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夢忘れ編
中立なる者の責任
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【ヒルドルブ砦】
広い部屋にサーシャを連れて現れた惑星神エリスアが魅せてくれたカルーアの過去で判明した、エルフの隠れ里の最後の日の様子
「ごめんなさいカルーア。疑ってしまって…」
「良いんだよ。わたしも昔の傷のせいで、つい最近の事しか覚えてなかったから…」
それにより天才軍師ホルンが抱いた、モスコーの生き写しであるカルーアへの疑いは晴れた
「良かったねぇサーシャ♪」
「心配させてしまいましたの」
辺りを見渡すヒイロ
三姉妹の長女アリスは三女のサーシャの帰還を手放しで喜んでいる。お手伝いさん達は別の部屋で用意をしている為、この部屋には居ない。ホロミナティやリーリア姉妹も砦の外に居た
「んっ!?」
そんな中で彼が気になったのは…明るい報告があったのにも関わらず気分の優れない表情をしているロミーと、彼女を心配しているクリストファーとクーニャの姿
「貴女がロミータですね?」
アリスやカルーアが落ち着いたのを確認したエリスア様が、静かにマナティートの姫であるロミーに近寄った
「はい、そうです…惑星神様にお会いできて…光栄です…んしょ…うぅ…」
「顔色が良くないみたいですね…無理に立ち上がらなくて良いですよ。記憶を移植して間もないので、その身体に順応するのに少し時間が掛かりそうですね」
惑星神を目の前にしたロミーは、座っていた椅子から立ち上がろうとしたが…上手くチカラが入らなかった
「ロミー様が地球から来た事を知っておられるのですか?」
今朝、ロミータ本人から彼女は地球という星から転生した存在だと知らされたばかりのクリストファーが、惑星神と言えどエリスア様がその事を知っている事に驚いた
「地球の惑星神であるガイア様は私の上司にあたる偉い神様なのです。そのガイア様から…息子を助ける為に生命を落としたロミータの願望でこの星に転生したい。と言われたらしいので、ちょうど亡くなったばかりの…この国の姫の身体を借りました。そして、貴女の世話をお願いしたい。と言われています…少しチカラを抜いて楽にしてください」
そう言うとエリスア様は、ツラそうな表情をしているロミータの頭部を左右の手のひらで挟むようにした…温かい光がエリスア様の手から発光し、それがロミータの頭部全体を柔らかく包んだ。室内の全員がその様子を見守った
「ほあぁぁぁ♪」
「どうですかロミータ?」
「凄いですわっ!ずっと消えてくれなかった頭痛がスッキリしました♪有難うございますエリスア様!」
「それは良かったです…とは言え、貴女の魂がその身体に完全に馴染むのには…あと50時間ほどでしょうか?それまで安静にしている必要がありますね」
エリスアの光で癒されたロミータ。しかし完全に魂と身体が同化するのは明後日の夜頃らしい
「エリスア様、有難うございます!」
「今後も御助力をお願い致します!」
自国の姫に助力してもらった事に感謝を述べるクリストファーとホルン。だが、今まで優しい笑みを浮かべていたエリスア様の表情が、厳しい感じへと変化した
「ひとつ…ハッキリしておかなければならない事が有ります。人間たちの私への信仰心は大変嬉しく思っていますよ…ですが、それは魔族たちも同じだと言う事を理解してください」
「どういう事なのでしょうか?」
転生したばかりで事情が飲み込みにくいロミータ。更に自分がこの国の姫である事を自覚し始めていた彼女は、他の者の疑問も自分が代表して質問した
「人間たちも魔族の者たちも、私からすれば同じく愛すべき我が子なのです。そして、魔族の者たちも私を信仰してくれています。その立場に居る以上、私はドチラかだけを贔屓する事は出来ないのです」
「そんなっ!駄目なのですか?」
「今、マナティートは人間側が苦戦しています。このままでは…」
「待ちなさい2人とも!」
ロミータとクリストファーの、エリスア様への進言を阻んだホルン
「人族からも魔族からも信仰されている以上、エリスア様は中立でなければならないのです。それを人族側(ワタシタチ)が苦しいから味方をして欲しい。と言うのは身勝手というものです!」
「流石は天才軍師と呼ばれているだけ有りますね。その通りです。今回ロミータを助ける為にアルバートファミリーにお願いしましたが…それはマナティートの戦争を、人族側の勝利に導く為に連れてきたのではありません。彼らは明後日の夜以降に【ヘルメスの街】に帰還させます」
「ロミーが回復するまでの限定的な事。という訳なのですね…」
「そうです。彼等には、必要以上の戦いに参加する事は控えていただきます…特にサーシャ。貴女は、その回復魔法をロミータ以外に使用する事は今回は許しません。良いですか?必ず守るのですよ?」
あくまで今回アルバートファミリー達に動いてもらったのは、ガイア様からの要望であるロミータが、完全にこの星の住人となれる日まで護衛することなのだ
