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第四章 配信上位勢の仲間入り!?

第26話 スライム・ファーマー

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 ギルドに戻って、【スライム・ファーマー】の説明を聞く。ステータス画面でも『農作業のできるスライム』と、抽象的にしか書かれていなかったからだ。

「こんばんは、石田イシダさん。スライムファーマーの説明をお願いします」

 ギルドの受付お姉さんに、ヒヨリさんがピオンを差し出す。

「わかりました、ヒヨリさん。確認いたします」

 受付のお姉さんって、石田さんって名前なんだ。石田さんはボクたち冒険者を相手にしても、いつもバッチリメイクをして対応する。疲れている顔なんて、まったく見せない。

「ピオンさん、こちらへー」

 石田さんが、ピオンを撫で回す。

「ツヨシさんのワラビさんもプルプルしてかわいいですが、こちらのピオンさんもなかなかスベッスベで」

 ワラビはスイカくらいの大きさで、ピオンはメロンくらいだ。なのに、重さを感じさせない。ちょっとぐらつく程度である。

「わかりました」

「もう?」

「ええ。もともとピオンさんは、非戦闘系のスライムですね。どちらかというと、探索系のスライムちゃんです」

「スライムにも、色々あるんですね?」

「はい。どのような冒険者がテイムするかで、モンスターの性能って決まるみたいなんです。主の足りない性能を補うタイプになるべきか、補強するか」

 じゃあ、ワラビはボクの戦闘力を補ってくれるタイプに進化したわけか。

「ピオンさんの場合、ヒヨリさんの手や足が届かない場所の探索を得意としています。とりあえず拾ってきて、必要なら主に渡す。不要なら、自分で食べる。そんな感じですね」

「なるほど……」

 なぜか、ヒヨリさんの表情がわずかに曇った。

「ファーマーのすごいところは、排泄物から薬草・キノコなどのアイテムを生産できることです。農作物に、薬効を付与することも可能ですよ」

 すごい。身体にいいシチューとか、作れそう。

「わたしもピオンも、戦闘には向かないんですね」

 ヒヨリさんは、ちょっと落ち込んだ。本格的に、自分が戦闘で役に立たないと理解してしまったからだろう。

「あの、石田さん。ボクのパーティって、まだ空きがありましたよね?」

「はい。まだまだ全然増員できますよ」

 よかった。だったら。

「ヒヨリさん、ボクとパーティを組みましょう」

「え、でも上層階を攻略するんですよね? ご迷惑なんじゃ」

「大丈夫。今は武器を開発中で、今は素材を集めているところなんだ。探索系がいてくれると心強い。それに、畑をお世話してくれる人がいると助かる」

 アイテム探しに関しても、ボクは勘に頼っている。ワラビも、味見しないと鑑定ができない。

「ナンパみたいで気持ち悪いって言うなら、いいけど」

「ありがたいです! わたし、あなたのお役に立ちたいです」

「こちらこそ、ありがとう」

 早速、石田さんに付き添ってもらってパーティ登録を終える。

「よかったです。ワタシも、ポーションに助けていただいた恩を返せそうです」

「ワラビさん、そんな」

 ヒヨリさんは、ワラビに感謝されて照れた。

「なにか、乗り物は持ってる? ボクの畑を見せようと思うんだけど」

 ボクの家は、結構遠い。

「父に連絡して、車を出してもらいます」

 ヒヨリさんがスマホで、実家に連絡を入れる。

 数分後、軽ワゴンがギルドの駐車場に到着した。黒服のお姉さんが降りてきて、ヒヨリさんにあいさつをする。

「女の子っぽくない車でしょ?」

 黒服のお姉さんからキーを受け取って、ヒヨリさんが苦笑いをした。

「いやいや。実用的だなって」

 フレームがピカピカで、愛用されてるんだなとわかる。カラーリングも落ち着いていて、女の子っぽい。お嬢様だから、てっきりオープンカーとか思ったけど。

「ヒヨリさん、運転できるんだね」

「一応、成人しているので」

 免許証を見せてもらう。二三歳と書いていた。

「てっきり、高校生くらいかと思った」

「だから話しかけるのをためらっていらしたんですね? これでも、大学を卒業した社会人です」

 大学へも、車で移動していたという。

「父ったら、自分の軽トラックを譲ろうとしたんですよ? わたしの通学用にって。冗談じゃないと思いました。マニュアルは運転できるけど、軽トラはないわーって」

 家からは森ダンジョンが一番近かったので、徒歩で通っていたらしい。

「では、まいりましょう」

 ヒヨリさんの借りているお家は、ボクの家の近所だった。

「おかえ……センディ、ちょっと来て!」

 ボクたちを見て、コルタナさんが大慌てでセンディさんを呼びに行く。

「何事よ……あらまあ」

 寝間着姿で、メイヴィス姫が軒先に現れる。ボクとヒヨリさんを見て、何度もうなずく。

「どうしたってんだよ、コルタナ? おお、ツヨシが女連れとは」

 センディさんが、ボクたちを見てニヤニヤした。

「女連れって! こちらは、ヒヨリさん。今日から、こちらの畑をお世話してくれる方です」

 ボクが紹介をして、ヒヨリさんが頭を下げる。

「ヒヨリです。よろしくお願いします」

 コルタナさんが、ヒヨリさんの顔を覗き込んだ。

「あなた、ひよこ印ポーションの人よね?」

「ご存知ですか?」

「だって、ポーションのPOPには、製造者の写真を貼ることが義務付けられているもの」

 やっぱり、ヒヨリさんって回復職の間では有名だったらしい。
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