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10 クラフト
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クラフト機能が解放されたので意気揚々と家に戻れば、姉さんに「煩いし、汗臭いから風呂に入れ」と一蹴され、モモと一緒にシャワーを浴びることになった。
モモも思春期になったら「ご主人様、臭いです」とか言ってくるのだろうか。
考えただけで胸が痛い。泣ける。
風呂から出れば出たで、姉さんとさくらさんが「ご飯ご飯」と騒ぎ始める。
「はいはい、今すぐ用意するので静かに待っててください」
今日も安定のじゃがいも料理ではあるが、今回は肉なし肉じゃがに挑戦してみた。
醤油、味醂、酒、砂糖──この組み合わせは無敵だと思う。
どんな具材でも、この黄金比に放り込めば、それっぽい料理に仕上がるのだからありがたい。
にんじんはないので、具はじゃがいもと玉ねぎだけ。だが、これがまた米によく合う。
ちなみに我が家にはついに革命が起きた。そう、炊飯器の購入である!
少し割高ではあったが、一万二千円ほどで炊飯器を購入し、六千円で五キロの米を手に入れた。
米がちょっと高くないか? 自分で作れってことなのか?
あの神様、どこかで中抜きしてるんじゃないだろうな……でも約束したし、これが神界価格ってやつか?
なお、現状では「米の種」や「苗」的な存在は確認できていない。
そもそも水田が必要になるだろうし、畑では厳しいのかもしれない。
季節でアンロックされる仕組みなのかも。
とりあえずは秋までにお金を貯めておくのが目標だ。
ただし、米の自作もクラフト機能と同様に、何か隠された条件を満たす必要がありそうな気がする。
ファ神が言っていた「この世界の技術で再現可能なもの」という中に炊飯器があったのは驚いたが、冷蔵庫もあるし、意外とこの世界の技術力は高いのかもしれない。
さくらさん曰く、値段は張るものの「魔道具」として似た機能を持つものは存在するとのこと。
それもこれも、彼女の旦那が早期に技術革新を進めたおかげだと、誇らしげに語られた。
チートさん……本当にすごいな。生きてたら一度会ってみたかった。
「美味しいです!」
モモの笑顔に心が癒やされる。作ってよかった。
「ご主人様、美味しいです! さくらもおかわりですぅ!」
「さくらさん、それモモの真似ですよね? イラッとするのでやめてもらっていいですか?」
そもそも全然似てない! モモの方が百倍可愛い。
渋々、ご飯茶碗に少しだけ盛って渡す。
「ご主人様! さくらは大盛りがよいです!」
「……はいはい。モモ、おかわりだよ。いっぱい食べて」
「ああ! 私のおかわりが!」
イラッとしたので、さくらさんの分をモモに渡す。
モモもすっかり米を気に入ってくれたようで、もりもり食べて少しふっくらしてきた……が、まだまだ細い。もっと肉をつけさせねば。
やっぱり肉、豚肉、牛肉、肉、肉。
余裕も出てきたし、今度買ってみようかな。
ご飯を食べ終えた後は、クラフト機能の確認タイムだ。
「何かあったらアドバイスくださいね」と念を押して、姉さんとさくらさんにも同席してもらう。
一番元気よく返事してくれたのは大福だった。お前、分かってないまま楽しそうだから返事しただけだろ。
クラフトメニューを開くと、まず最初に「木材を補充してください」と注意文が表示された。
あのでっかい木を、シャワー浴びてご飯食べたあとにまた回収しに行くの? 汗かきたくない。
いや無理無理。小さく切らないと運べないから、あの巨木をさらに切る必要がある。
「さくらさん……」
「出来ることは自分でするのではなかったのか?」
「おねげえします!」
渋々ながらも、さくらさんが回収に行ってくれる。ありがてぇ。
ところで木の補充ってどうやってやるんだろう?
そんなことを考えつつショッピングサイトを眺めていると、画面が更新され、新商品がずらりと並んでいた。
木工用の加工道具や、外置き用の大型買取箱などが追加されている。
どうやら、お金を払うことで木を木材に加工してもらえるらしい。
「金を取るのか……こういうところは細かく回収してくるな」
「にゃーん」
本当だ。家関連の欄に「木工所」「伐採所」なんて項目が増えている。
どれも一律百万円だが、必要な木材を揃えた場合は十万円で建てられるようだ。
つまり、伐採や加工を自動化できるということだろうか?