「…と言うことは…カルーアや外に居る貴方たちのお仲間の戦闘力(チカラ)は、戦力としてはアテにしてはならない!という事ですか?…それは凄く残念ですね…」
近年、大きな障害となっている【マーマル遊撃隊】や、不利な情勢を打破する為に彼らの戦闘力(チカラ)をアテにしたかったホルンやクリストファーにしては、非常に残念な話である
「少し…思い違いをされていますね。アルバートファミリーや彼らが連れてきた仲間たちが、それぞれの判断で魔族と戦う事においては制限はしません。ただ、サーシャは天使族であり私の娘なのです。同じく私を信仰する者との戦いにおいては、その魔法力(チカラ)を行使して欲しくないのです」
「つまり、今回は地球から転生した私(ロミー)を見守る為に来たのですから、今回に限っては人間の為にサーシャちゃんには魔法力(チカラ)を使って欲しくない。という事ですね?」
「そういう事になります」
一生懸命に話を理解しようと頑張ったロミータ。彼女自身が地球を知る者でもあるので、エリスア様の言わんとする事を理解出来たようだ
「お母さま。今回に限ってはサーシャはアリスお姉さまや、カルーアお姉さまの怪我であっても直してはならないのですね?」
「そういう事です。貴女(サーシャ)の家族が魔族を倒すために戦って受けた傷を貴女が治してしまっては、魔族からすれば惑星神(ワタシ)が人間側を贔屓したと思ってしまいますからね……では私はこれで去りますがサーシャ。ロミータの事をお願いしますよ。ではヒイロ…彼女たちをよろしくお願いしますね」
「はい!任せてください!」
エリスア様の全身から光の結晶の様なものが現れる、彼女の身体を包み込んで発光した後…それが収まった頃には彼女の姿は既に無かった。それと同時に部屋の扉が開けられ、外から中へ何人かが入ってきた
「にぇー…大切な話とやらはまだ終わらないのかにゃ?もうお腹空いて仕方ないにぇ…」
「ヒイロ!たまには私(シャルル)の相手もしてよォ~!」
エリスア様が消えたと同時に、エリスア様が密かにこの部屋に張っていた【認識阻害(ハードゥーン)】が消滅したようだ
それまで中の様子が一切気にならなかった彼女たちは、急に中で行われている話し合いの事が気になり中に入ってきたようだ
「結局、我々だけの戦闘力(チカラ)で、この苦しい局面を打開しなければなりませんか…」
信仰している惑星神エリスア様の登場により、人間側に助けが入ることを期待してしまっていたホルンとクリストファーは、残念ながらそうはならなかったので再び気合いを入れ直すのだった
続く
広い部屋にサーシャを連れて現れた惑星神エリスアが魅せてくれたカルーアの過去で判明した、エルフの隠れ里の最後の日の様子
「ごめんなさいカルーア。疑ってしまって…」
「良いんだよ。わたしも昔の傷のせいで、つい最近の事しか覚えてなかったから…」
それにより天才軍師ホルンが抱いた、モスコーの生き写しであるカルーアへの疑いは晴れた
「良かったねぇサーシャ♪」
「心配させてしまいましたの」
辺りを見渡すヒイロ
三姉妹の長女アリスは三女のサーシャの帰還を手放しで喜んでいる。お手伝いさん達は別の部屋で用意をしている為、この部屋には居ない。ホロミナティやリーリア姉妹も砦の外に居た
「んっ!?」
そんな中で彼が気になったのは…明るい報告があったのにも関わらず気分の優れない表情をしているロミーと、彼女を心配しているクリストファーとクーニャの姿
「貴女がロミータですね?」
アリスやカルーアが落ち着いたのを確認したエリスア様が、静かにマナティートの姫であるロミーに近寄った
「はい、そうです…惑星神様にお会いできて…光栄です…んしょ…うぅ…」
「顔色が良くないみたいですね…無理に立ち上がらなくて良いですよ。記憶を移植して間もないので、その身体に順応するのに少し時間が掛かりそうですね」
惑星神を目の前にしたロミーは、座っていた椅子から立ち上がろうとしたが…上手くチカラが入らなかった
「ロミー様が地球から来た事を知っておられるのですか?」
今朝、ロミータ本人から彼女は地球という星から転生した存在だと知らされたばかりのクリストファーが、惑星神と言えどエリスア様がその事を知っている事に驚いた
「地球の惑星神であるガイア様は私の上司にあたる偉い神様なのです。そのガイア様から…息子を助ける為に生命を落としたロミータの願望でこの星に転生したい。と言われたらしいので、ちょうど亡くなったばかりの…この国の姫の身体を借りました。そして、貴女の世話をお願いしたい。と言われています…少しチカラを抜いて楽にしてください」
そう言うとエリスア様は、ツラそうな表情をしているロミータの頭部を左右の手のひらで挟むようにした…温かい光がエリスア様の手から発光し、それがロミータの頭部全体を柔らかく包んだ。室内の全員がその様子を見守った
「ほあぁぁぁ♪」
「どうですかロミータ?」
「凄いですわっ!ずっと消えてくれなかった頭痛がスッキリしました♪有難うございますエリスア様!」
