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夢忘れ編
決戦前夜の乙女たち
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【呑み喰い屋 ユグドラシル】
「うぅぅぅ…」
「アリス…」
ヒイロは同じテーブルに座っている義妹のアリスが、身体を震わせていることに気が付いた
(本当なら俺も、こんな雰囲気なのだからアリスを連れて店を出て行きたい気分だが…)
昨日の戦闘中、末っ子のサーシャが連れ去られた。同じ魔族側の者がやった事だからと、ヨシュアが単身で店内の奥に居る3人組み(宝石魔族(カーバンクル)のテウはアジトで留守番していて居ない)の元に向かったのだが…その内の1人と恋人のような仲を魅せ付けて店内に居るのだ。彼女であるアリスからしたら、とてもじゃないが同じ店内に居られたものではないだろう
(こんなお店早く出て行きたい!けど…エリエスちゃんの帰りを待たないと……)
彼氏のヨシュアが別(しかも敵側)の女とイチャイチャしてる姿など見たくなくて当たり前なのだが…マリニウム人族側の重要人物ホルンの護衛に来ている今、彼女たちの帰還を待たずに店を飛び出したい気持ちを必死で押さえ付けているので、アリスの身体は小刻みに震えている
「もしかして、このマナティートに来られたのは初めてでしょうか?…良かったら、お連れの方が戻られるまで同席させてもらっても宜しいでしょうか?」
仕方なく着席し続けているアリスに声を掛けてきたオレンジヘアーの少女
「貴女はだぁれ?」
この店は横長の建物になっていて右手側に入り口が有り、壁側にテーブル席が等間隔で並んでいて反対側にカウンター席が並んでいる
東西に伸びた店内の中央に調理場と、先程 店長が出てきた扉があるのだが…店長は、店の奥に魔族側の者を…入り口付近に人族側の客を座らせるようにしていた
初めてこの店に来たオボロ達は普段人前に姿を見せないので、どちら側の種族なのか?確信を持てなかったので、ランドルフ達は店内の中央側のテーブルに彼女らを案内していた
「オボロと言います。貴方たちは、このマナティートと違う土地から来られたのでしょう?」
「ひ、姫!?」
「んぅ!?」
魔族だけでなく人族も混在しているこの店内で、アッサリ自分の名を明かしてしまった彼女に驚きを隠せないツバキとモメント
「あの子が姫なのか?」
「そう、みたいだね。僕も見たのは初めてだよ」
奥の席に案内されたヨシュアはもちろんだが、遊撃隊隊長のマーマルも彼女が魔族側の姫だとは知らなかったようだ
「良かったのですか?」
「何がでしょうか?」
「貴女の仰るように、俺たちは異国からの来訪者です。戦争とは関係のない場所での頼まれ事を果たす為に来ています…が、種族的には敵対してるじゃないですか?」
「ふふ、確かにそうですね♪ですが、貴方たち2人の目には魔族の者に対して憎しみや殺意のような感情が、まるで感じられませんから…それに、この店内には優秀な魔族の者が多く居るみたいですからね(ニコ)」
初対面となるヒイロとアリスには、既に敵対する意思が無いことを見抜いているオボロ。そんな彼女から声を掛けられたのだが…状況をよく分かっていないアリスの代わりに、魔族側の姫であるオボロと対話しているヒイロ
「そうですか…そうですね。俺はヒイロ・アルバート。ここから大きく南下した位置にある【ヘルメスの街】で鍛冶師をしています。そして、この子が義妹の…」
「あ、アリスです!よろしくねぇ♪」
種族的に敵対している魔族側の姫に対して、礼儀を踏まえて挨拶を返したヒイロだったが…誰に対しても分け隔てなく接する性分のアリスは、まるで友達の友達にするような挨拶をした
……………………………………………
「まぁ!アリスさんも同じ15歳なのですね」
「うん、そうだよぉ。誕生日は覚えてなかったから、姉妹揃って同じ日を誕生日にしたんだぁ♪」
