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第六章 王都のカレーとドワーフ
第65話 王都とネイス・クロトン村をトラムで繋げる
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「あなたがコーキよね? 姉から話は聞いているわ」
「はい。よろしく、カナンさん。ツリーイェンと王都を、トラムで繋げに来ました」
ボクは、この作業が公務だと、カナンさんに告げる」
「そうなの? トラムなんて、王都でしか走っていないと思っていたから、驚きだわ」
「村と王都を安全に行き来できるルートを作ったので、ご報告を」
「それはどうも、ありがとう。ツリーイェンも、賑やかになるわ」
「で、ですね。こちらの偉い方に、話を通したいのですが?」
「村長のところまで、案内するわ。こっちよ、いらして」
カナンさんが、村の責任者の元まで連れて行ってくれた。
大使役は、ヴェリシモ姫が買って出てくれることに。「自分がもっとも、信用できるだろう」と。
村長らしき老人と、ヴェリシモ姫が話し合う。
「もうちょっとのところまで、鉄道は来ている。ツリーイェンまで延伸する許可を」
「姫様の申し出とあらば、お引き受けいたします」
こうして、ツリーイェンにトラムがつながった。
ただ、ツリーイェンからネイス・クルオンへのルートは、少々厄介になる。
魔物は対して、強くない。けど、数がワラワラと湧いてきた。
「なんだか、数が多くない!?」
トラム用の道を作りながら、ボクは新しい敵の存在に驚く。
「トレントがあちこち出向いているでしょ? 生態系が変わったんだよ」
森ができたことで、新しい生き物が集まるようになった。
荒れ地の再生でもたらされるのは、恵みだけではない。
豊かな資源を求めて、邪悪な魔物たちも集まってくる。
とはいえ、荒廃したまま放置していては、なんの循環もしないわけで。
自然の浄化は、難しいなぁ。
「すげえ数だ。これだけ大勢で歓迎されると、【モンク】だとキツいかもな!」
一つ目の巨人に悪戦苦闘しながら、ナップルが敵のスネを蹴り込む。魔物がヒザをついたところで、目玉にトドメの一撃を叩き込んだ。
モンクのスキルはサシでの戦いがメインで、一体多数を想定していない。またナップルは、どちらかというとボスキラー担当のようだった。大量のザコ敵を相手にするには、ムリヤリ力技で押し切るしかない。
「ムリをするな、ナップル。我々に任せよ」
味方が多数いるヴェリシモ姫が、ナップルの壁役を担当した。
「ここは姫のお言葉に甘えておくんだ、ナップル!」
「おう。頼んだ姫様!」
スプルスさんが、ナップルのための逃げ道を作る。
ナップルが、魔物の集団から抜けた。
「今ですぜ、姫!」
「ゆくぞ、魔物共よ! 【ファイアバード】!」
ヴェリシモ姫が、剣から炎の鳥を放つ。
ナップルに注意がそれていた魔物共が、燃え盛る鳥の翼に身を焼かれる。
火の鳥が、魔物を焼き尽くした。
炎は森まで引火することなく、魔物だけを撃退して消えていく。
「ファイアバードは、邪悪な力のみを消し去る。コーキの【セイントファイア】の上位互換のようなものだ」
ボクは自分で悪い気配を探す必要があるけど、ヴェリシモ姫の攻撃は自動で魔物を察知してくれるみたい。
「ヴェリシモ姫って、やっぱりすごい」
「とんでもない。普通だ。コーキが戦闘職でもないのにあそこまで強いほうが、よっぽど脅威なのだぞ」
そういうものなのか。
「あっ、コーキ。やっと村についたよ」
街道を繋げていたら、いつの間にかネイス・クロトンに到着していた。
「ダリエンツォより派遣された、ヴェリシモ大使である。よろしく頼む」
二人の紹介を受けて、拍手が鳴る。
「姫様、ホントに大使って名乗っていいんですかい?」
スプルスさんが、怪訝そうな顔を浮かべた。
「構わない。大使なのは事実だし」
自身が姫様であることは、内緒にしてくれとのこと。みんなが萎縮してしまうからだとか。
「ピオナです。ドリアードですが、これでもネイス・クロトン村の村長をいたしております。コーキ様のご指示で」
「そうか。危害が及ばなければ、村長が魔物だろうと王都は差別しない。よろしく頼む」
ピオナとヴェリシモ姫が、固い握手を交わす。
「私のことは今後、気軽に呼び捨てで構わない」
「ではヴェリシモさん、よろしくおねがいしますわ。みなさんも、かまわないですか?」
ヴェリシモさんも、ナップル共々拍手で迎えられた。
「で、アタシはなにをすれば?」
「こっちからトンネルを掘ろうと思ったんだけど、どうだろうね?」
ボクらは、ずっと邪魔だった北西の岩山まで来ている。
「東側の開拓は、だいたい進んだんだよ」
「たしかにな。ツリーイェンも東だし」
「でもコラシェルは南西だから、今のままだとネイス・クロトンからS字にカーブしないといけないんだ」
ネイス・クロトンの西方面に鎮座し、行く手を阻んでいた。この岩石地帯のせいで、あらゆる通行が妨げられている。なんとかしたかった。削った岩を加工もしたかったし。
急勾配過ぎて、上から通すこともできない。今だと、迂回する案のみである。
「初めてコラシェルを訪れたときも、だいぶ回り込んだよね」
「そうなんだ」
岩さえなんとかできれば、トラムも繋げやすいかと。
「岩の加工は可能だが、アタシらでもトンネルは難しいかな?」
