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第一章 転生した身体は、木でできていた
第3話 森の賢人 クコ
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「どうしてまた、森のど真ん中で酔っ払ってんの?」
「それじゃよ、パロン。この間、お前さんから梅をもらったろ? それで作った酒を、味見していたんじゃ」
自分で作った梅酒がおいしすぎて、賢人は二日酔いをしたらしい。
この世界って、梅酒があるんだね。
「ええ……また?」
辛そうにしている賢人の言葉に、パロンは呆れる。
「またってことは、けっこう二日酔いになるの?」
「もうしょっちゅうだよ」
パロンに聞くと、賢人クコは会う度に二日酔いになっているんだとか。
「お酒、やめたらいいのに。飲み過ぎは、脳にも悪影響が及ぶんだから。魔力だって、枯渇しても知らないよ?」
「黒糖をきかせた、上級な梅酒ぞ。あれを飲まぬワケにはゆかぬ」
煩悩の塊みたいな人だな。賢人と言っても、完璧なわけじゃないようだ。
「もう病気だね」と、パロンが呆れる。
ボクはお酒を飲めないからわからないけど、お酒飲みってこんな感じなのかな?
「それより、いつもの薬草茶をくれい。頭が痛くてたまらぬ」
賢人は、挙動までオッサン化していた。
「お茶ならもう切らしているよ。薬草を直接かじらないと」
「いやじゃいやじゃ。お主の薬草茶がええんじゃ。リンゴと合わせた甘いブレンド茶が」
オッサン声で、賢人クコが子どものようにジタバタし始める。
「ないよ。そのリンゴが……クコ、ちょっと待ってね」
ボクの身体から生えたツタから、パロンがリンゴをもぎ取った。
「コーキ。悪いんだけど、一旦小屋に戻るよ」
パロンはクコに、薬草茶を作ってあげるそうだ。
「構わないよ、パロン。クコを治してあげて」
「ありがとう。すぐ済むからね」
一旦、ボクらはクコを連れて小屋に戻った。
続いて、薬草が一枚入った透明なビンを、棚から出す。なんの変哲もなさそうだが。
パロンがナイフを取り出し、ボクからなえたリンゴを四分の一に切り分けた。残りは賢人の朝食となる。
「これと、薬草を合わせてビンに詰めて、フタを閉じる」
バーテンダーのように、パロンはビンを振り始めた。
リンゴがだんだんと砕けていき、薬草と一緒に溶け出す。
「できたよ。薬草茶完成!」
とろみのある緑色のお茶が、ビンの中でできあがった。
「ありがたい。ではひとくち……ん、いつもよりうまいぞよ!」
薬草の効果を、倍増してくれる作用があるらしい。
「そんな効果があるなんて。そういえば、こころなしか血の巡りがいいような気がするね」
パロンが、腕をぐるぐる回す。リンゴの効果を、実感しているみたいだ。
「いやあ、お主は何者ぞ?」
「ボクはコーキ。パロンに作ってもらったウッドゴーレムです」
「なんとも。言葉を話すゴーレムは珍しくないが、それが人間並の意思を持って動くとは」
式神や自動人形なども、この世界には存在する。しかし、命は仮初らしい。
機械的に命令を聞くことはあっても、返答は指定した言語しか話せないとか。
ボクのように、相手と受け答えなんてできないという。
「珍しい技術じゃのう」
