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第11話
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執事&メイド喫茶で給仕するメンバーは前半と後半で交代制にする事になっている。
僕と聡介は前半、美緒は後半だ。
「聡介着替えられたかなあ?」
美緒は後半メンバーだけど、もう執事の衣装に着替えている。
長い黒髪を高い位置で一纏めに括っていて、顎までの前髪はそのままセンター分けで下ろしている。
美形執事、と言ったところか。とても綺麗だ。
この格好で文化祭回ったら宣伝にもなるでしょ!という事らしい。
仮更衣室の扉がガラ、と開けられる。
「ちょっと窮屈な服だな」
蝶ネクタイを苦しそうに触る聡介。
高身長のせいか、うっすら焦げた肌に黒の燕尾服がよく映える。白い手袋を着ける仕草がそれっぽい。
「すごい、楠木くん、めちゃくちゃ似合ってる!」
「そうか……?」
少し興奮した口調で褒める僕に、聡介が照れたように項をさする。
「ま、及第点かな。あたしに比べたら見劣りするけど」
「偉そうだな。まあ、美緒もそれなりに似合ってはいるか」
「二人ともすごく似合ってるよ」
また向かい合って対抗心剥き出しの二人に、やれやれと苦笑する。
「柊くんと聡介は前半メンバーだよね。二人とも、気合い入れて頑張ってよね!あたしは宣伝しに周って来るから!」
そういって美緒は足早に教室を出ていってしまった。
そして、いよいよ準備中の看板を営業中に反転させて入口に置く。
お客さんの生徒達が一発目からぞろぞろと入ってきた。
注文が入る度にテーブルにケーキと紅茶のセットを運ぶ。
ここまで沢山準備してきたから、大盛況なのは凄く嬉しい。
ちなみに、スペシャルドリンクを頼まれると萌えポーズをしながら「萌え萌え、ビーム!」と、指でハートを作ってお客さんに向かって言う、というシステムもある。
どうか、僕の担当テーブルではスペシャルドリンクが出ませんように。と、切実に心の中で手を合わせて願う。
「なにこれ、萌え萌えサービス付きだって。おもしろそ。はーい、僕スペシャルドリンクね」
「えー、楽しみだね!」
願っていた矢先、悪ノリカップルが早速注文してくれやがった。僕が担当テーブルって知らないみたいだけど。
「お、お待たせしました。スペシャルドリンクです」
男子生徒の前にスペシャルドリンクを置く。スペシャルドリンク、といってもただのメロンフロートにハートのストローを刺しただけのものだ。
正直いって、これを頼むのは萌え萌えサービス付き、に吊られて頼む人だけ。
だから、この萌え萌えサービスというのをするのを嬉々として待っているのだ。
恥ずかしすぎる。
「も、萌え、萌え萌えビーム!」
恥ずかしすぎて、目を瞑ったまま胸の前でハートを作り、思いっきり男子生徒の方に向けて腕を伸ばした、つもりだった。
ガシャン、と音がして嫌な予感がする。
「あ……」
手がスペシャルドリンクに当たって思い切り生徒の方に向かって倒れている。
案の定、男子生徒のズボンはメロンソーダとアイスでびしょ濡れになってしまっている。
「っ、冷た」
「ご、ごめんなさいっ!すぐタオル持ってきます!」
「やだー、圭太、大丈夫?」
女子生徒のほうがそういって、僕は固まる。
圭太って、あの圭太――?
春色の初恋で、美緒に想いを寄せるもう1人の男子。つまり、聡介のライバル。
明るいミルクティー色の柔らかな髪に、耳には何個も開けられたピアス。
女子なら誰でも歓迎で来る者拒まず去るもの追わずで、特定の誰かと付き合うことは絶対に無い。
呆然と圭太を見つめていると、圭太が怪訝な顔をする。
「……タオルまだ?」
「あ、うん!」
慌てて走ってタオルを取って戻る。
ズボンを拭こうとする手を止められる。
「いいよ、自分でやるから」
「ごめんなさい……」
「いいって。それよりさ、連絡先教えてくんない?」
圭太の長い指が手首をする、と撫でるように掴む。
「えっ?」
「君めちゃくちゃ可愛いんだもん」
目が合ってにこ、と笑う。
まさか、僕が男だって気づいてない――?
