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最終章 妖精少女の夢は月光に…… 新世界を優しく煌めき照らす編 

魔王達VS魔神…… 太古の邪悪、再び!?

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「先手必勝!」「その首…… 貰う!」

挑戦者と魔剣の魔王の攻撃が、魔神の男に当たるが!?

「「!?」」

「フッ…… 軽い……」

挑戦者と魔剣の魔王の攻撃を軽々と受け止めて、魔神の姿が現れた。

「チッ、身体が軽過ぎる……」

「力が…… 乗り切らなかったか……」

「その程度では…… 魔神の中でも、一二を争う防御力を誇る私には…… 傷すら付けれませんよ」

「そんな格好で…… かてぇのかよ……」

魔神は黒い燕尾の礼服姿の男だった。

「私…… 絶対神の執事ですので……」

「絶対神…… お前達の崇拝する邪神の事か?」

「……(ボソボソ)」

「あん? 何だ? 聞こえねぇな」

「貴様等ごとき…… 下等な魔王達が……〝あの方〟を邪神と呼ぶな! あの方こそが…… 絶対なる神! 最高神を語る無能達とは違うのだ!」

「豹変した? どうやら…… 神話の時代からの古参の魔神の様ですね」

邪神の執事魔神【ロザウィン】

この男は…… 邪神が勇者だった時のパーティーメンバーの一人だった。

勇者に国が付けた〝監視役〟の聖騎士だった男は…… 密命を持って勇者パーティーに参加していた。

「良いか…… ロザウィンよ。あの勇者の監視を命ずる…… あの勇者の力と知識は、危険だ! あの勇者が我が国に剣を向けた時は…… 奴を国の聖騎士としての役目を果たせ!」

「御意!」

突然現れた強過ぎる勇者に…… 国の上層部は、危機感を持っていた。

しかし、ロザウィンは…… 次々に困難を打ち砕く勇者の絶対的な姿を崇拝する様になって行き……

「待て! あの勇者は危険過ぎるのだ。ロザウィン!?」

「あの方は…… 神だ! ならば、聖騎士として…… 神に弓引く悪を斬るのが…… 私の役目!」

国に迫る魔物達を打ち倒して、凱旋した勇者を暗殺しろと命を受けたロザウィンは…… 国王を始めとした国の上層部を斬り姿を消した。

その後……

その国は、勇者の友である第四王子が王位を継承する事になるが…… その傍らには、執事にしては屈強な男が常に仕えていたと言う。

それから、勇者が神となり最高神達に反旗を翻した時……

その国は最高神側に付くが……

一人の執事によって亡ぼされる事になる。

「貴殿方が悪いのですよ…… 愚かにも…… 絶対神に刃向かうから……」

その時、一国の人々を贄にして一柱の魔神が生まれた。

「我等の運命を弄ぶ最高神まがいもの達の前に…… 我が絶対神の贄になれ! 下等な魔王共!」

「こいつ…… 聖騎士のスキルを!?」

「魔神の癖に…… 聖属性を使えるのかよ!?」

「我らが絶対神に不可能は無いのですよ…… 絶対神に仕えし我らが、聖属性を使えるのは当たり前ですよ…… この様にね!」

「チッ! 手刀で斬撃を飛ばしやがる!?」

「この月面で…… 土魔法以外の属性を使えるのか!?」

「お前…… 魔神になる時に、どれだけの〝贄〟を喰いやがった!」

「ほぉ…… 下等な癖に見えるのですか? 我等が絶対神に刃向かった愚かな者達が……」

「てめぇ……〝ガキ〟を喰いやがったな……」

「この身体は…… 愚かな者達の血肉と魂で生まれ変わったのですよ…… あの方の新たな世界を作る礎になる為に!」

「胸糞が悪い…… 魔神を名乗りながらも、その身体は子供の犠牲が無ければ作れもしないのか…… 俺達がなる価値も無い寄生虫だ」

王と挑戦者の魔王の目に宿りしスキルが…… 魔神ロザウィンの身体の中で、もがき苦しむ子供達の姿を写し出していた。

「王……」

「解っている…… 俺達には、魂を癒す事は出来ないが…… 魔神に囚われし幼き魂よ…… お前達を癒す者と出逢う為、俺の〝闇〟で静かなる眠りに就くが良い!〝闇十字架ダーク・クロス〟」

「ム!? 黒い十字架だと…… こんな物、身体が…… 動きが鈍い!?」

王の魔王が放つ魔力が、複数の黒い十字架になり、魔神ロザウィンを囲み出すと……

「ぐっ! ま、まさか!? 贄にした愚かな魂が奪われているのか!?」

王の魔王の黒い十字架が、魔神ロザウィンの身体から幼き魂を抜き出すと…… 王の魔王の影に沈む。

「フム…… 幼き魂の回収は完了した。挑戦者に魔剣よ。後は好きにしろ」

「感謝する……」
「魂とは言え…… ガキを殴る拳は持たないからな」

「たかが幼子の魂ごとき…… 貴様等下等な魔王で補うとする事にしましょ…… ぐっ!?」

「その言葉は、我が剣と……」
「俺の拳を、止めてから言いな」

「貴様等……」

「月の重力にも慣れた…… ガキの分までボコってやら!」

「時代に残されし魔神よ…… その首との別れの時だ」

挑戦者と魔剣の魔王の攻撃を受け、千切れた上着をロザウィンが脱ぎ捨てると……

「認めるとしよう…… 貴様等、魔王達が…… 私の本来の戦闘にたる存在だと言う事を!」

ロザウィンの足下から、禍々しい程の穢れが噴き出した!

「我が名は、【魔呪騎神のロザウィン】…… 我が絶対神の剣と盾の誇りにかけて、貴様を屠るとしよう」

重鎧化した穢れを纏いし、魔呪騎神ロザウィンが現れた!

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闇の中で薄い光が照す水槽で…… ロザウィンの本気に反応する様にして……

人影が浮かび上がる……

「これは…… ロザウィンと魔王達の戦いが…… 影響しているのか? あの方が…… ついに目覚める!?」

歓喜に震える魔神が覗く水槽で…… 新たな身体を獲た太古の邪悪の鼓動が……

再び、人知らず動き出す……

その事に…… まだプレイヤー達は、気付いていない。

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