ウッドゴーレムに転生しました。世界樹と直結して、荒れ地を緑あふれる大地に変えていきます【再編集版】

椎名 富比路

文字の大きさ
72 / 84
第七章 絶体絶命!? 炎の地下遺跡

第72話 クトーニアン

しおりを挟む
 バジリスクたちは、あっさり食いついた。おいしそうに食べているではないか。

「やっぱりだ。ボクの身体から生えたブドウを食べると、バジリスクはただのニワトリになっちゃうね」

 ボクの身体で生成した果物には、毒を中和する効果があるようだ。

 だからバシリスクにとっては、苦手かなって思ったんだけど。

「リンゴもブドウもミカンも、全部平らげちゃったね」

「仕方ないよ。コーキのもたらす実りは、おいしそうだからさ」
 
 満足したのか、バジリスクたちは眠ってしまった。果物に催眠効果を持たせたことも、効果があったみたい。

 イチかバチかでやってみたが、うまくいってよかったよ。

 相手も催眠毒に気づいていたみたいだけど、おいしいニオイに負けちゃったみたい。

「バジリスクの奴ら、体内の毒が消えちまったみたいだぜ!」

 ボクの果物を食べて、体質まで代わったのか。我ながらすごいチートだね。

『なんと役立たず共! ワシ自らが出る!』

 祭壇に置かれていた棺が、ひとりでに動き出す。

 木製の棺から、包帯まみれの手だけが現れる。

木乃伊ミイラだ!」

「やはり、あなたがたは、『クトーニアン教団』ですね?」

 ピオナが、ゴーレムの銃口を向けた。

 海に現れたイソギンチャクの魔物は、クトーニアンが信仰していた怪物だったみたい。今まで力が弱かった。だが、大量発生して人を襲うことによって、力を取り戻そうとしたようだ。

 ボクが全滅させたけど。

 クトーニアンが、身体に巻き付いた包帯状態の触手を伸ばしてくる。

『ウッドゴーレムごときに、我が進撃を止められてなるものか!』

 ムチのように、打撃を繰り出してきた。

「触手にはツタで! 【ソーンバインド】!」

 ボクはツタを身体から伸ばして、相手のムチ触手に対抗する。

「コーキ一人で戦う気!?」

「やってみる。みんなはボクの言う通りにして!」

 パロンたちに指示を出して、単身クトーニアンを相手する。

『我らクトーニアンは、再び地上を支配するのだ! 邪魔立てするなら、貴様らを養分にしてくれる!』

「そのために、世界樹をコントロールしていたのか!?」

『世界樹は我らに恩恵をもたらすべきモノだ! 貴様ら人類が持つべきではない!』

「そんなことを言っているから、世界樹の方に愛想をつかされるんだ!」

 ボクは、ツタを相手の触手へ振り下ろした。

「ぬあ!?」

 敵の触手が、ドロっと溶け出す。

「貴様、なにをした!?」

「何もしていないよ。ボクはね」

 単にボクは、触手をツタで攻撃していただけ。

 しかし、そのツタに細工をした。果物を潰してポーションとして、相手に流し込む。クコのソーンバインドと混ぜて、攻撃してカモフラージュした。ヴェリシモさんの氷エンチャントを施し、触手が当たった瞬間溶けるようにしかけたのである。

 ボクは、クトーニアンの触手を全部腐食させた。果物の酸を強化して、触手に浸透させたのだ。

 バジリスクは毒気を抜かれると、普通のニワトリに変化した。
 
 しかし、全身が毒の塊であるクトーニアンは、さすがに腐食してしまうらしい。

『なんたるおぞましき力! ウッドゴーレムごときに!』

「ウッドゴーレムごときだなんて蔑んでいるから、お前は負けるんです」

『黙れ、仮初の命の分際で!』

 やけに必至だな。自分だって、アンデッドではないか。

「チェックメイトです、クトーニアン。果物の酸で溺れて、消滅しなさい」

 ボクはクトーニアンの棺の隙間に果物を仕込む。毒性の果物で、棺の中を満たした。

『ぬおおおお! 身体が溶ける! 毒など我には効かぬはずなのに!?』

 棺から、酸が溢れ出す。

「ボクは、毒なんて作っていませんよ」

 とびっきり毒耐性の強い果物を生成して、ポーションに変えただけ。
 
「あんたは、この世界にひどいことをした。世界にムリヤリ割って入り、国交も断絶した。この世界に、あんたの居場所はありません」

「ごおおおお!」

 棺もろとも、クトーニアンはドロドロに溶けていった。

「……敵性反応なし。クトーニアンの駆除を確認」

 ピオナから通達を受けて、ボクは安堵する。 

「はあっ、はあっ。敵のボスだから、どうなるかと思ったよ」

 しぶとそうだったが、倒せてよかった。

「どこから湧いてきたんだろう?」

「クトーニアンは、我が世界樹の敵です。地下から浸透してきて、水を奪い合います」

 基本は、海からの侵略者らしい。水分のあるところを求めて、地上へ這い上がってくるらしい。

「クトーニアンの完全駆除には、海を枯らすしかありません。しかし、そんなことをすれば世界は崩壊します」

 過剰に海から襲ってくる度に、駆除するしかないようだ。

「個体だけなら、さして強くありません。過剰に恐れることは、ありませんよ。ですが、恐ろしい作戦を練っていたそうで」

「どんな?」

「天空に居を移し、真上から攻撃する作戦があったとか」

 うわああ。コミックみたいな話って、こっちでもあるんだね。 

「じゃあ、天空に人がいるかも知れない?」

「生き残りがいるんでしたら、おそらくは」

 天空まで、報告に行ったほうがいいのかな?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。 しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。 『ハズレスキルだ!』 同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。 そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』

魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。 それは、最強の魔道具だった。 魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく! すべては、憧れのスローライフのために! エブリスタにも掲載しています。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...