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第二章 ウッドゴーレム、土地開拓を開始
第22話 魔女、帰還
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「やあ、パロン。久しぶり」
「おはよう、コーキ。すごいことになってるね」
パロンは、ボクの後ろにそびえ立つ山を見上げる。
ハゲ山だったはずのゴツゴツ山は、見渡す限りの緑に溢れていた。雨を大量に吸ったことで、土に活気が戻ったのだろう。
木々も活性化し、一晩で成長している。果物なども、たわわに実っていた。
わずかに残っている岩肌からは、大瀑布が。念願の滝である。つまり、岩のてっぺんにまで水が行き届いたんだね。
「池というか、湖にも魚が泳いでいるじゃないか」
湖とつながっている川には、タニシも大量に湧いていたという。召喚ハトのエサとして、重宝したらしい。
「ボクも、驚いているよ。一匹どうぞ」
ボクは、パロンとクコに、焼き魚を分けてあげる。
「ありがとう、コーキ」
「コーキの好意に、甘えるとしよう。いただこうかの」
二人は魚をかじった瞬間、ほわあー、とした顔になった。
ボクもいただくことにする。大地の恵みに感謝。
「おいしいねぇ。アプレンテスで魚が食べられるなんて」
「ここって、ホントに虫型のモンスターくらいしかいないもんねぇ」
「それもほぼ、狩り尽くしているよ」
デビルなんとかっていうモンスターも、各所に設置した【アタック・トーテム】がほとんど倒してしまったらしい。いわゆる「湧き潰し」状態だという。アタック・トーテムは、自然増殖を続け、アプレンテスじゅうの魔物を撃退しているんだとか。
倒した魔物の死体は、マッドゴーレムの手によって、大地の肥料となるそうだ。マッドゴーレムも、数え切れないくらいに増えているという。
「ホント、キミの力は底が知れないね。雨まで降らせてしまうなんて」
「雨は、ボクの力じゃないよ。自然の力じゃないの?」
「でも、その自然に呼応したのは、キミの努力からだよ」
パロンが、お魚をパクリと平らげた。
「おうちを見せてもらうね」
パロンが、できあがった小屋を見る。
「そんな小さい小屋でいいの? 物置じゃん」
あまりいい反応を、パロンは見せてくれなかった。
「これくらいが落ち着くんだけどなあ」
「ダメダメ。この倍くらいはないと、農作業の道具とかも入らないよ。コーキ一人が使うわけじゃ、ないからね」
そっか。ベッドルームはボク専用だけど、物置小屋はそうはいかない。パロンだって使うよね。
「街との交流が進んだら、人が集まってくるだろう。ガルバだって、こっちに移住予定なんだって」
「ガルバが?」
ゆくゆくは、ガルバとアザレア一家はこちらに越して、永住する予定だという。
そこまで、話が進んでいたのか。
「だから、村の備品は増やしておこう」
パロンの意見を取り入れ、ボクは物置を増設した。
「これくらいかもね」
物置小屋の出来に、パロンも満足げである。
「しかしまあ、殺風景な部屋じゃのう」
クコも、ボクの小屋に対しては不満を漏らす。
「家具を作るセンスがなくってさ」
「だったら、家具は南の港町で買ってみる?」
「うん!」
目的地は決まった。
「そうだ。ティンバーさんって人に会ったよ」
「ティンバー? ティンバー・ネトルシップかい?」
パロンも、ティンバーさんのことを知っているようだ。
彼の話は、ウソではなかったみたい。
「うん。そんな名前のおじさんだった」
ボクは、ティンバーさんがアプレンテスに来たいきさつを話す。
「へえ。ティンバーがねえ。彼なりに、街のことを考えているみたいだ」
「街に来たら見せたらいいよって、割符をくれたよ」
「ホントだ。どえらい仲良くなったんだね。割符なんて、絶対に渡すような男じゃないのに」
パロンが、口をポカンと開けた。
土壁はクコが魔法で補強し、辺りにもう一本ダルマ落としトーテムを設置した。
「戦闘はトーテムに任せて、ボクは地面を耕そう」
ボクたちは道中、訪ねた村から傷んで使えなくなった農具をもらっていた。パロンの錬金術で、高級品並の切れ味にしている。
「すごい。硬い地面がザクザク掘れるよ」
「うむ」
ボクが掘った土に、クコが野菜の種を植えた。
「酒の材料ならええんじゃがのう」
「ワインでガマンして」
「何を言う? ワインはガマンできんぞ」
「それもそうか」
二人で談笑しながら、種まきをする。
反対の荒野には、薬草を植えておいた。
パロンが手から、凍った物体を出した。解氷すると、ウネウネとした物体になる。
「ツリーイェンから、ミミズももらってきたよ。放すね」
土の上に、パロンがミミズを放した。
畑から離れた土地にも、ミミズを放つ。こちらは、モンスターの死体処理場だ。
「ほう、ちゃんと考えておるな?」
「ミミズが大量にいる場所なら土がいい、ってわけじゃないからね」
土がよくなると、エサである土壌内の有機物がなくなり、ミミズの数は減っていく。ミミズが大量にいる場合は、それだけ有機物が含まれている。そんな土地はカビが発生しやすく、畑にはいい環境ではない。土そのものをよくするためにだけ、働いてもらおう。