「そうなのですね?私も明後日には15歳になります。差し支えなければ、アリスさんは今までどのような生活をなさっていたのか?教えていただけませんか?」
「うん、良いよぉ!アタシはねぇ、元々獣人狼族の集落に住んでたんだけどねぇ…」
一国の姫が、中立地帯であるこの町の呑み喰い屋で自分の立場を明かして、素性も分からない敵対してる人族側の者と楽しげに話している
「あの、私も同席して良いですか?」
「すみません。私もお願いします」
オボロの大胆な行動を制止するのを諦めたツバキとモメントも、アリスとヒイロが座っていたテーブルに相席した
……………………………………………
「なるほど。ヒイロ君はヘルメスの街で鍛冶師をして妹さん達を養っているのですね」
「そうですね…とは言え、3人とも立派に成長して冒険者として稼ぐようになりましたので、俺の稼ぎが無くても大丈夫みたいです」
「私と姫様も、ヘルメスのように戦争に巻き込まれていない場所で生まれ育ってイチャニャニャニャ……おほん!いたなら、アリスさん達と仲良くなれていたかも?ですね♪」
ヒイロもアリスも、純粋な人族ではない。いわゆる亜人族に分類されるのだが、先祖代々の流れで人族側に付いているだけ。とも言えなくないからなのか?モメントとツバキも、知り合いと話すかの様にアリス達と談笑していた
「流石アリスだな。出会ったばっかの姫様たちと、もうあんなに仲良く話してるぜ♪」
「し、仕方ないだろ?俺は生まれたスグに戦闘用として育成されてきたんだ。あんなにコミニュケーションするなんて…出来ないよ」
「いやいやいや?別にリュウキと比較した訳じゃねーから、気にすんなよな」
アリスとオボロ達が、まるで既に仲良い知人のように会話してる姿を、親公認で恋人関係にあるヨシュアが嬉しそうに見ている姿に嫉妬したリュウキがヘソを曲げていた
「まぁ、オボロ様がキミとアリスちゃんの空気の悪さを察して、ボク達の代わりに仲裁役をしてくれているんだろ?リュウキもちゃんと感謝しておくんだよ?」
「……そうかもしんないけどさ。俺には、そんな器用なこと出来る気がしないよ…」
マーマルとて、記憶の中には戦争時代のモノがほとんどである。それはリュウキも同じなので、彼女に人付き合いの上手さや、雰囲気を作って場を和ませる能力を期待するのは難しいのは理解していた
(よしよし。リュウキが戦闘以外のことで、こんなにも葛藤してくれたのは想定外だ♪これで、彼女は更なる飛躍を遂げるハズ…)
リュウキの肉体改造に関与しているマーマルとしては、単に戦闘力だけが強くなるだけでなく彼女自身が、皆から尊敬されるような精神的な強さを持つ存在になって欲しいのだ
【ファスク城 展望台】
「……………」
「どうしました?もう酔われたのですか?」
数種類のワインが置かれたテーブルに向かい合いチビチビと呑みながら、別々に過ごした過去の思い出を語り合っていたシャオシュウとディー・アモン
「いや、そうではない。どうやら渇望の魔女が帰ってきたようじゃぞ?…ん!?なんじゃ、妙に疲労しておるな…」
「フハハハハ♪魔王専属の魔女フュールともあろう人が、油断してほころびを産んでしまったのですかね~?…吾輩が見てきましょう。同志は酔いを覚ましていなさいね?」
「ふふ、なかなか紳士じゃないか?傍若無人のヤンチャ坊だった貴様がな(笑)」
普段は他人に対して、こんな気配りなどはしないディー・アモンだったが…幼なじみと言える彼女が酔っているのではなく、迫り来る寿命の刻からの疲れなのを察知しての優しさだった
【会議室】
「医療班をまわせっ!」
「魔力供給部屋の準備をさせろ!」
普段は厳かに作戦を練る会議室だが、今は慌ただしく右往左往する兵士たちが目立っていた
「ガチャ…う~ん、騒がしいですね~。同志シャオシュウとの想い出創りがシラケてしまいま~す。どうかしたのですか?」
「はは…それは済まなかったな、ディー」
会議室の1箇所に城内の魔法使いが集まっている。その中央で、彼等が描いた魔法陣の中心で座っているフュールが居た
「致命傷こそ受けていませんが…貴女にしては、珍しく苦戦したようですねぇ?」