まぁ、ゲームでも終盤になるとオート化はよくあるしな。効率化という意味では安い投資かもしれない。
さくらさんが戻ってくる前に、外用大型買取箱を五千円で購入・設置する。
森の暗闇から現れた人魂……ではなく、さくらさんが魔法で光球を浮かべて戻ってきた。
魔法って、本当に便利だな。
「持ってきたぞ」
木はどこにもないので、収納魔法だろうか。
「ありがとうございます。ここに入れてもらってもいいですか?」
案の定、収納魔法で取り出した木を箱に入れると、画面に表示が出る。
『五千円で木材二十個に加工できます』
うおお、せっかく貯めたお金がどんどん溶けていく……!
試しに加工してみると、すぐに「完了」の表示が出た。
画面上には【木材:20】の文字。
現物が目の前に出てこなくてよかった。そんな大量の木材、置き場所にも困るしな。
改めて家に戻り、現状で加工可能なアイテムをチェックする。
椅子が木材一つ、テーブルが木材二つか。
木の食器なんてものもある。器の種類も豊富で、どれも木材一つで複数個セットになるようだ。
ただし、どれも作成には木材+お金が必要。うーん、世知辛い。
「今のところは建物関係の素材として使うのが一番かな」
「にゃーん」
姉さんのすすめで、試しに木のスプーン五本セットを作ってみる。お値段は千円。
これならショッピングサイトで買った方が安い気がする。
【作成時間:一時間】と表示され、木材が一つ減る。
即時ではなく、一定の時間がかかるようだ。これは地味に重要な情報。
ちなみに、家の増築には木材三百個で揃えば十万円にコストダウンできるらしい。
その他の施設、肉の加工小屋、木工所、鶏小屋なども木材で安く建築可能になっている。
「農業メインだと限界あるし、空き時間に木を集めて家にアップグレードさせたいっすね」
今の農業は家庭菜園の延長にすぎないし、モモの協力もあって作業時間に余裕が出てきた。
これはちょうどいい方向転換かもしれない。
あとは、小さい滝と小川、岩場。
予想通りなら、釣りや採掘関連のクラフトも解放されるはずだ。
検証すべきことが多い……でも、それが楽しい!
「私の朝の助言が役に立ったようで何よりだよ」
「ありがとうございました! 明日から滝や岩場にも行ってみます!」
「そうか。それでは私も明日にはここを出るとしよう」
――え?
モモも思春期になったら「ご主人様、臭いです」とか言ってくるのだろうか。
考えただけで胸が痛い。泣ける。
風呂から出れば出たで、姉さんとさくらさんが「ご飯ご飯」と騒ぎ始める。
「はいはい、今すぐ用意するので静かに待っててください」
今日も安定のじゃがいも料理ではあるが、今回は肉なし肉じゃがに挑戦してみた。
醤油、味醂、酒、砂糖──この組み合わせは無敵だと思う。
どんな具材でも、この黄金比に放り込めば、それっぽい料理に仕上がるのだからありがたい。
にんじんはないので、具はじゃがいもと玉ねぎだけ。だが、これがまた米によく合う。
ちなみに我が家にはついに革命が起きた。そう、炊飯器の購入である!
少し割高ではあったが、一万二千円ほどで炊飯器を購入し、六千円で五キロの米を手に入れた。
米がちょっと高くないか? 自分で作れってことなのか?
あの神様、どこかで中抜きしてるんじゃないだろうな……でも約束したし、これが神界価格ってやつか?
