アリステール

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少年期~

結果と報告

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■■■■■参考記録

名前:アリス 出身:オクス村
 両親:父グレゴリー、母ルシル
生年月日:王暦530年3月23日 年齢:7歳7か月 性別:男

身体能力傾向

瞬発力:3
持続力:2

総合:2

素養傾向

身体能力:2
器用・敏捷性:2
教養・知性:4

判定:戦闘や生産傾向

魔力傾向
出力:1
操作:1
容量:1

判定:万能

■■■■■接続終了


・・・?
1で結果が良さげだから数字が小さいほど良いとは思うけど、何段階?

「へぇ、これは・・・」
「結果は良かったんでしょうか?」
「あぁ、むしろ素晴らしいと言ってもいいぐらいだ。魔力に関しては、むしろ言う言葉が思いつかない。
数字は1~10で、小さいほど優れている。ただし同じ年の子と比べてだから、良くもなれば悪くもなる。
あくまで現在の状況に過ぎないことは覚えておいてほしい。
あとはこの結果を教会の印がついた用紙に記録をして、それを持って帰ってもらうまでが選定の儀式だ。
少し待っててね」

修道士さんが脇に寄せられていた用紙に板に記された文字を書き写していく

結果が良かったのはうれしいけど、なんとなく違和感を覚える
参考記録?接続終了?
プログラムのようなシステマチックな文字に、統計から比較検討した数値のようなもの
それぞれにある黒塗りされたのはステータスバー?・・・それとも、文字が隠されている?
ゲームのような世界と言われたのは覚えているけど、これもその一端なのだろうか

疑問は尽きないが、書き写しは終わったようだ
修道士さんが何らかの操作をしたあと、板ははじめと同じように沈黙を保つ
初めは調べてみるのも面白そうだとも思って見ていたが、今はなんとなく不気味で未知のものに見えていた

「あの、この魔道具って教会が作ってるんですか?」
「ん?いや、そうではないよ。確か王都の魔道具ギルドが扱ってたと思う。ただ貴重な素材を使ってるからか数は少ないし非常に高価だ。
動かすにも魔力を流すかそれなりに等級の高い魔石が必要だから普段使う分には向かないし、素養もすぐに変わるものではないからね」
「この街は選定のために集まるから置いてあるんですね」
「そうだね。近くの村のことも考えると、王都に押し寄せるわけにもいかないし王都の人らの選定もある。
まぁ言葉は立派だけど、要は魔道具を国公認で扱うためにしているってことだよ」
「人材発掘のために?」
「おもしろい言葉を知ってるね。そういうことさ」

国の定める宗教だから援助もしているのだろうし、いわば教会は下請けのようなものか
しかし、素材面さえクリアすれば量産は可能だと。この魔道具に興味はもつが怖くもある
判定結果だけ見れば納得できる面もあるが、手を当てただけで身体能力や素養の傾向が見られるというのも不思議な話だ
まるでデータベースへアクセスして個人情報を覗き見ているような感じで、少し気味が悪い
とは思っていても今すぐ何か出来るわけでもないし、両親も知っているのだから選定の儀式自体も1年2年前に始まったというものでもない
そうまで続いて根付いているのだから、悪い影響が強いわけでもないのだろう。今も別段変わったことがあったとは思えない

「はい。この封筒の中にさっきの結果を書いた紙が入っている。親御さんにもちゃんと渡すんだよ」
「ありがとうございました」

今から難しいことを考え続けても、ものがなければ答えは出せない。それはいつかにまわしても影響はない
知ったところで、結局何がしたいのかもよくわからないのだから
ひとまずは思考を中断して街へ繰り出そうかな

修道士さんにお礼を言って教会を後にする。時間はあまり経っておらず、日は高いままだ
村にはないお店を見てみたいけど、まずは来るときに見かけた屋台で腹ごしらえも悪くない
封筒をインベントリへ収納し、今度は人の波に逆らって進んでいく



街に着いたときに見かけていた野菜スープと肉の串焼きを屋台で購入し、道端にあったベンチで食す
村で食べるときよりも香辛料が強く効いており、かいた汗が地面を濡らす
そろそろ村に帰って、仕事がなければ魔法の練習でもしようかな
そう思い、購入した屋台に器と串を返却しようと立ったところで、路地裏から屋台を見つめる子供の姿を見つけた
ぼろぼろで服のていをなしていない布を体に巻き付け、薄汚れて生気のない目をしている