「ははは…明日は久しぶりに戦場で華々しくチカラを魅せられると思い、タンスの奥から引っ張り出してきた一張羅(いっちょうら)が、このザマだよ…」
床に座り込んでいるフュールはスカートを引っ張り上げて、傷だらけになった服や身体を魅せた
「ふぬ~…ヴァル殿?」
「こちらに!…まさか、ブリニァンと交戦されたのですか?」
かつて、共にザッドに仕え【魔王の両腕】と呼ばれた自分とフュール。その彼女に、これ程のダメージを与えられる敵の存在に納得がいかないディーは、城主のヴァル・ファスクを呼び事情を尋ねた
……………………………………………
「なるほどでぇす。さきほど聞いた「決して足並みを揃えないが、油断のならないSランクレベルの独立戦力」と言うのが、そのキツネ女なのですねぇ?」
「その女と交戦状態に入って逃げ帰れた者がほとんど居ませんので、そういう存在が居る!という噂話程度の存在が居まして…」
「ふぅ…実態が良く分からないからハッキリ伝えなかった訳ね。そんな奴と遭遇してしまったのか…今夜はとことんツイていないな」
単独戦闘を好み、人目に付かない場所で魔族側の猛者を狩っている、キツネ科の獣人族の存在が上手く伝わらなかった故のフュールの痛手だった
「フュール様っ!衛生班が回復の秘湯を用意しました。しばらく入浴し、傷と魔力を回復してください」
「やれやれ、恥ずかしい目に合わされたわ。安心して、明日の決戦には必ず役に立つからさ」
そう言うとフュールは衛生兵についていき、入浴による回復を図ることにした
「困りましたねぇ…今スグに戦闘になりでもしたらぁ、吾輩が前面に立ち張り切らなくてはならないじゃ、あーりませんかぁ(笑)」
最古の魔女の疲労は激しく、最高戦力と目されていたフュールが大ダメージを受けて帰還した。後は自分(ディー)と消去の魔女の唯一の弟子の2人しか増援は居ない
この状態では、魔族からの期待が自分に降り注ぐのは避けられないと覚悟するディー・アモンだったが…
しかし!決着のタイミングは、明日の昼まで待ってはくれない雰囲気になっていた
続く
「うぅぅぅ…」
「アリス…」
ヒイロは同じテーブルに座っている義妹のアリスが、身体を震わせていることに気が付いた
(本当なら俺も、こんな雰囲気なのだからアリスを連れて店を出て行きたい気分だが…)
昨日の戦闘中、末っ子のサーシャが連れ去られた。同じ魔族側の者がやった事だからと、ヨシュアが単身で店内の奥に居る3人組み(宝石魔族(カーバンクル)のテウはアジトで留守番していて居ない)の元に向かったのだが…その内の1人と恋人のような仲を魅せ付けて店内に居るのだ。彼女であるアリスからしたら、とてもじゃないが同じ店内に居られたものではないだろう
(こんなお店早く出て行きたい!けど…エリエスちゃんの帰りを待たないと……)
彼氏のヨシュアが別(しかも敵側)の女とイチャイチャしてる姿など見たくなくて当たり前なのだが…マリニウム人族側の重要人物ホルンの護衛に来ている今、彼女たちの帰還を待たずに店を飛び出したい気持ちを必死で押さえ付けているので、アリスの身体は小刻みに震えている
「もしかして、このマナティートに来られたのは初めてでしょうか?…良かったら、お連れの方が戻られるまで同席させてもらっても宜しいでしょうか?」
仕方なく着席し続けているアリスに声を掛けてきたオレンジヘアーの少女
「貴女はだぁれ?」
この店は横長の建物になっていて右手側に入り口が有り、壁側にテーブル席が等間隔で並んでいて反対側にカウンター席が並んでいる
東西に伸びた店内の中央に調理場と、先程 店長が出てきた扉があるのだが…店長は、店の奥に魔族側の者を…入り口付近に人族側の客を座らせるようにしていた
初めてこの店に来たオボロ達は普段人前に姿を見せないので、どちら側の種族なのか?確信を持てなかったので、ランドルフ達は店内の中央側のテーブルに彼女らを案内していた
「オボロと言います。貴方たちは、このマナティートと違う土地から来られたのでしょう?」
