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関西人最大の謎

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 関西出身の同級生と、ボクは大阪まで来ていた。
「実家に帰省するから付いてきて」だってさ。

「はーあ久しぶりの我が家やんけ」

 今、ボクたちはリオの自宅にいる。
 自分用の勉強机にもたれながら、リオはくつろいでいた。

 
「リオ。なんで、関西の女の子って、制服が長いんだ?」

 ボクは、友人のリオにさりげなく聞いてみた。

「なんなん急に? セクハラ?」

 引き気味に、リオが背もたれに体を預ける。
 
「違うよ。気になってるんだ。スカートの長い地域って、関西くらいだって聞いたから」

 大阪見学をさせてもらって気づいたが、どの女生徒も制服のスカートが長かった。

「マジレスするとな、どうも神戸基準らしいわ」
 
 聞けば、「神戸の学校は、制服の校則がやたら厳しい」らしい。
 特に、お嬢様学校が基準なのでは……とか。

「でも今は、制服を普段着みたいに使うんが基本みたいやな。古着みたいな感じねん」

 対して、関東などは「制服を可愛く着こなす」方向に行き、短めの改造が多発したのでは、という。

「あと、制服が短いんは大阪と神戸くらいで、京都はミニスカの女子が多いねんて」
「そういえば、吹奏楽部がテーマのアニメは、夏祭りでスカートをミニにして補導されてたシーンがあったね」

 あのアニメも、舞台は京都府宇治市だったような。
 
「ホンマや! あったなそんなの……あんた、ホンマにドスケベェやな」
「違うって! 思い出しただけ!」
 
 ちなみに、彼女が今着ている制服も、スカートが長い。
 ボクの地元でも、リオは浮いているくらいだ。

 なんで制服で帰省しているかと言うと、もうすぐ高校を卒業するからである。
 せめて最後の17歳は、地元で過ごしたいんだって。

 高校進学から寮生活を続けて、ずっと心細かったんだろう。

「じゃあ、短いスカートは普段からも穿かないのか?」
「穿くんちゃう? 私服の子は短かったやろ?」

 たしかに、多少は短いスカートの子もいた。
 

「……見たいん? ウチのミニスカ」

「いや、そういうわけじゃ」

「ハッキリしいや」

「みたいです」

「ええ子や」

 リオは、わざわざスカート丈を上げてくれた。 

「せっかく大阪まで来たんや。珍しいもん見したらなアカンよな」

 謎のベールに包まれていた、リオの太ももがあらわに。

「顔はカワイくなくて、ゴメンな」

「リオは、カワイイよ。ボクは好きだ」

「そそ、そこは、ハッキリ言わんでええねんっ」
 
「でも、卒業したら」

 リオは、地元のたこ焼き屋さんを継ぐ。

 ボクは、こっちの大学に進学する。でも、離れ離れだ。

「うん。せやでも、気持ちは一緒やん?」

「ああ。って……」

 ミニスカートだけじゃなく、彼女の本心まで見てしまった。

「部屋、空いてるで? こっちに越すんやったら、ウチの家に住む?」

 突然の要望に、ボクは戸惑う。
 一人前になったら、迎えに来ようと思っていたから。
 
「ミニスカ見放題やで」という言葉が、トドメになった。
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