに古風なコスメが好きだったから。

　それでも私は譲らなかった。あるときあまりに過激になって、いじめっこさえもひくような事をAちゃんはしてきた。ごみ箱の中身を口に入れたり、私の眼玉をなめたり。思い出すのもしんどくなる。

　でもAちゃんは気づかない。いいえ、私が忘れるように仕向けたもの。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
　身体拘束用のベルトをつけられたまま、彼女は私に詫び続ける。ああ、なんて哀れな事だろう。私が最後の勝者だった。
「でも、私は気にしてないよ」
「でも、私は……ごめんなさい、私は、他の人と仲良くなる方法がわからなくて、あなたと仲良くする方法もわからなかったの」
「そうね、私が最後の勝者になった」
　きっかけは、私が小さな人形や裁縫を皆に見せ始めてからだった。私はあえてそれを、これみよがしに机の上においておいた。ある時その人形がなくなりクラスは大騒ぎになった。そう、精神科に入院して目の前でうな垂れている彼女はわからないだろう。最初で最後のあなたへの裏切り、私はあの時自分で自分の人形に呪いをかけた。それは、あなたへの私の敵意が見つからないように、私が自分で人形を壊したことが、他の人にばれません様に。