「ひ、姫!?」
「んぅ!?」
魔族だけでなく人族も混在しているこの店内で、アッサリ自分の名を明かしてしまった彼女に驚きを隠せないツバキとモメント
「あの子が姫なのか?」
「そう、みたいだね。僕も見たのは初めてだよ」
奥の席に案内されたヨシュアはもちろんだが、遊撃隊隊長のマーマルも彼女が魔族側の姫だとは知らなかったようだ
「良かったのですか?」
「何がでしょうか?」
「貴女の仰るように、俺たちは異国からの来訪者です。戦争とは関係のない場所での頼まれ事を果たす為に来ています…が、種族的には敵対してるじゃないですか?」
「ふふ、確かにそうですね♪ですが、貴方たち2人の目には魔族の者に対して憎しみや殺意のような感情が、まるで感じられませんから…それに、この店内には優秀な魔族の者が多く居るみたいですからね(ニコ)」
初対面となるヒイロとアリスには、既に敵対する意思が無いことを見抜いているオボロ。そんな彼女から声を掛けられたのだが…状況をよく分かっていないアリスの代わりに、魔族側の姫であるオボロと対話しているヒイロ
「そうですか…そうですね。俺はヒイロ・アルバート。ここから大きく南下した位置にある【ヘルメスの街】で鍛冶師をしています。そして、この子が義妹の…」
「あ、アリスです!よろしくねぇ♪」
種族的に敵対している魔族側の姫に対して、礼儀を踏まえて挨拶を返したヒイロだったが…誰に対しても分け隔てなく接する性分のアリスは、まるで友達の友達にするような挨拶をした
……………………………………………
「まぁ!アリスさんも同じ15歳なのですね」
「うん、そうだよぉ。誕生日は覚えてなかったから、姉妹揃って同じ日を誕生日にしたんだぁ♪」
「そうなのですね?私も明後日には15歳になります。差し支えなければ、アリスさんは今までどのような生活をなさっていたのか?教えていただけませんか?」
「うん、良いよぉ!アタシはねぇ、元々獣人狼族の集落に住んでたんだけどねぇ…」
一国の姫が、中立地帯であるこの町の呑み喰い屋で自分の立場を明かして、素性も分からない敵対してる人族側の者と楽しげに話している
「あの、私も同席して良いですか?」
「すみません。私もお願いします」
オボロの大胆な行動を制止するのを諦めたツバキとモメントも、アリスとヒイロが座っていたテーブルに相席した
……………………………………………
「なるほど。ヒイロ君はヘルメスの街で鍛冶師をして妹さん達を養っているのですね」
「そうですね…とは言え、3人とも立派に成長して冒険者として稼ぐようになりましたので、俺の稼ぎが無くても大丈夫みたいです」
「私と姫様も、ヘルメスのように戦争に巻き込まれていない場所で生まれ育ってイチャニャニャニャ……おほん!いたなら、アリスさん達と仲良くなれていたかも?ですね♪」
ヒイロもアリスも、純粋な人族ではない。いわゆる亜人族に分類されるのだが、先祖代々の流れで人族側に付いているだけ。とも言えなくないからなのか?モメントとツバキも、知り合いと話すかの様にアリス達と談笑していた
「流石アリスだな。出会ったばっかの姫様たちと、もうあんなに仲良く話してるぜ♪」
「し、仕方ないだろ?俺は生まれたスグに戦闘用として育成されてきたんだ。あんなにコミニュケーションするなんて…出来ないよ」
「いやいやいや?別にリュウキと比較した訳じゃねーから、気にすんなよな」
アリスとオボロ達が、まるで既に仲良い知人のように会話してる姿を、親公認で恋人関係にあるヨシュアが嬉しそうに見ている姿に嫉妬したリュウキがヘソを曲げていた
「まぁ、オボロ様がキミとアリスちゃんの空気の悪さを察して、ボク達の代わりに仲裁役をしてくれているんだろ?リュウキもちゃんと感謝しておくんだよ?」
「……そうかもしんないけどさ。俺には、そんな器用なこと出来る気がしないよ…」
マーマルとて、記憶の中には戦争時代のモノがほとんどである。それはリュウキも同じなので、彼女に人付き合いの上手さや、雰囲気を作って場を和ませる能力を期待するのは難しいのは理解していた