僕と聡介は前半、美緒は後半だ。
「聡介着替えられたかなあ?」
美緒は後半メンバーだけど、もう執事の衣装に着替えている。
長い黒髪を高い位置で一纏めに括っていて、顎までの前髪はそのままセンター分けで下ろしている。
美形執事、と言ったところか。とても綺麗だ。
この格好で文化祭回ったら宣伝にもなるでしょ!という事らしい。
仮更衣室の扉がガラ、と開けられる。
「ちょっと窮屈な服だな」
蝶ネクタイを苦しそうに触る聡介。
高身長のせいか、うっすら焦げた肌に黒の燕尾服がよく映える。白い手袋を着ける仕草がそれっぽい。
「すごい、楠木くん、めちゃくちゃ似合ってる!」
「そうか……?」
少し興奮した口調で褒める僕に、聡介が照れたように項をさする。
「ま、及第点かな。あたしに比べたら見劣りするけど」
「偉そうだな。まあ、美緒もそれなりに似合ってはいるか」
「二人ともすごく似合ってるよ」
また向かい合って対抗心剥き出しの二人に、やれやれと苦笑する。
「柊くんと聡介は前半メンバーだよね。二人とも、気合い入れて頑張ってよね!あたしは宣伝しに周って来るから!」
そういって美緒は足早に教室を出ていってしまった。
そして、いよいよ準備中の看板を営業中に反転させて入口に置く。
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ちなみに、スペシャルドリンクを頼まれると萌えポーズをしながら「萌え萌え、ビーム!」と、指でハートを作ってお客さんに向かって言う、というシステムもある。
どうか、僕の担当テーブルではスペシャルドリンクが出ませんように。と、切実に心の中で手を合わせて願う。
「なにこれ、萌え萌えサービス付きだって。おもしろそ。はーい、僕スペシャルドリンクね」
「えー、楽しみだね!」
願っていた矢先、悪ノリカップルが早速注文してくれやがった。僕が担当テーブルって知らないみたいだけど。
「お、お待たせしました。スペシャルドリンクです」
男子生徒の前にスペシャルドリンクを置く。スペシャルドリンク、といってもただのメロンフロートにハートのストローを刺しただけのものだ。
正直いって、これを頼むのは萌え萌えサービス付き、に吊られて頼む人だけ。
だから、この萌え萌えサービスというのをするのを嬉々として待っているのだ。
恥ずかしすぎる。
「も、萌え、萌え萌えビーム!」
恥ずかしすぎて、目を瞑ったまま胸の前でハートを作り、思いっきり男子生徒の方に向けて腕を伸ばした、つもりだった。
ガシャン、と音がして嫌な予感がする。
「あ……」
手がスペシャルドリンクに当たって思い切り生徒の方に向かって倒れている。
案の定、男子生徒のズボンはメロンソーダとアイスでびしょ濡れになってしまっている。
「っ、冷た」
「ご、ごめんなさいっ!すぐタオル持ってきます!」
「やだー、圭太、大丈夫?」
女子生徒のほうがそういって、僕は固まる。
圭太って、あの圭太――?
春色の初恋で、美緒に想いを寄せるもう1人の男子。つまり、聡介のライバル。
明るいミルクティー色の柔らかな髪に、耳には何個も開けられたピアス。
女子なら誰でも歓迎で来る者拒まず去るもの追わずで、特定の誰かと付き合うことは絶対に無い。
呆然と圭太を見つめていると、圭太が怪訝な顔をする。
「……タオルまだ?」
「あ、うん!」
慌てて走ってタオルを取って戻る。
ズボンを拭こうとする手を止められる。
「いいよ、自分でやるから」
「ごめんなさい……」
「いいって。それよりさ、連絡先教えてくんない?」
圭太の長い指が手首をする、と撫でるように掴む。
「えっ?」
「君めちゃくちゃ可愛いんだもん」
目が合ってにこ、と笑う。
まさか、僕が男だって気づいてない――?
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