「遺跡にあった【燃える魔法石】を、ゴーレムに埋め込んでみたんだ。それが、世界樹とシンクロしたみたいでさ」
「ほほう。ようやく念願かなったという感じかのう?」
賢人クコの言葉を受けて、パロンが「まあね」と腰に手を当てる。
「【燃える魔法石】だって?」
ボクの身体には、そんなのが埋め込まれているのか。
「見てみるかい?」
「ぜひぜひ」
自分の身体が、どうなっているのか、知りたい。
ウッドゴーレムっていう人外中の人外なのに、普通の人間として振る舞えるなんて。
パロンが、ボクの胸部分のパーツを開く。まるで、冷蔵庫を開けるみたいに。
ボクの中で、赤い石がドクンドクンと明滅していた。その石は、まさしく心臓を思わせる。
「これが、【燃える魔法石】だよ」
この石が、ボクを生かしてくれているのか。
「というわけで、ウッドゴーレムは完成したってわけ」
再度パロンが、胸パーツを閉じた。
「以前からパロンは、『友だちのようなゴーレムがほしい』と言っておっからのう。ゴーレムとコミュニケーションを取るのが、彼女の夢だったのじゃ」
「じゃあ、目的は達成されたって思っていいのですか?」
「もちろんじゃ。そこでお願いがあるのじゃが、このワシとも、よき友となってくれぬか?」
なんでも、薬草茶が気に入って、知り合いになりたいという。
「ボクはいいけど、パロン?」
「当然。でも、森を留守にしていいの?」
「平気じゃ。こんな森、だれも立ち入らぬ。お前さんも、この地にワシ以外でお客なんぞこんかったろ? 買い物や商売なんぞも、街へ降りてやっておったろうに」
「それもそうだね。じゃあ、出発しようか。と、その前に。すっかり忘れていたよ」
パロンが、ボクにフードを被せる。抹茶色のフードは、ボクを頭から足先まですっぽり覆う。
「仮面も、作っておこうかな」
部屋の中から、パロンが手頃な木の板を取り出す。
「これでいいかな」
薬草茶に続いて、もう一度パロンは錬金術師としての顔を覗かせた。
板が曲がって、顔が収まるくらいの大きさに削れていく。段々と、カブトらしくなってきた。
「目のところはくり抜いて、口は開閉型にしよう」
色々と、パロンが仮面にアレンジを加えていく。しかし、パロンは仮面に指一本触れていない。すべて、空中で作成している。
木製の仮面が、できあがった。
できた木の仮面を、パロンはボクに被せる。
「今日からキミは、仮面の冒険者コーキだ」
「それじゃよ、パロン。この間、お前さんから梅をもらったろ? それで作った酒を、味見していたんじゃ」
自分で作った梅酒がおいしすぎて、賢人は二日酔いをしたらしい。
この世界って、梅酒があるんだね。
「ええ……また?」
辛そうにしている賢人の言葉に、パロンは呆れる。
「またってことは、けっこう二日酔いになるの?」
「もうしょっちゅうだよ」
パロンに聞くと、賢人クコは会う度に二日酔いになっているんだとか。
「お酒、やめたらいいのに。飲み過ぎは、脳にも悪影響が及ぶんだから。魔力だって、枯渇しても知らないよ?」
「黒糖をきかせた、上級な梅酒ぞ。あれを飲まぬワケにはゆかぬ」
煩悩の塊みたいな人だな。賢人と言っても、完璧なわけじゃないようだ。
「もう病気だね」と、パロンが呆れる。
ボクはお酒を飲めないからわからないけど、お酒飲みってこんな感じなのかな?
