硝子のベール~異世界転移した俺は、眼鏡の年上美青年を独占したい~

磊蔵(らいぞう)

文字の大きさ
9 / 31

第9話 ベルノルト

しおりを挟む
「こちらがベルノルト様のお部屋になります」

そう言って扉を開けるエミルに続いて、カエサルと優斗も室内に入る。
ベルノルトの部屋は、子供部屋とは思えないほどに広く、いかにも高そうな豪華な家具が置かれた部屋だった。

広い部屋の正面には大きな両開きの窓があり、明るく室内を照らしていた。
手前の壁際には勉学用だろうか、机が置かれており、その上に積まれた本は5歳児にしては少々難しいレベルの物が多いような気がした。
右手奥にはバスルームに通じていると思われる扉も見える。
そして、左手の壁に頭側を付けるような形で部屋の中央に置かれた豪奢ごうしゃな天蓋付きベッドがあり――その上にはこんもりとしたシーツの膨らみがあった。

「こちらがベルノルト様でございます」

その膨らみに目を向けながら、エミルが二人に声を掛けた。
その言葉に促されるように、優斗はゆっくりとベッドに近づいて行き、そしてベッドの横に膝をつくと、恐る恐るシーツ越しにベルノルトへと声をかけた。

「えっと……ベルノルト様?お顔を見せてくれませんか?」

その問いに返事はない――だが、僅かに布の擦れる音がしたので中に誰かがいることは間違いないようだ。

「あの……ベルノルト様?大丈夫っすか?」

「……」

やはり返答は無い。
無理やり布団を剥ぐわけにもいかず、戸惑う優斗はそのままその膨らみを見つめるしかなかった。

(えぇえぇぇ……無視かよ……まいったな~)

暫しの沈黙の中どうしたものかと優斗が思案していたその時だった、突然シーツが捲れ上がり、中から小さな男の子――ベルノルトが飛び出してきたのだ!

「ばあ!!」

「うわっ!!」

その勢いに驚き、思わず優斗は尻もちをついてしまった。
そんな優斗に向かってベルノルトはケラケラと笑いながら言った。

「アハハ、どう!?びっくりした!??」

ベッドの上で四つん這いのまま屈託のない笑顔でこちらを見下ろしてくるベルノルトに優斗は目を丸くした。

(すっげえ可愛い……!)

くりくりとした大きな碧い目に長いまつ毛、フワフワとした金髪に透き通るような白い肌、薄桃色の頬っぺたはまるで人形のようでとても可愛らしい容姿をしている――その上、舌足らずな喋り方もまた幼さを感じさせて愛らしかった。

毎晩の怪異に悩まされている少年とはとても思えない程に無邪気に笑う姿に、優斗は思わず見惚れてしまい、言葉も出ないまま呆然と座り込んでいた。

「ほら、ベルノルト様?こちらのお兄さんはあなたが驚かせたので怒ってしまわれたようですよ?」

たしなめるように言うエミルの言葉にハッとしたように顔を上げたベルノルトは慌ててベッドから降りると、尻もちをついたままの優斗の傍まで歩み寄り、申し訳なさそうに謝った。

「えっと……ごめんな、さい……」

シュンとしてしまったベルノルトの様子に罪悪感を覚えた優斗は、急いで立ち上がると笑顔で笑いかけながら首を横に振った。

「あ、いえ!全然大丈夫っすよ!」

その言葉に安心したのか、ベルノルトの表情が少しだけ明るくなったのを見て優斗はホッと胸を撫で下ろした。

「あらあら……うふふ」

そんな二人の様子を見ていたエミルは小さく微笑むと、優しくベルノルトの頭を撫でた。

「ベルノルト様、本日より数日間あなた様の護衛をお願いしました、ソルダンギルドの冒険者のお二人ですよ」

エミルが紹介すると、ベルノルトはカエサルと優斗、二人の顔を交互に見た後、ペコリと頭を下げた。

「ぼくをまもってくれるの?えっと……ありがとう!」

屈託のない笑顔を向けるベルノルトに優斗は思わず笑みを零した。

(やべえ……なんかすっげえ癒される……!)