浮浪児とか孤児?それなりに発展してるし専用の施設もありそうなものだけど
気になったので器の返却がてら、人がいなくなったタイミングで屋台の人に尋ねてみる

「ごちそうさまでした。少しお聞きしたいのですが、いいですか?」
「ん?料理のレシピなら高くつくぜ?」
「いえ、小さい子たちが路地の裏から見ているようなので、なんでかなと」
「あぁ。孤児院や教会の連中が保護してまわってるが、数が追い付いてないんだよ。
冒険者や娼婦の捨て子も多いって話だ。邪魔しなけりゃ仕事もやるし余ったら飯も食わせてるんだが、それでもな」
「そうなんですね」

魔物や魔獣という脅威がいる以上仕方のないことなんだろう
娼婦云々は気になるけど、この世界の避妊方法や女性問題なんてのも今の年で知ることすら難しい

「僕が払うのであの子たちにご飯を上げることはできますか?」
「・・・そりゃ構わねぇが、代金はまけねぇぞ?」
「ええ、大丈夫ですよ」
「ぼっちゃん、いいとこの子かい?あんまり肩入れしすぎてもいいこたぁねぇぞ?」
「いいとこの子ではないですけど、見かけて気になって少し手助け出来るならと思っただけです」
「ま、いいがよ。代金もらえりゃ物は売るさ。持ってくかい?」
「いえ、お手すきの時によければ渡してもらえませんか?代金は置いていきますので」
「あいよ」

街で取り組んでいる以上変に手を付けて問題が起きても、今は足りないものが多すぎる
募金感覚になるのは申し訳ないけど、今日自由に使えるお金には十分余裕がある
村では物々交換のほうが多いから、以前得た大金はほぼ手つかずだ。誰かのために力を使うのは経済力でも違いないと思う
言い訳するように自分の心を納得させながら、代金を置いてその場を去る


転移で戻ってもいいけど、ちょっと発散したい
街を出てからすぐに索敵魔法を展開し周囲の状況を探る。村へ続く道は均してあるが、それ以外は木々がまばらに生えている平原にも似た地形だ
最悪家にマーキングした自分の魔力があればどうしようも出来る。人の反応が目につかなくなったところで、離れた小高い丘に向かって走り出した


「おかえりアリー、ずいぶん遅かったのね」
「ただいま、母さん。人が多くて選定に時間かかったのと、珍しくて街を少し見てきたんだ」

夕方にさしかかろうという時間には家に帰っていた
見晴らしがよすぎて魔法の練習をするには不向きだったし、思いっきり走ったことでなんとなくスッキリしたので一通り満足した
早速とばかりにインベントリから教会でもらった封筒を手渡す

「選定はしっかり受けてこられたのね。あとで父さんと一緒に見ましょうか。針仕事が少しあるのだけど、手伝ってもらえる?」
「うん、わかった。その前にちょっと着替えてくるね」

汗で汚れた服を脱ぎ、全身に洗浄の魔法をかける。新しく作った、水を薄く延ばして回し汚れをとる魔法だ
範囲を指定すれば服でも野菜でもきれいに出来る優れもので、お湯で体を拭うより気持ちがいい
お風呂は恋しくなるが石鹸を見かけたことがないので代用のために重宝している
街には公衆浴場があるらしいが、出来ればきれいなお湯につかりたい。いつか秘密基地に作ってみようと練習しているが、排水面でまだ試行錯誤中だ

着替えたあとは母さんの針仕事を手伝う。冬に向けた防寒具を縫い合わせる作業だった
緻密な作業ながら縫いああせる毛皮が分厚く半ば力仕事を思わせるが、あまり強く縫い合わせると生地がもたない

この国では季節の境目は曖昧で、雪も見たことはないが寒くはなる
四季ほど明確ではないから過ごしやすくはあるけれど、備えがないと存外厳しい。街で見かけた子たちも無事過ごせればいいけれど

父さんが帰ってきたところで作業を中断する。5着は出来た

「おかえりなさい」
「・・・あぁ、ただいま。アリー、今日は大丈夫だったか?」
「うん、選定もちゃんと受けてきたよ。母さんに結果は渡してあるから、夜ご飯のあとに一緒に見よう」
「・・・そうだな」

夜ご飯を終えた後に選定の結果を両親と一緒に見る
両親とも魔力は見えなかったから長い列からさらに待たされたことにも盛り上がった
魔力の項目については普通と少し違うらしく、修道士さんに聞かされたことも説明したら喜んでくれた
改めて釘はさされたけれど、それを違えることは今後も無くしていくつもりだ
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