だるま落としトーテムを、さらに増設した。畑、薬草エリア、拠点、井戸にそれぞれ四箇所、置いてある。
あとは、素材がどうなるかかなあ。
「おはよう、コーキ。すごいことになってるね」
パロンは、ボクの後ろにそびえ立つ山を見上げる。
ハゲ山だったはずのゴツゴツ山は、見渡す限りの緑に溢れていた。雨を大量に吸ったことで、土に活気が戻ったのだろう。
木々も活性化し、一晩で成長している。果物なども、たわわに実っていた。
わずかに残っている岩肌からは、大瀑布が。念願の滝である。つまり、岩のてっぺんにまで水が行き届いたんだね。
「池というか、湖にも魚が泳いでいるじゃないか」
湖とつながっている川には、タニシも大量に湧いていたという。召喚ハトのエサとして、重宝したらしい。
「ボクも、驚いているよ。一匹どうぞ」
ボクは、パロンとクコに、焼き魚を分けてあげる。
「ありがとう、コーキ」
「コーキの好意に、甘えるとしよう。いただこうかの」
二人は魚をかじった瞬間、ほわあー、とした顔になった。
ボクもいただくことにする。大地の恵みに感謝。
「おいしいねぇ。アプレンテスで魚が食べられるなんて」
「ここって、ホントに虫型のモンスターくらいしかいないもんねぇ」
「それもほぼ、狩り尽くしているよ」
デビルなんとかっていうモンスターも、各所に設置した【アタック・トーテム】がほとんど倒してしまったらしい。いわゆる「湧き潰し」状態だという。アタック・トーテムは、自然増殖を続け、アプレンテスじゅうの魔物を撃退しているんだとか。
倒した魔物の死体は、マッドゴーレムの手によって、大地の肥料となるそうだ。マッドゴーレムも、数え切れないくらいに増えているという。
「ホント、キミの力は底が知れないね。雨まで降らせてしまうなんて」
「雨は、ボクの力じゃないよ。自然の力じゃないの?」
「でも、その自然に呼応したのは、キミの努力からだよ」
パロンが、お魚をパクリと平らげた。
「おうちを見せてもらうね」
パロンが、できあがった小屋を見る。
「そんな小さい小屋でいいの? 物置じゃん」
あまりいい反応を、パロンは見せてくれなかった。
「これくらいが落ち着くんだけどなあ」
「ダメダメ。この倍くらいはないと、農作業の道具とかも入らないよ。コーキ一人が使うわけじゃ、ないからね」
そっか。ベッドルームはボク専用だけど、物置小屋はそうはいかない。パロンだって使うよね。
「街との交流が進んだら、人が集まってくるだろう。ガルバだって、こっちに移住予定なんだって」
「ガルバが?」
ゆくゆくは、ガルバとアザレア一家はこちらに越して、永住する予定だという。
そこまで、話が進んでいたのか。
「だから、村の備品は増やしておこう」
パロンの意見を取り入れ、ボクは物置を増設した。
「これくらいかもね」
物置小屋の出来に、パロンも満足げである。
「しかしまあ、殺風景な部屋じゃのう」
クコも、ボクの小屋に対しては不満を漏らす。
「家具を作るセンスがなくってさ」
「だったら、家具は南の港町で買ってみる?」
「うん!」
目的地は決まった。
「そうだ。ティンバーさんって人に会ったよ」
「ティンバー? ティンバー・ネトルシップかい?」
パロンも、ティンバーさんのことを知っているようだ。
彼の話は、ウソではなかったみたい。
「うん。そんな名前のおじさんだった」
ボクは、ティンバーさんがアプレンテスに来たいきさつを話す。
「へえ。ティンバーがねえ。彼なりに、街のことを考えているみたいだ」
「街に来たら見せたらいいよって、割符をくれたよ」
「ホントだ。どえらい仲良くなったんだね。割符なんて、絶対に渡すような男じゃないのに」
パロンが、口をポカンと開けた。
土壁はクコが魔法で補強し、辺りにもう一本ダルマ落としトーテムを設置した。
「戦闘はトーテムに任せて、ボクは地面を耕そう」
ボクたちは道中、訪ねた村から傷んで使えなくなった農具をもらっていた。パロンの錬金術で、高級品並の切れ味にしている。
「すごい。硬い地面がザクザク掘れるよ」
「うむ」
ボクが掘った土に、クコが野菜の種を植えた。
「酒の材料ならええんじゃがのう」
「ワインでガマンして」
「何を言う? ワインはガマンできんぞ」
「それもそうか」
二人で談笑しながら、種まきをする。
反対の荒野には、薬草を植えておいた。
パロンが手から、凍った物体を出した。解氷すると、ウネウネとした物体になる。
「ツリーイェンから、ミミズももらってきたよ。放すね」
土の上に、パロンがミミズを放した。
畑から離れた土地にも、ミミズを放つ。こちらは、モンスターの死体処理場だ。
「ほう、ちゃんと考えておるな?」
「ミミズが大量にいる場所なら土がいい、ってわけじゃないからね」
土がよくなると、エサである土壌内の有機物がなくなり、ミミズの数は減っていく。ミミズが大量にいる場合は、それだけ有機物が含まれている。そんな土地はカビが発生しやすく、畑にはいい環境ではない。土そのものをよくするためにだけ、働いてもらおう。
だるま落としトーテムを、さらに増設した。畑、薬草エリア、拠点、井戸にそれぞれ四箇所、置いてある。
あとは、素材がどうなるかかなあ。
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