「それより、いつもの薬草茶をくれい。頭が痛くてたまらぬ」
賢人は、挙動までオッサン化していた。
「お茶ならもう切らしているよ。薬草を直接かじらないと」
「いやじゃいやじゃ。お主の薬草茶がええんじゃ。リンゴと合わせた甘いブレンド茶が」
オッサン声で、賢人クコが子どものようにジタバタし始める。
「ないよ。そのリンゴが……クコ、ちょっと待ってね」
ボクの身体から生えたツタから、パロンがリンゴをもぎ取った。
「コーキ。悪いんだけど、一旦小屋に戻るよ」
パロンはクコに、薬草茶を作ってあげるそうだ。
「構わないよ、パロン。クコを治してあげて」
「ありがとう。すぐ済むからね」
一旦、ボクらはクコを連れて小屋に戻った。
続いて、薬草が一枚入った透明なビンを、棚から出す。なんの変哲もなさそうだが。
パロンがナイフを取り出し、ボクからなえたリンゴを四分の一に切り分けた。残りは賢人の朝食となる。
「これと、薬草を合わせてビンに詰めて、フタを閉じる」
バーテンダーのように、パロンはビンを振り始めた。
リンゴがだんだんと砕けていき、薬草と一緒に溶け出す。
「できたよ。薬草茶完成!」
とろみのある緑色のお茶が、ビンの中でできあがった。
「ありがたい。ではひとくち……ん、いつもよりうまいぞよ!」
薬草の効果を、倍増してくれる作用があるらしい。
「そんな効果があるなんて。そういえば、こころなしか血の巡りがいいような気がするね」
パロンが、腕をぐるぐる回す。リンゴの効果を、実感しているみたいだ。
「いやあ、お主は何者ぞ?」
「ボクはコーキ。パロンに作ってもらったウッドゴーレムです」
「なんとも。言葉を話すゴーレムは珍しくないが、それが人間並の意思を持って動くとは」
式神や自動人形なども、この世界には存在する。しかし、命は仮初らしい。
機械的に命令を聞くことはあっても、返答は指定した言語しか話せないとか。
ボクのように、相手と受け答えなんてできないという。
「珍しい技術じゃのう」
「遺跡にあった【燃える魔法石】を、ゴーレムに埋め込んでみたんだ。それが、世界樹とシンクロしたみたいでさ」
「ほほう。ようやく念願かなったという感じかのう?」
賢人クコの言葉を受けて、パロンが「まあね」と腰に手を当てる。
「【燃える魔法石】だって?」
ボクの身体には、そんなのが埋め込まれているのか。
「見てみるかい?」
「ぜひぜひ」
自分の身体が、どうなっているのか、知りたい。
ウッドゴーレムっていう人外中の人外なのに、普通の人間として振る舞えるなんて。
パロンが、ボクの胸部分のパーツを開く。まるで、冷蔵庫を開けるみたいに。
ボクの中で、赤い石がドクンドクンと明滅していた。その石は、まさしく心臓を思わせる。
「これが、【燃える魔法石】だよ」
この石が、ボクを生かしてくれているのか。
「というわけで、ウッドゴーレムは完成したってわけ」
再度パロンが、胸パーツを閉じた。
「以前からパロンは、『友だちのようなゴーレムがほしい』と言っておっからのう。ゴーレムとコミュニケーションを取るのが、彼女の夢だったのじゃ」
「じゃあ、目的は達成されたって思っていいのですか?」
「もちろんじゃ。そこでお願いがあるのじゃが、このワシとも、よき友となってくれぬか?」
なんでも、薬草茶が気に入って、知り合いになりたいという。
「ボクはいいけど、パロン?」
「当然。でも、森を留守にしていいの?」
「平気じゃ。こんな森、だれも立ち入らぬ。お前さんも、この地にワシ以外でお客なんぞこんかったろ? 買い物や商売なんぞも、街へ降りてやっておったろうに」
「それもそうだね。じゃあ、出発しようか。と、その前に。すっかり忘れていたよ」
パロンが、ボクにフードを被せる。抹茶色のフードは、ボクを頭から足先まですっぽり覆う。
「仮面も、作っておこうかな」
部屋の中から、パロンが手頃な木の板を取り出す。
「これでいいかな」
薬草茶に続いて、もう一度パロンは錬金術師としての顔を覗かせた。
板が曲がって、顔が収まるくらいの大きさに削れていく。段々と、カブトらしくなってきた。
「目のところはくり抜いて、口は開閉型にしよう」
色々と、パロンが仮面にアレンジを加えていく。しかし、パロンは仮面に指一本触れていない。すべて、空中で作成している。
木製の仮面が、できあがった。
できた木の仮面を、パロンはボクに被せる。
「今日からキミは、仮面の冒険者コーキだ」
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