ウッドゴーレムに転生しました。世界樹と直結して、荒れ地を緑あふれる大地に変えていきます【再編集版】

椎名 富比路

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第二章 ウッドゴーレム、土地開拓を開始

第20話 商人貴族と友だちになる

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 ボクはセーフハウスから、外に逃げ出す。
 
「家に突っ込んでくる!」 

「うわあああ!」
 
 中年のおじさんが乗っている飛空艇が、ボクの小屋に激突した!

 なんとか、おじさんだけでも助けないと。

 コクピットのガラス窓を突き破って、おじさんが飛び出してきた。

「【ソーンバインド】!」

 ツタを絡ませて、おじさんをキャッチする。

 だが、飛行機はそのまま地面を滑り落ちて、向こうの崖に真っ逆さま。

「すまん、ケガはないか?」

「いえ……あっ!」

 仮面が、壊れちゃってる!

「お主、もしかして、ウッドゴレームか?」

 おじさんは、ボクの顔を不思議そうに見ていた。
 
 正体がばれちゃったかも!?

「顔を隠さずともよい。すまなかった。ぐう……」

 おじさんは、胸部をケガしている。

「じっとしていてください。治します!」

 ボクはありったけの魔力を込めて、彼にヒーリングを施す。

「ああ、すまん。ウッドゴーレム殿。おそらく、パロン・サントの作ったゴーレムだろう。だが、この際どうでもいい。この恩には必ず報いるゆえ」

「しゃべらないで」

「はい」

 じっとしてもらい、ボクは治療に専念する。

「治りました」

「どうもありがとう。傷口も完璧に、塞がっている。この治癒力。まさしくパロン・サントの力を感じる」

「パロンを、知ってるんですか?」

 この人は、パロンの知り合いなんだろうか?
 
「まあな。友人といえば、友人だ。知らぬ仲ではない」

「あの、ボクのことは……」
 
「構わんさ。誰にも話さん」

 おじさんのお腹が、ぐうと鳴る。

「待っててください。ゴハンを出しますから」

「結構だ。家を潰してしまったのだ。食い物まで恵んでもらっては、どうお返しすればよいか」

「まあまあ。食べてから考えてください」

「……そうしよう」

 豆は無事だけど、調理しないといけない。トマトなら、すぐに食べられるよね。

「どうぞ」

「どうもありがとう。うまい! 実にうまいトマトだ。ウチで売りたいくらいだ。お詫びに、すべて買い取ろう」

「いいんですか?」

「吾輩はこう見えて、商人貴族だ」

 トマトをバクバク食べた後、商人貴族様は惜しげもなく服で手を拭いてボクに握手を求めた。
 
「自己紹介が遅れたな。吾輩はティンバー・ネトルシップという。ここから南にある港町、コラシェルから来た。商人貴族の伯爵を父に持つ」

 ティンバーさんのお父さんは、裸一貫から行商人を始めて、一代で財を成したという。船による外交を成功させて、貴族階級まで手に入れてしまったそうだ。

「が、吾輩はただの研究好きなドラ息子だよ」
 
「コーキ・シラカバです。よろしく」

「ふむ。シラカバとな。東洋人……というか、東洋の木を用いて作られた可能性があるな」

「東洋地方に世界樹があるんでしたら、そうかもしれません」

 パロンのことだ。東洋の文化について詳しくても、おかしくない。

「どうして、飛行機なんて飛ばしていたんです?」

「王都を縦断する手段として、飛行機が使えないか試していたのだ」

 空路なら、海賊などに襲われることもない。

 アプレンテスの魔物にも、襲撃を受けないと思ったという。

「だが、結果はこれだ。実験は失敗。また一から、設計の見直しだ」

「飛行機か。原理はよくわかりませんが、素材くらいなら、提供しますよ」

 ボクの身体からの素材でよければ、飛行機の部品に使ってくれても構わない。

「まったく、キミはお人好しだな。パロン・サントそっくりだ」
 
「そうかもしれません。ボクは、パロンに作ってもらったので」
 
「やはりな。個人的に、研究者としては、キミの身体を隅々まで調査をしたいと思う。だが……そんなことをすれば、あのエルフ……翡翠の魔女ソーマタージ・オブ・ジェダイトの『パロン・サント』が黙ってはおるまいて」

 パロンなら、そうするだろう。

「サント家と我が家は、互いに商売相手でね。敵に回したくないのだ。とはいえサント家のことがなくても、キミからの恩を仇で返したくない。キミには、莫大な資産的価値があるかもしれん。だが、吾輩はキミとの友情を取るよ」
 
「ありがとう」

「友人として、この小屋にあった食料品を買い取ろう。ただ、条件が一つ」

「はい」

「トマトをもう一つくれ」

「あはは。はいはい」

 こうして、ティンバーさんとの商談が成立した。
 豆とトマト、ブドウなどを大量に買い取ってもらう。

「そちらは、何がほしい? なんでも言ってくれ。吾輩とキミの中だ。コーキ」

「では、香辛料とかはありますか?」

 一応ツリーイェンにも、塩コショウ程度はあった。
 だが豆料理に使うにしては、パンチがなさすぎる。

「ウチなら、たしか唐辛子があるな」

 唐辛子! 最高じゃん。

「ぜひください」

「あと、コーヒー豆などもあるぞ」

「それもぜひ」

「よし。ただで送ってやろう」

「いえいえ」

 さすがに、無料でもらうわけには。

「吾輩は、キミに命を救ってもらったんだぞ。それくらい、させてくれ。命に比べれば、安いものである」

 
 これは、断ったほうが相手に恥をかかせるタイプのお願いだね。

「では、お言葉に甘えます」

「そうしてくれたまえ。おや?」

 ティンバーさんが、崖の下を覗き込む。
 
「ぼっちゃま~」と、情けないお年寄りの声が聞こえてきた。
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