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アリス IN 異世界日本

沖田の剣

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【夜の一条家】
三重県の南勢地域である伊勢市。人口も多くないこの地域の夜は、喧騒も無くなり静かな時間を迎えている。そんな一条家の応接間に数人の男女がアリスを中心に話をしている
アリスの前に少し年上の男の子と、その父親らしき男が立っている。父親は騎士団長をしているのか?というくらいに鍛え上げられた肉体をしていた


「じゃあ、アリスちゃんはその【エリスア】という異世界から来たと言うんだね」

「うん、そうだよぉ」

この街の…いや、魔法の存在しないこの地球(せかい)では、異世界転移というだけでも驚きの事態なのだが…アリスはその事を全く分かっていないようだ

「すまないけど、この写真を見て欲しい」

40代の男は懐から1枚の写真を出した

「あっ!小町様だ」
 

「知っているのか?」

男はアリスが写真の女性を知っている。と即答した事に凄く驚いている

「この女性は私の父親の姉、今も生きていれば…ちょうど70歳の筈なんだ。この写真は彼女が神隠しにあう前に撮られたものなのだが…」

「えっ!そうなの?小町様は半月くらい前に会った時も、その絵と全く同じ顔をしてたよぉ」

「何っ!?どういう事だ…」

男の父親は既に他界しており、彼が沖田流剣術の師範代を勤めているという話だ。そんな父親の姉が今でも変わらぬ容姿で生きている!その真相を知るため、彼はアリスから更に詳しい話を聞いた

…………………………………………

「龍と人のハーフの臥龍族の王と結婚して、その臥龍の血を与えられたから老化していない。という事なのか?叔母さんには今2人の子供が居て、その臥龍族の大隊長と大魔道士になっているだって?」

「そうだよぉ、アタシも少しだけ小町様から、剣の訓練をしてもらったよぉ。すんごく素早くて鋭い攻撃だったよぉ♪」

「そんな事が…いや、その話は本当なのか?」

「ぷぅー!アタシ嘘つかないもん!!」

アリスは彼女なりの一生懸命な説明をしたのだが、全員から信じてもらえてない事に少し不機嫌な顔をした。そこに優香が割って入ってきた

「でも、アリスちゃんの話が本当だって仮定した方が、この50年間でこの街に起きた事の話が、全てツジツマが合うんじゃないかしら?」

「そうだよ父さん!突拍子でファンタジーな話だから信じにくいのは分かるけど…そもそも25年ごとに神隠しが3度も起きてる事自体が、ファンタジーなんだからさ!」

彼の息子の宗一郎と優香は、アリスの話を肯定している感じだ

「…うーん、確かに起きた事を逆の視点で考えれば…そうなるな…アリスちゃん、最後にひとつだけ確かめさせてくれないかな?」

「んう?別に良いよぉ。何するのぉ?」

アリス達は沖田が乗ってきたランドクルーザーに乗り、優香も入れて4人で沖田家へと移動した



【沖田流剣術道場】
「ふわあぁ!何このおうち…よく分からないけど凄く立派ぁ♬沖田さんって貴族様なのぉ?」

向こうの世界の住人のアリスは、立派な家に住む者。イコール、貴族かお金持ち!しか考えに無い

「宗一郎、アリスちゃん。私の前で試合をしてくれないか?」

彼はアリスと宗一郎に試合用の剣を渡した

「ええっ!?アリスに…ソーイチローを殺せ!って言うのぉ?」
 

「えっ!?」
「はっ!?」

アリスを除く3人は意外な言葉に驚いた。しかし、剣を持って親しくない人と対峙するという事は、向こうの世界出身のアリスからすれば、そういう状況なのが普通なのだ

「いや、訓練だ…練習でお願いする」

宗一郎は日本で言う【果たし合い】の様に勘違いしているアリスに、剣道の試合の内容を説明し始めた

「……うん、分かった!そういう事ねぇ。ふふん♪アタシの剣技を見せてあげるぅ!」

宗一郎の父親は沖田流の師範代
才能のあった小町から手解(てほど)きを受けているのなら、試合を見させてもらえば話の審議が分かる自信があるようだ

「行くよ、アリスちゃん!」

「良いよ、ソーイチロー」

それまでは大人しくて真面目な感じなのが印象的だった彼が、剣を構えた途端に鋭い目付きに変わった!その変わり様は、アドルが記憶を取り戻した時の事を思い出させた。その事がアリスのヤル気を出させた

「本気で行くねぇ!」

「もちろんだ!」

宗一郎の方も、それまで純粋無垢で優しい少女のイメージだったアリスが一変し、凄腕の剣士の顔に変わった事に驚く
(あの目は…父さんが他流試合とかで、たまにだけ魅せる本気の目だ!)

「良し、では両者構えて…試合、始めっ!」

「いやーっ!」

宗一郎は全国大会出場を決めた鋭い踏み込みから胴払いを狙う、彼の得意の攻撃パターンに出た!
父親から手を抜かず本気で打ち込め!と言われ(女の子相手に?)と戸惑いはしたが、父親の真剣な命令とアリスの猛者の目に、かつて県大会決勝で優輝を圧倒した剣戟を打つ

「えいっ!」

しかし、アリスはその鋭い剣戟にしっかり反応し相手の剣を剣で受けると同時に、そのチカラを薙ぎ払い返す剣戟で逆に宗一郎の胴を払った

「イッポン!」

2人の試合をハラハラしながら見守っていた優香。彼女は、かつて剣道くらいしか取り柄の無い兄の優輝を打ち負かした宗一郎の強さを知っていたので、アリスが怪我をしないかを心配していたのだが…結果はその真逆だった

「エッヘン!どうかなぁ?」

「強いなアリスちゃ…いや、アリスさん………良かったら、私とも手合わせしてくれないかな?」

何と!師範代自らがアリスと試合をしたいと申し出てきた。しかも師範代は嬉しそうな顔をしている

「お父さん、流石にソレは!」

父親の桁違いの強さを嫌という程知っている宗一郎は、ソレを止めようとしたのだが…

「良いよぉ、オジサンはソーイチローより強いんだよねぇ?もっと楽しませてくれるんだよねぇ?」

またしても少しズレた質問をしたアリスに、新しい心配をする優香。鳩が豆鉄砲をもらった様にキョトンとしている宗一郎

「もちろんだ、キミを本気にさせてみたい!」

「良いよぉ…アタシも今ので終わりじゃあ、剣を握って熱くなったのが収まらないもん!」

普通に見ても師範代が強そうなのは分かりそうなものだが、アリスはソレに気付けないのか?
それとも、親子のどちらであってもアリスからすれば、大して実力差を感じられないのか?

「面白い、久しぶりに楽しめるかも知れんな!アリスさんを少女だと手加減は出来ないかも知れないよ?」

「うん!そんなの全然要らないもん♬」

叔母である小町の技術を得ているのか?を試す目的で始めたのだが、いち剣士として楽しそうな相手と対峙している事を喜ぶ師範代
相手が沖田流の師範代であっても生きる為に、妹たちを守る為に剣を振るってきたアリスからすれば、生命までは取らない試合で、こんな猛者と戦えるのは嬉しい以外の感情は無かった




続く
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