そんな優斗の横でカエサルは相変わらず落ち着いた様子で佇んでいる――だが、その様子はわずかに戸惑っているようにも見えた。

「えぇと……では、改めて自己紹介させてもらいますね?私はカエサル、隣にいる彼はユウト君です」

カエサルがどこかぎこちない微笑みを見せながらも挨拶すると、ベルノルトは嬉しそうに人懐っこい笑顔を浮かべた後、改めて姿勢を正す。

「ぼくのなまえはベルノルト・クシュールです!カエサルさん、ユウトさん、よろしくおねがいします!」

まるで幼稚園児がお遊戯の発表会でするような、元気いっぱいの挨拶に優斗はほっこりとした気分になった。

「はい、よろしくっす!」

優斗が笑いながら手を伸ばすとベルノルトは一瞬目を瞠った後、嬉しそうな笑顔を咲かせて握手を交わしてくれた。

(なんつーか……まだ5歳なのにしっかりしてるよな……)

そんな感想を抱きながら優斗が微笑んでいると、優斗との握手を終えたベルノルトが今度はカエサルに向き直り、その小さな手を差し出す。

「カエサルさんも!」

満面の笑みで握手を求められたカエサルは一瞬ギョッとした表情を浮かべながらも、すぐに取り繕うような笑顔を浮かべて彼の手を取った。

「え、ええ、よろしくお願いします……」

その返事にベルノルトはパアッと顔を明るくすると、嬉しそうにカエサルの足元に抱き付いた。

「うれしいな!こんなにかっこいいぼうけんしゃさん二人にごえいしてもらえるんだぁ!」

屈託のない笑顔でそう言いながらじゃれ付いて来るベルノルトにカエサルは引きつったような笑みを見せながら必死に対応していた。

「は、はは……ありがとうございます……(棒読み)」

(はっ!――もしかして、カエサルさん子供苦手なのか!?)

どう見ても彼らしからぬ動揺を見せているカエサルの様子に優斗はハッと気づいた。
一方、そんなカエサルに気付く事無くベルノルトは更にカエサルに甘える。

「えへへー♪ねえねえ、カエサルさん、三人であそぼうよ~」

「え、えぇ?……あ、あのですね……そもそも私たちは護衛をしに来たのであって……」

「えー……いっしょにあそぼうよ~……だめ?」

無邪気なベルノルトに詰め寄られ、焦りまくっているカエサルを見かねて優斗が横から声を挟む。

「あ~……あ、そうだ!ベルノルト様、みんなで『かくれんぼ』しましょう!?」

その提案にベルノルトはやっとしがみ付いていたカエサルの足から手を離すと、目を輝かせながら優斗に向き直った。

「『かくれんぼ』?……うん!やりたい!」

優斗なりに考えた末、自分たちと遊びたいというベルノルトの要望を叶えつつ、かつ、カエサルが直接子供と接触しなくて済む案として出したのが『かくれんぼ』だったのだ。
結果としてベルノルトがとても嬉しそうに賛同してくれたので、カエサルはホッとした様子を見せていた。
ベルノルトは喜々としてエミルにも参加するよう声を掛けた。

「エミル!エミルもいっしょに『かくれんぼ』だよ!」

「はいはい、次のバイオリンのお稽古の時間までですよ?」

そう言って苦笑するエミルだったが、その表情はどこか嬉しそうだった。
結局、四人でかくれんぼをして遊ぶ事となったのだが……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】スパダリを目指していたらスパダリに食われた話

紫蘇
BL
給湯室で女の子が話していた。 理想の彼氏はスパダリよ! スパダリ、というやつになったらモテるらしいと分かった俺、安田陽向(ヒナタ)は、スパダリになるべく会社でも有名なスパダリ…長船政景(マサカゲ)課長に弟子入りするのであった。 受:安田陽向 天性の人たらしで、誰からも好かれる人間。 社会人になってからは友人と遊ぶことも減り、独り身の寂しさを噛み締めている。 社内システム開発課という変人どもの集まりの中で唯一まともに一般人と会話できる貴重な存在。 ただ、孤独を脱したいからスパダリになろうという思考はやはり変人のそれである。 攻:長船政景 35歳、大人の雰囲気を漂わせる男前。 いわゆるスパダリ、中身は拗らせ変態。 妹の美咲がモデルをしており、交友関係にキラキラしたものが垣間見える。 サブキャラ 長船美咲:27歳、長船政景の年の離れた妹。 抜群のスタイルを生かし、ランウェイで長らく活躍しているモデル。 兄の恋を応援するつもりがまさかこんなことになるとは。 高田寿也:28歳、美咲の彼氏。 そろそろ美咲と結婚したいなと思っているが、義理の兄がコレになるのかと思うと悩ましい。 義理の兄の恋愛事情に巻き込まれ、事件にだけはならないでくれと祈る日々が始まる…。

転移先で辺境伯の跡継ぎとなる予定の第四王子様に愛される

Hazuki
BL
五歳で父親が無くなり、七歳の時新しい父親が出来た。 中1の雨の日熱を出した。 義父は大工なので雨の日はほぼ休み、パートに行く母の代わりに俺の看病をしてくれた。 それだけなら良かったのだが、義父は俺を犯した、何日も。 晴れた日にやっと解放された俺は散歩に出掛けた。 連日の性交で身体は疲れていたようで道を渡っているときにふらつき、車に轢かれて、、、。 目覚めたら豪華な部屋!? 異世界転移して森に倒れていた俺を助けてくれた次期辺境伯の第四王子に愛される、そんな話、にする予定。 ⚠️最初から義父に犯されます。 嫌な方はお戻りくださいませ。 久しぶりに書きました。 続きはぼちぼち書いていきます。 不定期更新で、すみません。