「そうなのかー」
「アタシらドワーフでも、このタイプの岩は手こずっている」
「どうして?」
「岩自体に、価値がねえんだよ」
「はい。よろしく、カナンさん。ツリーイェンと王都を、トラムで繋げに来ました」
ボクは、この作業が公務だと、カナンさんに告げる」
「そうなの? トラムなんて、王都でしか走っていないと思っていたから、驚きだわ」
「村と王都を安全に行き来できるルートを作ったので、ご報告を」
「それはどうも、ありがとう。ツリーイェンも、賑やかになるわ」
「で、ですね。こちらの偉い方に、話を通したいのですが?」
「村長のところまで、案内するわ。こっちよ、いらして」
カナンさんが、村の責任者の元まで連れて行ってくれた。
大使役は、ヴェリシモ姫が買って出てくれることに。「自分がもっとも、信用できるだろう」と。
村長らしき老人と、ヴェリシモ姫が話し合う。
「もうちょっとのところまで、鉄道は来ている。ツリーイェンまで延伸する許可を」
「姫様の申し出とあらば、お引き受けいたします」
こうして、ツリーイェンにトラムがつながった。
ただ、ツリーイェンからネイス・クルオンへのルートは、少々厄介になる。
魔物は対して、強くない。けど、数がワラワラと湧いてきた。
「なんだか、数が多くない!?」
トラム用の道を作りながら、ボクは新しい敵の存在に驚く。
「トレントがあちこち出向いているでしょ? 生態系が変わったんだよ」
森ができたことで、新しい生き物が集まるようになった。
荒れ地の再生でもたらされるのは、恵みだけではない。
豊かな資源を求めて、邪悪な魔物たちも集まってくる。
とはいえ、荒廃したまま放置していては、なんの循環もしないわけで。
自然の浄化は、難しいなぁ。
「すげえ数だ。これだけ大勢で歓迎されると、【モンク】だとキツいかもな!」
一つ目の巨人に悪戦苦闘しながら、ナップルが敵のスネを蹴り込む。魔物がヒザをついたところで、目玉にトドメの一撃を叩き込んだ。
モンクのスキルはサシでの戦いがメインで、一体多数を想定していない。またナップルは、どちらかというとボスキラー担当のようだった。大量のザコ敵を相手にするには、ムリヤリ力技で押し切るしかない。
「ムリをするな、ナップル。我々に任せよ」
味方が多数いるヴェリシモ姫が、ナップルの壁役を担当した。
「ここは姫のお言葉に甘えておくんだ、ナップル!」
「おう。頼んだ姫様!」
スプルスさんが、ナップルのための逃げ道を作る。
ナップルが、魔物の集団から抜けた。
「今ですぜ、姫!」
「ゆくぞ、魔物共よ! 【ファイアバード】!」
ヴェリシモ姫が、剣から炎の鳥を放つ。
ナップルに注意がそれていた魔物共が、燃え盛る鳥の翼に身を焼かれる。
火の鳥が、魔物を焼き尽くした。
炎は森まで引火することなく、魔物だけを撃退して消えていく。
「ファイアバードは、邪悪な力のみを消し去る。コーキの【セイントファイア】の上位互換のようなものだ」
ボクは自分で悪い気配を探す必要があるけど、ヴェリシモ姫の攻撃は自動で魔物を察知してくれるみたい。
「ヴェリシモ姫って、やっぱりすごい」
「とんでもない。普通だ。コーキが戦闘職でもないのにあそこまで強いほうが、よっぽど脅威なのだぞ」
そういうものなのか。
「あっ、コーキ。やっと村についたよ」
街道を繋げていたら、いつの間にかネイス・クロトンに到着していた。
「ダリエンツォより派遣された、ヴェリシモ大使である。よろしく頼む」
二人の紹介を受けて、拍手が鳴る。
「姫様、ホントに大使って名乗っていいんですかい?」
スプルスさんが、怪訝そうな顔を浮かべた。
「構わない。大使なのは事実だし」
自身が姫様であることは、内緒にしてくれとのこと。みんなが萎縮してしまうからだとか。
「ピオナです。ドリアードですが、これでもネイス・クロトン村の村長をいたしております。コーキ様のご指示で」
「そうか。危害が及ばなければ、村長が魔物だろうと王都は差別しない。よろしく頼む」
ピオナとヴェリシモ姫が、固い握手を交わす。
「私のことは今後、気軽に呼び捨てで構わない」
「ではヴェリシモさん、よろしくおねがいしますわ。みなさんも、かまわないですか?」
ヴェリシモさんも、ナップル共々拍手で迎えられた。
「で、アタシはなにをすれば?」
「こっちからトンネルを掘ろうと思ったんだけど、どうだろうね?」
ボクらは、ずっと邪魔だった北西の岩山まで来ている。
「東側の開拓は、だいたい進んだんだよ」
「たしかにな。ツリーイェンも東だし」
「でもコラシェルは南西だから、今のままだとネイス・クロトンからS字にカーブしないといけないんだ」
ネイス・クロトンの西方面に鎮座し、行く手を阻んでいた。この岩石地帯のせいで、あらゆる通行が妨げられている。なんとかしたかった。削った岩を加工もしたかったし。
急勾配過ぎて、上から通すこともできない。今だと、迂回する案のみである。
「初めてコラシェルを訪れたときも、だいぶ回り込んだよね」
「そうなんだ」
岩さえなんとかできれば、トラムも繋げやすいかと。
「岩の加工は可能だが、アタシらでもトンネルは難しいかな?」
「そうなのかー」
「アタシらドワーフでも、このタイプの岩は手こずっている」
「どうして?」
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