呆然自失のアンドロイドドール

ショー・ケン

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2日前

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 その日も、奇妙な客がいた。右目に鋭く縦に走る傷をもち、その眼球は機械でできていた。黒目のない二重の輪がこちらをみていた。長身で、ツートーンの無造作な髪型、そのほかにはサイボーグ化された箇所はなさそうだが、やたらとこちらをみていた。カタナのようなものを下げていただろうか。キリリとした左の目は、生気にあふれており、どこかリーダー気質な雰囲気を感じさせた。だがその連れであろう男は丸坊主で、みすぼらしいからだをして、歯が欠けており、左目がつぶれており、顔の左側が陥没していて、始終ニヤニヤしていたのを覚えている。拳銃をいじっていたし、その身なりと態度からカタギのものではないだろうと思われた。

 その日夕方には自分のシフトを終え、帰宅の途に就く。着替え終わって支度をし裏口がその日に限って業者が入っていたため通れず、ホールからそとに出ようとすると、先ほどの客がいまだに店の中央あたりにおり、嫌だと思いながら通り抜けようとしたとき、薄汚れた子分が道路に片足を突き出してきた。普通の人間なら危うく転びそうになるところだが、彼女は前職の関係もあり、咄嗟の反射でそれを飛んで回避した。
「おい、やめろ」
「でもアニキィ、情報通りなら……」
「彼女は関係ない、関係ない人間を巻き込むな」
 男は、頭を抱え込む。男の脳裏には、ある言葉が浮かんでいた。
(兄ちゃん垣根を壊して、壁の内側と外側の)

 そんな小声での会話を聞きながら、変な奴らと思いつつも、正面から出て帰宅の途に就いた。
 
 少し、店の前で立ち止まりポケットから眼鏡を取り出しつけた。その眼鏡は奇妙な四角い形をしており普通のものよりも縁が太く機械的な装飾が施されていた。
《ARモードを起動します》
 耳掛けの部分から音がした。空を見上げると中空に様々な企業広告が浮かぶ、あくまで歩行の邪魔にならず、かつ使用者に危険のない範囲でこうしたARグラスでは広告はその高度を定められている。安定した起動を確認したあと、ウェロウは歩きだした。

 道行く人々は、普段の姿ではなく、薄くアバターの姿を見せる。そう、この時代、人々はバーチャル空間にたいていはもう一つの体をもち、登録しており、これをつけるとその姿が浮かびあがるのだ。
(確かに気楽だわ、あの子の言う通り)
 ただ一つの不安は、この街の治安だった。この街は丁度《高度経済特区》と《郊外》のはざまに位置する、《高度経済特区》は富裕層や、ある程度いい職につく中間層が生活している。なぜ彼女が郊外に近いここで生活しているかというと、それには一つ理由があった。
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