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少年期~
噂の真偽
しおりを挟む依頼の話を早々に終えて院長先生から依頼書の写しの記名と報酬の銅貨6枚をいただく
時刻は正午をまわろうとしており、食事のためと全員が出ていこうとするのを兄と叔母の息子、ローレンスとブルースさんを引き止める
院長にはインベントリに入れていた村の野菜を提供した。収穫の折に各家庭へ分けられるうち、消費出来そうにないものを買い取ったものだ
非常食として持ち込んでいたが、惜しむつもりはない。話をしたい言うと、野菜の代わりにとこのまま院長室を借りることも出来た
「では改めて。オクス村の父グレゴリー、母ルシルの次男アリスと言います。ローレンスさんは初めて会うけれど、お兄さんになります」
「あぁ、父さんと母さんからの手紙にも書いてあったから弟がいたのは知ってる。学院が忙しくて行けなかったけどな」
「ええ、それも聞いています。それをとやかく言うつもりはないですし、今二人を追ってたのは街の噂のことです」
「・・・どうもその話し方、むず痒い。もっと砕けて話してくれ。ていうか本当に7歳かお前」
「半ば癖みたいなものなので。努力します。ちょっと前に8歳になりましたよ。で、それは後でもいいです。
兄さんとブルースさんが街のあちこちで騒ぎを起こして家にも寄り付かないから、みんな心配してますよ」
「あぁ、そりゃあな・・・」
話をまとめるとこうだ
やはり兄とブルースさんは二人で組んで冒険者として色んな依頼を受けており、学んだ戦闘技術を活かして討伐や護衛をして学費の足しにしていた
しかし若いせいか多少経験のある人たちからは、学院に通う坊ちゃん方がと僻まれることがよくあった
そのせいで報酬の分配でもめることもあり、時には喧嘩沙汰に発展することもあった
やんちゃで負けん気も強い二人はそれでも冒険者を続けていたが、ある日依頼相手までグルになって不正に兄たちを貶めようとした
その場は切り抜けられたがその人たちによって悪い噂がばらまかれ、迷惑をかけないためにと家に戻らず、色んな伝手を頼って色んなところで寝泊まりさせてもらっている
代わりに雑務などを手伝い、今日孤児院にいて勉強を教えていたのもたまたまだったと
傍から聞いていれば、どっちも悪いとしか思えない
「世渡り下手ですね、二人とも」
だから多少言葉が乱れるのも仕方ない
「はぁ?ラリーの弟かと思えば生意気言いやがって」
「ブルース、抑えろ」
「だってよ」
「僕は結果からしか言えませんが、冒険者ギルドの職員に相談すれば良かったのでは?
諍いに慣れていない人を、それこそここの子供を巻き込みかねない今の状況が良いとはとても言えません」
その場にいたわけでもないし、自分より長く冒険者稼業を続けている二人にとって舐められたら終わりと考える節は分からないでもない
が、手段が拙い。それこそ以前に聞いた、何も知らない子供が剣を振り回しているのと同義だ
そうして撒いた種が実を結び、孤児院や教会へ泊まり込むことにつながっているのでは、もっと後先考えて行動しろと言いたい
「結託して騙した相手が悪いのは当然ですが、そこに至る経緯は二人に原因がある。それに黙っていなくなることが迷惑をかけないことじゃないんですよ?」
二人に聞いた話が全て真実だとはまだ見れない。被害にあってるのも本当だろうけど下地がなければ噂にもならないだろう
つまるところ二人は力業で捻じ伏せていたに過ぎない。この噂以前にも戦闘力を鼻にかけた振る舞いが噂になっていたこともあったというのに、改善しなかった
「言わせておけば!」
ブルースさんが殴り掛かってくる
対人戦闘をしたことはないが、父よりも上背がある体から突き降ろされる腕の速さと大きさは本能的な恐怖を感じさせる
が、過去魔物の牙を防いだ魔法の防御はその腕を通すことはなかった。いつかこれも実践的な形で練習しておこう
岩を水の詰まった袋で殴ったような鈍い音を響かせながら、ブルースさんは顔を痛みに歪める
人を殴ることを前提に力を込めていたのだろうから、予想外の固さだったのだろう
その衝撃は伝わっていたが、踏ん張り切れないほどではない。殴られかけた顔に傷はない。表情は変えず、姿勢を正して二人を見据える
