表裏の華

アキノリ

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第一章

1、悪夢

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杉山小太郎(すぎやまこたろう)。
小さくても太い野郎に育ってほしいという意味でこの名前が付けられている。
俺は小さくとも太くも育たなかったがそれでも生きている。
それはそれなりで良かったんじゃないかって思うが...今ではどうかなって思ったりもしている。
すまないけど感情はぐちゃぐちゃだ。

突然だが君達は自殺した人を見た事があるだろうか。
俺はある。
目の前で屋上から飛び降りてそのまま旅立った友を。
いじめを受けていて俺の元から去った友を。

中学校の時に最も親しかった友人を自殺で失った。
名前を吉田義輝(よしだよしてる)という。
彼はそばかすが特徴的な男子であった。
とある女子の...告白を受けなかった事により猛烈ないじめが起こり自殺した。

あまりのショックで俺は寝れない有様になっていたぐらいに落ち込んだ。
発狂した。
絶望した。
吐いた。
その後も吐き気も止まらず自律神経も乱れ暫く何も食べれなかった。
因みにこの後に友が自殺しても教室の動きは何ら変わらずゴミの掃き溜めの様な有様のままだった。

俺はそれを見るのも疲れて精神的ショック故に学校に登校が出来なくなった。
それで転校した。
その先で...幼馴染と彼女というものを手に入れた。
だけどその彼女すらも...俺を裏切った。
そして俺は完全に心が折れた。

学校に通えなくなった。

「...」

そんな事を考えながら俺はゆっくり起き上がる。
4月12日。
時刻は...平日の午後間近の11時である。
つまり今日も学校には行けなかった、という事だ。
俺は死ぬにも死にきれない自分に嫌気を覚えながらのろのろと起き上がる。

それから漫画本とかラノベで荒れている部屋を見ながらそのままドアを開ける。
そしてリビングまで向かうとそこに母さんの書置きがあった。
そこにはこう書かれている。

(おはようさん。冷蔵庫に色々入っているから食べてね)

という形でだ。
俺は感情が不安定のままそのまま冷蔵庫のドアを開ける。
そこには確かにパイナップルとか入っていてヨーグルトとかもある。
しかし好物なのにやはり食欲が湧かない。
まあそれも数年前の話だけど。

「...何をしているだろうな。俺も大概」

母さんは「学校に行きたく無いなら今は行かなくても良いよ」と言ってくれている。
だけど俺はこんな事をしている場合では無いと思っている。
でも身体が全く動かない。
俺も大概なもんだな。

考えながら俺はヨーグルトを食べた。
というか小さな4つに割れるヨーグルトパックの割った1個なので全く朝食にもならないとは思える。

俺は食べ終えてからスプーンを洗う。
それから額に手を添える。
ズキズキやはり痛む。
今日も...これか。

「やれやれ」

そんな事を呟きながら俺は自室に戻る。
新聞の切り抜きが散らばっている。
最近の俺の趣味だ。
つまり家を出ないから...その分、新聞で外の情報を集めているのだ。
多少なりとも楽しい趣味である。

「今日の...ニュースのメインは経済か」

机の端に日頃と同じ様に新聞が置かれていたのでそれを切り取ってみる。
正直、経済の状態なんぞどうでも良いけどトップニュースがこれだからこれに関して...集めてみるか。
そう思いながら俺は経済情報を集めてみる。
因みに俺にはルーティーンがある。

それはどんなルーティーンかというとこうして経済の情報なら経済情報を集める。
事件なら同じ事件の話を集める。
そんなルーティーンだ。

何故そうしているのかといえば頭を冴え渡らせるためだ。
勉強はする気にならないし。
俺はそんなルーティーンに従って動いているのだ。

そして俺は経済のニュースをスマホで調べたりしていると...通知が来ていた。
それも通信アプリのレインからだ。
俺は「?」を浮かべてから考えて開けた。

こんな俺に何の通知だ。
まあどうせ無料の登録サイトの2chとかから...と思っていたのだがそれは予想外の人物の通知だった。

(先輩。おはようございます)

大庭凛子(おおばりんこ)だった。
随分と久々のレインだ。
半年ぶりぐらいだなこうして通知が来るのは。

何故なら...凛子は...アイツの。
俺を裏切った女子の義妹もあって俺に細心の配慮をしていたからな。
半年ぐらい会って無い気がする。

(どうしたんだ。凛子)
(先輩。今日...久々に家に行っても良いですか)
(...いきなりだな。しかしそれやるのも久々だな)
(そうですね。あの人の裏切り以来ですよ)
(お前なら良いよ。こうして...久々にレインしたのもきっと何かあるんだろ)
(そうですね...これからについて話し合いがしたいです)

俺は新聞の切り抜きをしている手を止める。
それから俺は前を見据える。
それはつまり。

そう思いながら覚悟をしていると(すいません。授業が始まりそうなので)と切れてしまった。
俺はそのスマホを...手元にそっと置く。
それから厳しい顔をした。
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