αからΩになった俺が幸せを掴むまで

なの
BL
柴田海、本名大嶋海里、21歳、今はオメガ、職業……オメガの出張風俗店勤務。 10年前、父が亡くなって新しいお義父さんと義兄貴ができた。 義兄貴は俺に優しくて、俺は大好きだった。 アルファと言われていた俺だったがある日熱を出してしまった。 義兄貴に看病されるうちにヒートのような症状が… 義兄貴と一線を超えてしまって逃げ出した。そんな海里は生きていくためにオメガの出張風俗店で働くようになった。 そんな海里が本当の幸せを掴むまで…

異世界に勇者として召喚された俺、ラスボスの魔王に敗北したら城に囚われ執着と独占欲まみれの甘い生活が始まりました

水凪しおん
BL
ごく普通の日本人だった俺、ハルキは、事故であっけなく死んだ――と思ったら、剣と魔法の異世界で『勇者』として目覚めた。 世界の命運を背負い、魔王討伐へと向かった俺を待っていたのは、圧倒的な力を持つ美しき魔王ゼノン。 「見つけた、俺の運命」 敗北した俺に彼が告げたのは、死の宣告ではなく、甘い所有宣言だった。 冷徹なはずの魔王は、俺を城に囚え、身も心も蕩けるほどに溺愛し始める。 食事も、着替えも、眠る時でさえ彼の腕の中。 その執着と独占欲に戸惑いながらも、時折見せる彼の孤独な瞳に、俺の心は抗いがたく惹かれていく。 敵同士から始まる、歪で甘い主従関係。 世界を敵に回しても手に入れたい、唯一の愛の物語。

【完結】幽閉の王を救えっ、でも周りにモブの仕立て屋しかいないんですけどぉ?

北川晶
BL
 BLゲームじゃないのに、嫌われから溺愛って嘘でしょ? 不遇の若き王×モブの、ハートフル、ファンタジー、ちょっとサスペンスな、大逆転ラブです。  乙女ゲーム『愛の力で王(キング)を救え!』通称アイキンの中に異世界転生した九郎は、顔の見えない仕立て屋のモブキャラ、クロウ(かろうじて名前だけはあったよ)に生まれ変わる。  子供のときに石をぶつけられ、前世のことを思い出したが。顔のないモブキャラになったところで、どうにもできないよね? でも。いざ、孤島にそびえる王城に、王の婚礼衣装を作るため、仕立て屋として上がったら…王を助ける人がいないんですけどぉ? 本編完結。そして、続編「前作はモブ、でも続編は悪役令嬢ポジなんですけどぉ?」も同時収録。

2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。

ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。 異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。 二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。 しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。 再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。

弟がガチ勢すぎて愛が重い~魔王の座をささげられたんだけど、どうしたらいい?~

マツヲ。
BL
久しぶりに会った弟は、現魔王の長兄への謀反を企てた張本人だった。 王家を恨む弟の気持ちを知る主人公は死を覚悟するものの、なぜかその弟は王の座を捧げてきて……。 というヤンデレ弟×良識派の兄の話が読みたくて書いたものです。 この先はきっと弟にめっちゃ執着されて、おいしく食われるにちがいない。

転生DKは、オーガさんのお気に入り~姉の婚約者に嫁ぐことになったんだが、こんなに溺愛されるとは聞いてない!~

トモモト ヨシユキ
BL
魔物の国との和議の証に結ばれた公爵家同士の婚約。だが、婚約することになった姉が拒んだため6男のシャル(俺)が代わりに婚約することになった。 突然、オーガ(鬼)の嫁になることがきまった俺は、ショックで前世を思い出す。 有名進学校に通うDKだった俺は、前世の知識と根性で自分の身を守るための剣と魔法の鍛練を始める。 約束の10年後。 俺は、人類最強の魔法剣士になっていた。 どこからでもかかってこいや! と思っていたら、婚約者のオーガ公爵は、全くの塩対応で。 そんなある日、魔王国のバーティーで絡んできた魔物を俺は、こてんぱんにのしてやったんだが、それ以来、旦那様の様子が変? 急に花とか贈ってきたり、デートに誘われたり。 慣れない溺愛にこっちまで調子が狂うし! このまま、俺は、絆されてしまうのか!? カイタ、エブリスタにも掲載しています。

処理中です...