アリステール

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少年期~

選定

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選定について聞かされていたのは、おおよその身体能力や魔力、どんなことが得意かなどを調べる儀式をすること、7~8際を対象にすること
教会へ向かう道すがら、同年代らしい子供を連れた親子や、自分と同じように一人の子供を多く見かけた
それを狙ったように出店も多くあり、朝ごはんの代わりにするのか親にねだっている子供の姿もちらほらいる

母が作ってくれたごはんのおかげでお腹は空いていないが、野菜を煮込んだスープや肉の焼ける匂いについ目がひかれる
今日のためにと持たせてくれた、以前の魔物の買取金も少量手持ちにある
・・・が、ご飯は帰り道でも問題なかろう。せっかくの大々的なイベントだ。何かあって受けられなかったほうが痛手だ
そう思い直して、人の波に乗るように教会へ向けて歩を進めた

教会へ着いて目にした子供の数に若干圧倒される
村では子供が自分一人だったのが嘘のようだ
街からはそんなに離れていない立地だからこそ、街での生活を望む人が多いんだろうか
農村暮らしも意外と悪くないけどなぁ、自然は多いしどこかのんびりしてるし。虫は多いけど
益体もないことを考えつつ、最後尾らしきものを見つけ列に加わる
教会の入り口らしき門のところで証明書を出しているようなので、早いうちに準備しておこう
インベントリから直接ズボンのポケットに証明書を出しておき、人の流れに合わせて緩やかに進んでいく


日の高さを見るにそろそろ昼時だろうか
ようやく門の手前だ。朝からやってる割に時間がかかってるように思うが、この人数だから朝からやってるんだろうな
そう思い直して手に証明書を持ち、順番を待つ
門では修道服を着た人たちが慌ただしく動き回っており、列を整えたり書類を確認しているようだ
前の親子が紙を手渡し教会の中に続く列に案内された

「ようこそいらっしゃいました。証明書はお持ちですか?」
「はい、こちらです」
「確認させていただきます。・・・おや?」

近づいてきてくれた修道士さんに証明書を渡すと首を傾げられる
何かしら不備でもあったのだろうか?
おいてけぼりにされたまま別の人へ確認に走るその人を目で追いかける
後ろに並んだ人たちから若干嫌な目線を感じて居心地が悪くなるが、そう時間をかけずに戻ってくる

「失礼。確認できましたので別のものが案内します」

先ほどの確認に走られた修道士さんが少し離れたところから手招きしている
不思議に思いつつ近づいていく

「こんにちは。今日は一人で来たのかい?」
「え?はい、そうですが」
「そうか。魔力が見えることはご両親は知ってる?」
「・・・ええ、知ってます」
「ごめん、警戒させたね。魔力が見える子は別で選定をするんだ。だから僕についてきてほしいんだけど、いいかい?」
「そういうことなら、わかりました」

何かしら他の人とは違う印でもあった?見比べたわけでもないし、今更か
先導する後ろを付いてまわり、教会の裏口らしきところまで進んでいく

「ここが入り口だ。僕がこのまま担当させてもらうよ。まずは中へ」

開けられた入り口に後に続いてくぐる。生活感がある中でぽつんと浮くように、以前夜の街の入り口で見たような板が置いてあった
周囲はキッチンか洗い場か、若干湿気がある

「魔力が見える子は多くなくてね。申し訳ないけどここで選定させてもらうんだ」
「そうなんですか」
「ここは洗濯場でね。今日に備えてしっかり掃除はしてあるんだけど・・・実のところ使うのは、今回は初めてだね」

あれだけ人がいたのに。しかし魔法に関してはそこまで地位が低くないように思えるのだけど、こうした扱いを受けると何かしらあるんじゃないかと勘繰ってしまう
絶対数が少なくても自分があれだけ使えるのだから、そう悪いものではないと思いたいが、結局比較したことはないのだしと諦める

「ちなみに、魔力が見えることで選定に何かしら違いはあるんですか?」
「ん?そうだね、身体能力や素養の傾向に加えて、魔力の指向性について調べるんだ」
「指向性?」
「ああ。魔力が見えるといっても中身は色んな種類がある。
一概には言えないけれど、特定の魔法だけ得意だったり、魔力を貯めておけるけど出力が弱かったりその逆だったりとかね。
素養にも関係してくるし、もしそれが優れているのであれば色んな道が広がるだろう?
攻撃的な魔法が得意なら冒険者や軍の関係、補助的な魔法が得意なら先のに加えて商売だったり、全般的に広く深く使えるなら国に抱えられたりとね。
ただ・・・」

「ただ、市井に突発的にあらわれた魔力が見える子は厄介な傾向があるとか?」

「・・・これは驚いた。そうだね。両親とも魔力が見えていると、子も優れた資質を持っていることも多い。
そしてそうでない子の場合は何かしら欠けていることが多い。もちろんこれも全員に当てはまるわけではないし、君がそうだとも言わないけどね」

魔力を使って魔法を扱えることは有利でも、不利になる要素もあるし扱う人次第ってことかな?
だとしたら理解を示してくれる父や母の存在だけで有利に近いものがある
もし魔力が見える家系でも不利な要素があったとしたら、どんな扱いを受けることになるだろうか
改めて両親に感謝しなければいけない

「さぁ、準備も整った。
この板は魔道具の一種で、その人がもつ身体能力や素養の傾向などを簡易的に数値化して示すものだ。
通常なら僕たちが魔道具を起動させるけれど、魔力が見える場合は直接魔力を流して起動してもらう必要がある。魔力の扱いは大丈夫かい?」
「ええ、多少魔法の練習もしてましたので」
「ならよし。さぁ、どうぞ」

近くでみるとなんとも不思議な素材だ。青い半透明で、板を通して机が若干見えている
魔道具ってなんでもありなのか、この魔道具が特別なのか
いつか調べてみるのも面白そうだけど、まずは試してみよう

横にずれた思考を矯正し、板に手を触れ普段通り魔法を扱うときのように魔力を流す
これまで自然にある色んな素材に魔力を流しても特に変化が起こることはなかったが、何かしらの機械に電源を入れたかのように薄く発光し始める
マジックハンドよりも淡く青い光だったが、しばらくすると板の表面に文字が浮かんでいるのが見て取れた
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