底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった

椎名 富比路

文字の大きさ
6 / 71
第一章 底辺配信者、スライムを拾う

第6話 コメント返し

しおりを挟む
 今日は冒険をお休みして、動画についたコメントに返信していく。

「こんにちは。ワラビのマスター、ツヨシです」

 スマホに向けて、ボクは話しかけた。

 ちなみに、こういった質疑応答系の配信者には、顔出し防止の観点から、公式運営から「アバター」が支給される。
 普段は棒人間みたいな簡素過ぎるアバターなんだけど、スケルトンキングを倒した特典で、いいアバターをいただいた。

「では長話もなんなので、ワラビに対する質問を受け付けます。どうぞ」

 生放送なので、過去のコメントを拾いつつ質疑応答も行うことに。
 質問は「モチマキ」という形式でさせてもらう。
 ボクたちが、質問者に対してモチをまく、お正月イベントのようなスタイルだ。

「えっと、『ワラビちゃんかわいいですね』、ですか。どうもありがとうございます。話すこともできて、かわいさは倍増していますよ」

 ワラビを撫でて、コメントに返信をする。 

「ファンアートまでいただきました。ありがとうございます」

 イラストを公開し、ワラビが感謝のコメントを返す。幼稚園児が書いた夏休みの絵日記みたいな絵だが、涙が溢れそうになった。
 ワラビ、愛されているなあ。倒さないで拾ってきて、よかった。

 質問を受け付けている間、ボクはコルタナさんが作ってくれたビーフシチューをワラビと食べる。料理が得意というだけあって、コルタナさんのシチューはお店で食べるような味がした。

 
『なんか、仲間が増えているけど?』

 
 最初はワラビではなく、コルタナさんとセンディに質問が集まった。
 ちなみにコルタナさんのアバターは画面上ではSD化した本人を形作っており、センディさんはTシャツ短パン姿のイラストになっている。

 自己紹介の後、二人はあいさつをする。

「こう見えて、元は冒険者用ホテルの料理人だったの。冒険者のお話を聞いているうちに、憧れのほうが勝っちゃった。それで、まだ駆け出しだったセンディと旅をしているわけ」

 意外にも、コルタナさんから声をかけたそうだ。

「二〇〇年も生きていると、羞恥とは無縁になっちゃうのよね。トラブルどんとこいなワケ」

 当時を振り返り、コルタナさんはコロコロと笑う。

「オレはツヨシと同じで、脱サラ組だな。ツヨシみたいにブラック企業に嫌気が差したーってわけじゃなくて、親父の事業を継いだだけで終わりたくなかったんだ」

 ボンボンさんだったのか、センディさんは。

 センディさんは冒険者になる際に、事業を父親の部下に一任したらしい。会社が残ることこそ大事だったので、会社を大事にしてくれる人材を社長に任命したのだ。

「で、スケルトンキングを倒した縁で、オレたちは正式にパーティを組んだんだよ」

「といっても、やっつけちゃったのはツヨシとワラビちゃんなんだけど……ツヨシ、質問が来たわ。ワラビちゃんに」

 ワラビに、質問が来ている。
 ボクたちは、雑談を打ち切った。

 
『【ワラビ】ちゃんは、かんじでかくと、どんな字ですか?』

 
 質問者は、小学生かな? 漢字が少ない。

「ワラビは本来、【蕨】と書きます。ですがマスターツヨシは『かわいくないっ』と一蹴し、【和楽美】と当て字を用いて登録していますね」

 質問者は納得したのか、「ありがとうございました」と丁寧にあいさつをして退席した。

 コメント返信でわかったけど、どうもワラビは小さい子どもに人気があるらしい。
 

『マスターのどんなところがスキ?』

 
「ワタシのようなモンスター相手でも、対等の関係を望むところです」 

 そこは、ボクも意識しているところだ。
 

『どんな食べ物がスキ?』

 
「マスターツヨシが発生させる、『アミロイドβ』です」

 それって、認知症を誘発する物質だよね?

「実はワタシ、マスターツヨシが寝ている間に、アミロイドβを除去しております」

「そうなんだ」

「はい。口の中に忍び込んで」

 マジで!?

「マスターツヨシの口内に分身を浸透させ、歯の磨き残しや老廃物を取り込むのです。ワタシはその間にマスターツヨシをマッサージして、リンパを流しております」

 だから、毎朝快適に過ごせいたんだな。

「中でも、マスターツヨシのアミロイドβは、かなりの味でして」

 これ以上はホラーになりそうだ。コメントも若干引いているな。 
  
  
『うちで飼ってる使い魔は、しゃべらないんだけど? ちなウルフ』

 
「オオカミを使役していらっしゃるのですね? 使い魔としてこういう言い方をしてしまうのも問題かと思いますが、コミュニケーションの仕方が関係しているのかもしれません」

 ボクとワラビは、パートナーとして対等の立場で過ごしている。
 対して、コメントの文面からして、質問者は使い魔にペットのポジションを望んでいるようだ。

「会話が必要か、にもよりますね。ペットという関係がいいなら、それでもOKかと。十分、信頼関係を築けていると思いますよ」

 
『ありがとう。パートナーは妻がいるので、ペットとして扱いたい。でも、家族とは思っているよ』

 
 なるべく質問者を刺激しないように、ワラビは相手を尊重する話し方をした。
 そんな気遣いができるなんて。
 ボクが答えていたら、きっと角が立っていただろう。


『マスターに質問、なんかワラビちゃん、大きくなってない?』


「そうなんですよ。このアパートも、手狭になってきました」

 ワラビは最初こそ枕サイズの大きさだったが、今ではソファくらいに成長している。

「もうちょっとお金が貯まったら、引っ越そうかと。ではいい時間なので、コメント返信と質疑応答はまた次回。さよならー」
 


 だが翌日、ボクたちは引っ越すことになった。
 農地を開拓していいことになったのである。

 開拓はギルドからの依頼だ。
 とはいえ土地を用意してくれたのは、センディさんたちである。

(第一章 完)
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。

しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。 しかし―― 彼が切り捨てた仲間こそが、 実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。 事実に気づいた時にはもう遅い。 道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。 “荷物持ちがいなくなった瞬間”から、 アレクスの日常は静かに崩壊していく。 短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。 そんな彼と再び肩を並べることになったのは―― 美しいのに中二が暴走する魔法使い ノー天気で鈍感な僧侶 そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。 自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。 これは、 “間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる” 再生の物語である。 《小説家になろうにも投稿しています》

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

処理中です...