なお、現状では「米の種」や「苗」的な存在は確認できていない。
そもそも水田が必要になるだろうし、畑では厳しいのかもしれない。
季節でアンロックされる仕組みなのかも。
とりあえずは秋までにお金を貯めておくのが目標だ。
ただし、米の自作もクラフト機能と同様に、何か隠された条件を満たす必要がありそうな気がする。
ファ神が言っていた「この世界の技術で再現可能なもの」という中に炊飯器があったのは驚いたが、冷蔵庫もあるし、意外とこの世界の技術力は高いのかもしれない。
さくらさん曰く、値段は張るものの「魔道具」として似た機能を持つものは存在するとのこと。
それもこれも、彼女の旦那が早期に技術革新を進めたおかげだと、誇らしげに語られた。
チートさん……本当にすごいな。生きてたら一度会ってみたかった。
「美味しいです!」
モモの笑顔に心が癒やされる。作ってよかった。
「ご主人様、美味しいです! さくらもおかわりですぅ!」
「さくらさん、それモモの真似ですよね? イラッとするのでやめてもらっていいですか?」
そもそも全然似てない! モモの方が百倍可愛い。
渋々、ご飯茶碗に少しだけ盛って渡す。
「ご主人様! さくらは大盛りがよいです!」
「……はいはい。モモ、おかわりだよ。いっぱい食べて」
「ああ! 私のおかわりが!」
イラッとしたので、さくらさんの分をモモに渡す。
モモもすっかり米を気に入ってくれたようで、もりもり食べて少しふっくらしてきた……が、まだまだ細い。もっと肉をつけさせねば。
やっぱり肉、豚肉、牛肉、肉、肉。
余裕も出てきたし、今度買ってみようかな。
ご飯を食べ終えた後は、クラフト機能の確認タイムだ。
「何かあったらアドバイスくださいね」と念を押して、姉さんとさくらさんにも同席してもらう。
一番元気よく返事してくれたのは大福だった。お前、分かってないまま楽しそうだから返事しただけだろ。
クラフトメニューを開くと、まず最初に「木材を補充してください」と注意文が表示された。
あのでっかい木を、シャワー浴びてご飯食べたあとにまた回収しに行くの? 汗かきたくない。
いや無理無理。小さく切らないと運べないから、あの巨木をさらに切る必要がある。
「さくらさん……」
「出来ることは自分でするのではなかったのか?」
「おねげえします!」
渋々ながらも、さくらさんが回収に行ってくれる。ありがてぇ。
ところで木の補充ってどうやってやるんだろう?
そんなことを考えつつショッピングサイトを眺めていると、画面が更新され、新商品がずらりと並んでいた。
木工用の加工道具や、外置き用の大型買取箱などが追加されている。
どうやら、お金を払うことで木を木材に加工してもらえるらしい。
「金を取るのか……こういうところは細かく回収してくるな」
「にゃーん」
本当だ。家関連の欄に「木工所」「伐採所」なんて項目が増えている。
どれも一律百万円だが、必要な木材を揃えた場合は十万円で建てられるようだ。
つまり、伐採や加工を自動化できるということだろうか?
まぁ、ゲームでも終盤になるとオート化はよくあるしな。効率化という意味では安い投資かもしれない。
さくらさんが戻ってくる前に、外用大型買取箱を五千円で購入・設置する。
森の暗闇から現れた人魂……ではなく、さくらさんが魔法で光球を浮かべて戻ってきた。
魔法って、本当に便利だな。
「持ってきたぞ」
木はどこにもないので、収納魔法だろうか。
「ありがとうございます。ここに入れてもらってもいいですか?」
案の定、収納魔法で取り出した木を箱に入れると、画面に表示が出る。
『五千円で木材二十個に加工できます』
うおお、せっかく貯めたお金がどんどん溶けていく……!
試しに加工してみると、すぐに「完了」の表示が出た。
画面上には【木材:20】の文字。
現物が目の前に出てこなくてよかった。そんな大量の木材、置き場所にも困るしな。
改めて家に戻り、現状で加工可能なアイテムをチェックする。
椅子が木材一つ、テーブルが木材二つか。
木の食器なんてものもある。器の種類も豊富で、どれも木材一つで複数個セットになるようだ。
ただし、どれも作成には木材+お金が必要。うーん、世知辛い。
「今のところは建物関係の素材として使うのが一番かな」
「にゃーん」
姉さんのすすめで、試しに木のスプーン五本セットを作ってみる。お値段は千円。
これならショッピングサイトで買った方が安い気がする。
【作成時間:一時間】と表示され、木材が一つ減る。
即時ではなく、一定の時間がかかるようだ。これは地味に重要な情報。
ちなみに、家の増築には木材三百個で揃えば十万円にコストダウンできるらしい。
その他の施設、肉の加工小屋、木工所、鶏小屋なども木材で安く建築可能になっている。
「農業メインだと限界あるし、空き時間に木を集めて家にアップグレードさせたいっすね」
今の農業は家庭菜園の延長にすぎないし、モモの協力もあって作業時間に余裕が出てきた。
これはちょうどいい方向転換かもしれない。
あとは、小さい滝と小川、岩場。
予想通りなら、釣りや採掘関連のクラフトも解放されるはずだ。
検証すべきことが多い……でも、それが楽しい!
「私の朝の助言が役に立ったようで何よりだよ」
「ありがとうございました! 明日から滝や岩場にも行ってみます!」
「そうか。それでは私も明日にはここを出るとしよう」
――え?
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