異世界ダンジョン秘湯巡り。バニーガールと共に ~宝箱には目もくれず、回復の泉だけ求める男(ヘンタイ)~

椎名 富比路

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第三章 ドラゴンサウナ

ドラゴンのウロコでサウナを作ろう。

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 シズクちゃんが、目をグルグルさせながら立ち上がった。

「あああああ、あなたって人はぁ!」
「落ち着いてシズクちゃん!」
「これが落ち着いてなんていられますか!? あなたは、私という人がありながら!」
「いいから聞いて、このサウナを作るんだ!」

 ボクの見立てだと、リムさんの衣装は、おそらくウロコだ。
 レッドドラゴンの。だったら、相当の熱を持っているに違いない。

「このウロコに水を掛けて、サウナを作り出す」

「温泉じゃなくって?」

 そう。温泉は作れそうにない。ならばサウナと冷水のセットを作れば。

 下着はさすがに借りられないけど、ニーソくらいなら。履くのも脱ぐのも楽だろうし。

「それならそうと言ってくれたらいいのに!」
 言おうとしたら誤解したんじゃん!

「サウナなる設備が何かよくわからんが、協力はしよう」

 リムさんが、立ち上がった。丸太イスに足をかけて、ニーソックスをゆっくりと脱ぐ。
 シズクちゃんもキレイだけど、リムさんのスラッとした足も見事だ。
 女性的というより、生物的に見て美しいのである。
 彼女が厳密に言って爬虫類だから、そう見えるのかもしれない。

「ほれ。これを使うがよい」
 リムさんが、脱ぎたてのニーソックスを見せる。

「ありがとうございます」

 側に近づくと、ほのかに生暖かい。もっと熱いと思っていたけれど。

「匂いを嗅いじゃダメですよ」
「するかよそんなこと」

 今日のボクは、全然シズクちゃんに信用されないなあ。

「どこか、玄室はありませんか? そこをサウナルームにします。できれば密閉度が高く、水場が近い方がいいですね」

「いい場所があるぞ、ついて参れ」
 リムさんと共に、サウナに使えそうな場所を探す。

「すまぬのう。我も従者も、行水で済ませてしまうのでな」

 聞いてみると、川の廊下は彼女たちの浴場だったらしい。
 嫁入り前の女子たちが、素っ裸で露天の水風呂かー。
 水浴びの時は、トカゲの姿だろうけれど。

「おっしゃるとおり、ドラゴン族のねぐらに温泉はムリですよね」

 トカゲは、温度変化に弱い変温動物だ。

 レッドドラゴンのリムさんなら、多少の温度変化には耐えられるだろう。

 しかし、従者のドレイクさんはどうかわからない。

 ずっと蒸気に晒されるのだ。あまりいい環境ではないはず。管理も難しい。

「ご期待に添えぬ場所で、申し訳ない」
「いえいえ、とんでもない」

 回復の泉作りの目処は立ったのだ。
 流水の貯蔵庫を作って、水風呂で認定してもらおうかとも考えた。
 そんな味気ないマネなどできない。

「そのサウナとやらを作れれば、お主の願望は叶うと?」
「はい」

 サウナだって、立派な温泉施設だ。毒などのデトックス効果も期待できる。 

「カズユキさんっ、なんか鼻の下伸ばしてません?」
 ジト目で、シズクちゃんから睨まれた。

「え、そうかな?」

 ボクは、サウナが楽しみで眺めていただけなんだけれど。

「リム様を見ている顔が、ちょっとエッチでした」
「人型ドラゴンが、珍しかっただけだって」

 やましい考えなんて、ボクはまったく持っていない。

「ホントですかぁ? めっちゃグラマーじゃないですか、リム様。服装もセンシティブですし」
「シズクちゃんが、それ言う?」

「言いますよ。グラマラス枠は、私だけだと思っていましたから」
 自分の腕で、シズクちゃんが胸を持ち上げる。

「ボクのパートナーは、シズクちゃんだよ」
「それ、信用していいので?」
「シズクちゃんがボクをキライにならない限りは。シズクちゃんがイヤな気分にならないように、ボクだって配慮するよ」
「は、はい。いつもありがとうございます」

 なぜか、シズクちゃんが黙り込む。
 不快な思いをさせているのかなぁ。
 シズクちゃんの顔ははにかんでいるけれど。

 リムさんが選んだ所は、廊下すぐ脇にある玄室だ。キッチンやトレイにも近い。

「旧兵舎らしい。丈夫じゃぞ。今は使っておらぬ」

 外を休憩場にしていたのか、水飲み場があった。

 ボクは、置いてあったバケツに水を汲む。

「ここなら、水場には困りませんね」

 石組みのテーブルが、中央にドンと置かれている。
 ここで、作戦などを立てていたのかも。

「じゃあ、行きます。ニーソをそのテーブルに広げてください」
 リムさんの手で、ニーソックスを石テーブルの上に敷いてもらう。

「あとはドアを閉めて、水を掛ければ」

 ニーソに水をチョロチョロと浴びせた。
 モクモクと、蒸気が発生し始める。

「ほほう。蒸し風呂かえ?」
「ボクのいた世界では、ロウリュっていいます」

 いわゆるミストサウナの一種だ。

「もうちょっと蒸気で満たされたら、サウナのできあがりです」

「そんな簡単に、できあがるのかえ?」
 リムさんが、驚いている。

「湯に入る習慣のない種族でな。何もかも珍しいのじゃ」

 温泉文化がないと、ボクのしていることは魔法に映るみたい。

「レポートに移ろうか。シズクちゃん」
 ボクが撮影のセッティングを始めようとしたときだった。

「む?」
 天井を見上げ、リムさんの動きが止まる。

「あれ、どうなさいました?」
「侵入者じゃ。誰かが我にケンカを売りに来たらしい」

 大変じゃないか。それにしては呑気だな。
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