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第19話
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「え?」
「アイツが好きだから、描いてたのか?」
好きか好きじゃないかで問われると、もちろん自分で描いたキャラだから好きに決まっている。
「や、そりゃ、好きだけど」
僕が当然のように答えると、聡介がショックを受けた表情で固まっている。
「楠木くん、……大丈夫?」
「おれ、俺じゃ、ダメなのか?」
俯きながら、蚊の鳴くような声で呟く聡介に変に思って首を傾げる。
「楠木くんのほうが、上手く描けるけど?」
「え?」
今度は呆気に取られた顔で僕を見る。相変わらず、距離が近い。
「え、だって、」
主人公である聡介のほうが何回も描くし、最も【春色の初恋】で一番思い入れのある大好きなキャラは聡介だからだ。
でも、そんな事は言えなくて言葉に詰まっていると、聡介が何を思ったのかさっきとはうってかわって嬉しそうな顔で僕を見ている。
「俺のほうが好きってことか?」
それは、そうだけど。
何だか違う意味に聞こえて、恥ずかしくなる。
聡介がふ、と目を細めて笑う。耳が熱い。
「そ、そうなのかな」
「そうだろ」
満足気にそう言い切られて、やっぱり恥ずかしい。
でも、その通りだから否定はしない。
ずっと、思い入れがあって、憧れで、そんな聡介が一番好きだった。
「うん、そうかも」
そんな人が今目の前にいる。僕の言葉に喜んで笑っている。
そんな姿が、凄く愛しい。
そう思うと、自然と口角が緩む。
「柊」
聡介の大きな手が伸びて、頬を撫でる。
心臓が驚いてどきどきと鼓動を早くする。
でも、身体は自然と避けずに聡介を受け入れていた。
「はーい!集合してー!」
美術の先生の大きな声で、ハッとして聡介から離れる。
「呼ばれてるし、行こっか」
「ああ」
顔が湯気が出そうなほど熱い。
いま、たぶん、顔真っ赤だ。
後ろから黙って着いてくる聡介を、振り返らずに足早に歩いた。
「アイツが好きだから、描いてたのか?」
好きか好きじゃないかで問われると、もちろん自分で描いたキャラだから好きに決まっている。
「や、そりゃ、好きだけど」
僕が当然のように答えると、聡介がショックを受けた表情で固まっている。
「楠木くん、……大丈夫?」
「おれ、俺じゃ、ダメなのか?」
俯きながら、蚊の鳴くような声で呟く聡介に変に思って首を傾げる。
「楠木くんのほうが、上手く描けるけど?」
「え?」
今度は呆気に取られた顔で僕を見る。相変わらず、距離が近い。
「え、だって、」
主人公である聡介のほうが何回も描くし、最も【春色の初恋】で一番思い入れのある大好きなキャラは聡介だからだ。
でも、そんな事は言えなくて言葉に詰まっていると、聡介が何を思ったのかさっきとはうってかわって嬉しそうな顔で僕を見ている。
「俺のほうが好きってことか?」
それは、そうだけど。
何だか違う意味に聞こえて、恥ずかしくなる。
聡介がふ、と目を細めて笑う。耳が熱い。
「そ、そうなのかな」
「そうだろ」
満足気にそう言い切られて、やっぱり恥ずかしい。
でも、その通りだから否定はしない。
ずっと、思い入れがあって、憧れで、そんな聡介が一番好きだった。
「うん、そうかも」
そんな人が今目の前にいる。僕の言葉に喜んで笑っている。
そんな姿が、凄く愛しい。
そう思うと、自然と口角が緩む。
「柊」
聡介の大きな手が伸びて、頬を撫でる。
心臓が驚いてどきどきと鼓動を早くする。
でも、身体は自然と避けずに聡介を受け入れていた。
「はーい!集合してー!」
美術の先生の大きな声で、ハッとして聡介から離れる。
「呼ばれてるし、行こっか」
「ああ」
顔が湯気が出そうなほど熱い。
いま、たぶん、顔真っ赤だ。
後ろから黙って着いてくる聡介を、振り返らずに足早に歩いた。
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