「それは良かったです…とは言え、貴女の魂がその身体に完全に馴染むのには…あと50時間ほどでしょうか?それまで安静にしている必要がありますね」
エリスアの光で癒されたロミータ。しかし完全に魂と身体が同化するのは明後日の夜頃らしい
「エリスア様、有難うございます!」
「今後も御助力をお願い致します!」
自国の姫に助力してもらった事に感謝を述べるクリストファーとホルン。だが、今まで優しい笑みを浮かべていたエリスア様の表情が、厳しい感じへと変化した
「ひとつ…ハッキリしておかなければならない事が有ります。人間たちの私への信仰心は大変嬉しく思っていますよ…ですが、それは魔族たちも同じだと言う事を理解してください」
「どういう事なのでしょうか?」
転生したばかりで事情が飲み込みにくいロミータ。更に自分がこの国の姫である事を自覚し始めていた彼女は、他の者の疑問も自分が代表して質問した
「人間たちも魔族の者たちも、私からすれば同じく愛すべき我が子なのです。そして、魔族の者たちも私を信仰してくれています。その立場に居る以上、私はドチラかだけを贔屓する事は出来ないのです」
「そんなっ!駄目なのですか?」
「今、マナティートは人間側が苦戦しています。このままでは…」
「待ちなさい2人とも!」
ロミータとクリストファーの、エリスア様への進言を阻んだホルン
「人族からも魔族からも信仰されている以上、エリスア様は中立でなければならないのです。それを人族側(ワタシタチ)が苦しいから味方をして欲しい。と言うのは身勝手というものです!」
「流石は天才軍師と呼ばれているだけ有りますね。その通りです。今回ロミータを助ける為にアルバートファミリーにお願いしましたが…それはマナティートの戦争を、人族側の勝利に導く為に連れてきたのではありません。彼らは明後日の夜以降に【ヘルメスの街】に帰還させます」
「ロミーが回復するまでの限定的な事。という訳なのですね…」
「そうです。彼等には、必要以上の戦いに参加する事は控えていただきます…特にサーシャ。貴女は、その回復魔法をロミータ以外に使用する事は今回は許しません。良いですか?必ず守るのですよ?」
あくまで今回アルバートファミリー達に動いてもらったのは、ガイア様からの要望であるロミータが、完全にこの星の住人となれる日まで護衛することなのだ
「…と言うことは…カルーアや外に居る貴方たちのお仲間の戦闘力(チカラ)は、戦力としてはアテにしてはならない!という事ですか?…それは凄く残念ですね…」
近年、大きな障害となっている【マーマル遊撃隊】や、不利な情勢を打破する為に彼らの戦闘力(チカラ)をアテにしたかったホルンやクリストファーにしては、非常に残念な話である
「少し…思い違いをされていますね。アルバートファミリーや彼らが連れてきた仲間たちが、それぞれの判断で魔族と戦う事においては制限はしません。ただ、サーシャは天使族であり私の娘なのです。同じく私を信仰する者との戦いにおいては、その魔法力(チカラ)を行使して欲しくないのです」
「つまり、今回は地球から転生した私(ロミー)を見守る為に来たのですから、今回に限っては人間の為にサーシャちゃんには魔法力(チカラ)を使って欲しくない。という事ですね?」
「そういう事になります」
一生懸命に話を理解しようと頑張ったロミータ。彼女自身が地球を知る者でもあるので、エリスア様の言わんとする事を理解出来たようだ
「お母さま。今回に限ってはサーシャはアリスお姉さまや、カルーアお姉さまの怪我であっても直してはならないのですね?」
「そういう事です。貴女(サーシャ)の家族が魔族を倒すために戦って受けた傷を貴女が治してしまっては、魔族からすれば惑星神(ワタシ)が人間側を贔屓したと思ってしまいますからね……では私はこれで去りますがサーシャ。ロミータの事をお願いしますよ。ではヒイロ…彼女たちをよろしくお願いしますね」
「はい!任せてください!」
エリスア様の全身から光の結晶の様なものが現れる、彼女の身体を包み込んで発光した後…それが収まった頃には彼女の姿は既に無かった。それと同時に部屋の扉が開けられ、外から中へ何人かが入ってきた
「にぇー…大切な話とやらはまだ終わらないのかにゃ?もうお腹空いて仕方ないにぇ…」
「ヒイロ!たまには私(シャルル)の相手もしてよォ~!」
エリスア様が消えたと同時に、エリスア様が密かにこの部屋に張っていた【認識阻害(ハードゥーン)】が消滅したようだ
それまで中の様子が一切気にならなかった彼女たちは、急に中で行われている話し合いの事が気になり中に入ってきたようだ
「結局、我々だけの戦闘力(チカラ)で、この苦しい局面を打開しなければなりませんか…」
信仰している惑星神エリスア様の登場により、人間側に助けが入ることを期待してしまっていたホルンとクリストファーは、残念ながらそうはならなかったので再び気合いを入れ直すのだった
続く
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