兄は信じられないものを見たような目をしていた。よほどブルースさんの腕力を信用していたと見えるが、弟が殴り掛かられるのを黙って見ていたのはどうなのか
「言葉が荒くなったのはお二人を心配してのことでしたが、すみません。でも口より手を先に出したのはブルースさんです。
兄さ、いえ、ローレンスさん。何か言いたいことはありますか?」
「・・・結局それは、魔法の力だろ」
「はぁ」
「自分で身体を鍛えもせず魔法なんてものに頼り切ってるお前より、こっちは生身で魔物や人相手に戦ってるんだ。まともにやればこちらが勝つに決まってる」
「・・・その魔法とやらに何にも出来ないって言ってるのと同じ意味ですか?」
「ふざけるな!」
「ふざけてるのはそっちでしょう。そうやって人を下に見るから私も言い返すってわかりませんか?」
「・・・何をしたかは知らんが、だったらこれを防いでみろ!」
先ほどブルースさんがしたよりも幾分鋭く打ち込んできながら、そう言い放つ
こいつ身内でも構わないってか。いや実質初対面だけど
今度は意識的に防御用に魔力を身に纏い、先ほどよりも厚く重ねるように意識する
思惑通りにさっきよりも離れた場所で拳が弾かれる。音が軽いことから想定はしていたらしい
すぐに逆の手で打ち込んでくるが、わかりやすいようにと口に出しながら対処する
「マジックハンド」
出した手も引いた手も一緒に、マジックハンドで掴み取る
もう一つマジックハンドを作り、顔に打ち込む寸前で止める。まるで人形を手にして遊ぶような感覚を覚える
「防いで見せましたが、これで満足ですか?」
「・・・」
何も話さないが、目がせわしくなく動く
それを辿るとこちらを抱え込もうと腕を広げて迫ってくるロバートさんの姿があった
打撃で効果がないからと考えたんだろうが、マジックハンドだって2本で終わりとは言ってない
同じように広げた手ごとマジックハンドで掴み取る。そしてまた同じように、もう一つのマジックハンドを作り顔に打ち込む寸前で止める
「で?防いで見せましたが、これで満足ですか?」
計4本のマジックハンド。体だけを掴んでいるし顔の目の前にもマジックハンドはあるが顔を塞いでいるわけではない。が、何も話さない
小刻みに震える体は何を意味しているのか。怒りで打ち震えているのか、恐怖で震えているのか
「今日会えたことは偶然ですが、街の噂の真偽を確かめるために方々で話を聞いてきました。
中には好意的に見てくれる意見もありましたし、被害にあったという意見もありました。
ギルドで聞いたときには不正をただそうと先輩の冒険者と諍いを起こしたと聞いて、しょうがなくそうなってしまったのかと思いました。
ですが、今あったことも含めて誇張はあれど嘘はないということは理解出来ました」
孤児院で勉強を教えていたことや、先輩冒険者に退かずに意見をしたこと、家族に迷惑をかけたくないとしたことも本当の思いに違いない
けれどこうして諍いが起きた時に暴力で解決しようとすることも、咄嗟に出来ることではないだろう
「僕は両親や先生、ギルドの職員方にこう言われました。魔法とは便利な力だが、その力を振るう先は考え抜いて正しく使え、と。
あなたたちのように諍いを収めるために力を振りかざすことはしなかったし、気に入らないからと力を見せびらかすこともしなかった」
「・・・今使ってるのは何だよ」
ブルースさんが意見を出す、が、それはお門違いだ
「あなた方が襲ってきたからでしょうに。僕から仕掛けてないじゃないですか。そして直接ケガをさせるようなこともしていない。
お望みなら、四肢の骨すべて砕いて見せますよ」
そう言って二人の身体を掴むマジックハンドを軽く締める
身じろぎしたぐらいの動きだったが、効果はあった
「ま、待ってくれ!わかった!謝るから!」
にいさ・・・ローレンスさんが顔を青くして汗を流しながら答える。が、それも違う
「僕に謝られても困ります。それに今謝られても、あなたたちがしてきたことと同じになってしまうので、心から反省してから謝りに行ってください」
口にはしないだろうが、僕に脅されてきましたとか言われても困る
二人で撒いた種なんだから、二人でしっかりと収穫してもらう必要がある
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