(よしよし。リュウキが戦闘以外のことで、こんなにも葛藤してくれたのは想定外だ♪これで、彼女は更なる飛躍を遂げるハズ…)
リュウキの肉体改造に関与しているマーマルとしては、単に戦闘力だけが強くなるだけでなく彼女自身が、皆から尊敬されるような精神的な強さを持つ存在になって欲しいのだ
【ファスク城 展望台】
「……………」
「どうしました?もう酔われたのですか?」
数種類のワインが置かれたテーブルに向かい合いチビチビと呑みながら、別々に過ごした過去の思い出を語り合っていたシャオシュウとディー・アモン
「いや、そうではない。どうやら渇望の魔女が帰ってきたようじゃぞ?…ん!?なんじゃ、妙に疲労しておるな…」
「フハハハハ♪魔王専属の魔女フュールともあろう人が、油断してほころびを産んでしまったのですかね~?…吾輩が見てきましょう。同志は酔いを覚ましていなさいね?」
「ふふ、なかなか紳士じゃないか?傍若無人のヤンチャ坊だった貴様がな(笑)」
普段は他人に対して、こんな気配りなどはしないディー・アモンだったが…幼なじみと言える彼女が酔っているのではなく、迫り来る寿命の刻からの疲れなのを察知しての優しさだった
【会議室】
「医療班をまわせっ!」
「魔力供給部屋の準備をさせろ!」
普段は厳かに作戦を練る会議室だが、今は慌ただしく右往左往する兵士たちが目立っていた
「ガチャ…う~ん、騒がしいですね~。同志シャオシュウとの想い出創りがシラケてしまいま~す。どうかしたのですか?」
「はは…それは済まなかったな、ディー」
会議室の1箇所に城内の魔法使いが集まっている。その中央で、彼等が描いた魔法陣の中心で座っているフュールが居た
「致命傷こそ受けていませんが…貴女にしては、珍しく苦戦したようですねぇ?」
「ははは…明日は久しぶりに戦場で華々しくチカラを魅せられると思い、タンスの奥から引っ張り出してきた一張羅(いっちょうら)が、このザマだよ…」
床に座り込んでいるフュールはスカートを引っ張り上げて、傷だらけになった服や身体を魅せた
「ふぬ~…ヴァル殿?」
「こちらに!…まさか、ブリニァンと交戦されたのですか?」
かつて、共にザッドに仕え【魔王の両腕】と呼ばれた自分とフュール。その彼女に、これ程のダメージを与えられる敵の存在に納得がいかないディーは、城主のヴァル・ファスクを呼び事情を尋ねた
……………………………………………
「なるほどでぇす。さきほど聞いた「決して足並みを揃えないが、油断のならないSランクレベルの独立戦力」と言うのが、そのキツネ女なのですねぇ?」
「その女と交戦状態に入って逃げ帰れた者がほとんど居ませんので、そういう存在が居る!という噂話程度の存在が居まして…」
「ふぅ…実態が良く分からないからハッキリ伝えなかった訳ね。そんな奴と遭遇してしまったのか…今夜はとことんツイていないな」
単独戦闘を好み、人目に付かない場所で魔族側の猛者を狩っている、キツネ科の獣人族の存在が上手く伝わらなかった故のフュールの痛手だった
「フュール様っ!衛生班が回復の秘湯を用意しました。しばらく入浴し、傷と魔力を回復してください」
「やれやれ、恥ずかしい目に合わされたわ。安心して、明日の決戦には必ず役に立つからさ」
そう言うとフュールは衛生兵についていき、入浴による回復を図ることにした
「困りましたねぇ…今スグに戦闘になりでもしたらぁ、吾輩が前面に立ち張り切らなくてはならないじゃ、あーりませんかぁ(笑)」
最古の魔女の疲労は激しく、最高戦力と目されていたフュールが大ダメージを受けて帰還した。後は自分(ディー)と消去の魔女の唯一の弟子の2人しか増援は居ない
この状態では、魔族からの期待が自分に降り注ぐのは避けられないと覚悟するディー・アモンだったが…
しかし!決着のタイミングは、明日の昼まで待ってはくれない雰囲気になっていた
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