底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった

椎名 富比路

文字の大きさ
41 / 71
第五章 底辺配信者 対 魔族三人衆!

第41話 魔王からのコメント スパチャ付き

しおりを挟む
 魔王ルクシオからのコメントが、ボクの攻略動画についていた。カギ探しイベントの時だ。

『ここに気づくとは、さすがだな』
『しかし、余の配下は強い』
『勝てると思うな』
『テイムのスライムかわいい。ほしい。部下のスライムよりかわいい』

 まあ、偉そうだよね。ワラビって、魔王にまで人気なんだ。

「ご丁寧に、スパチャまで送ってきやがって」

【スーパーチャット】、いわゆる投げ銭として、五〇万円をくれていた。冒険者の動画サイトでは、一日に飛ばせるスパチャの最高額である。

「ギルドで対策を練ってもらおうぜ」

「はい」

 コメントの件は、ギルドに一任した。
 今日は一日、作戦会議をすることに。

「昨日に報告があった後、ツヨシさんの動画に魔王からのコメントがないかどうか、探知AIに探させました」

 石田さんから、そう報告を受けた。

 魔王からのアカウントから、居所などを探知できないかどうか、探ったという。

「ですが、巧妙な技術で潜伏先を特定できません」

 書き込み先を検索しても、近所のネカフェにつながるらしい。それも、人間の冒険者ばかり。

「三ヶ月前から、粘着していたコメントが発見されました。私は不愉快だったので、ミュートしていましたね。すいません」

「ミュートは、当然のことでしょう。石田さんがあやまることなんて、ありませんよ」

 コメントに結界を張ってギルドからのハッキングを阻害しているか、配下に書かせているかだという。

 コメントを打った冒険者に共通点はないか、現在も調査中らしい。

「では、スーパーチャットの代金として、五〇万円を」

 五〇万円を、石田さんはポンと差し出した。

 動画配信サイトと違って、冒険者の配信では課税されない。ギルドなどの運営から、天引きもされない。額面通り、もらうことができる。それらすべての手数料・税金などは、送り主が払ってくれているからだ。

 つまり魔王は、五〇万以上を払っている計算になる。

「この五〇万、魔王に返したいんですが」

 敵からの餞別なんて、いただけない。

「では、パークボスの三人に渡せばいいのでは?」

 魔王へ直接アクセスはできない。

「パークに潜んでいる魔族三人を倒せば、魔王の居所もつかめるでしょう」

「マスターツヨシ、律儀にお返ししなくてもいいのです」

「でも、こんな高額のスパチャを、よりによって魔族からもらうなんて」

「いいじゃないですか。もらっておいても。なにも、ワイロではありません」

 ワイロなら、もっと高額になってくるだろうと、ワラビは語る。それこそ、五〇〇〇万円くらいだと。お金の話になると、案外シビアだね、ワラビって。

「ツヨシさん、あくまでも、お金はお金です。受け取るのを悪く思う必要は、ありません」

 無下に断っては、かえって失礼ではとのこと。

「そうですね。では、それまで五万円だけ、預かっておきますね」

 ボクは五万円を、財布にしまう。

 一般的な動画サイトでの、スーパーチャットの上限額だ。

 残りの四五万円は、返そうかな。

「姫様は、魔王ルクシオって見たことないんですよね?」

 ボクが問いかけると、メイヴィス姫もコルタナさんも首をかしげた。

「ええ。実物は、見たことがないのよ」

 だから役に立てないと、姫が石田さんに詫びる。

「頭をお上げください」

「ええ。でも、伝説級の魔王ってことは、わかっているの」

 歴史資料館にも、魔王の姿は載っていた。でも、どれも抽象的でハッキリしない。龍っぽかったり、幽霊みたいだったり。

「実質、勇者が戦ったのは、黒い勇者の方なの」

「そっちのほうが、有名ですよね。死闘だったと」

「そうなの。魔王っていわゆる神様みたいな存在だから、直接手を下すと世界の時空が歪んじゃうレベルなのよ。だから黒い勇者を従えて、代理で戦わせるの」

 黒い勇者か。

「こちらですね」

 ワラビが、石田さんから紙とボールペンをもらった。ペンを取って、スラスラとイラストを描く。

「絵もうまいんだね、ワラビって」

「そうでもありません。幼い子どものラクガキみたいです」

「うまいよー。ボクなんて、ここまで再現できないよ」

 全然、歴史資料を見ていなかった証拠だね。

「ちゃんと歴史までチェックしているワラビは、エラいよ」

「ありがとうございます。では描けましたので」

 黒いヨロイを着た棒人間と、赤いヨロイを着た棒人間が戦っている。

「まさしく、伝説の勇者と、魔王に仕える黒い勇者との戦いを物語っているわ」

 メイヴィス姫が、イラストを見てうなった。

「これ、ツヨシさんとワラビさんみたいですね」

「ほんとだー。ツヨシとワラビー」

 ヒヨリさんとピオンが、赤い棒人間を指差す。

「これは、勇者よね」

「はい」

 コルタナさんの言葉に、ワラビが反応する。

 勇者の方は、まるでワラビを着ているみたいだ。

「異世界でも話題になったのよ。あなたのこと」

「ボクが?」

「ええ。勇者の再来なんじゃないかって」

「うーん。動画の話でしょ?」

 いくらなんでも、こじつけだろう。

「でも、忘れないで。だからこそ、あたしはあなたを追ってきたのよ?」

 メイヴィス姫が、真剣な目でボクを見る。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。

しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。 しかし―― 彼が切り捨てた仲間こそが、 実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。 事実に気づいた時にはもう遅い。 道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。 “荷物持ちがいなくなった瞬間”から、 アレクスの日常は静かに崩壊していく。 短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。 そんな彼と再び肩を並べることになったのは―― 美しいのに中二が暴走する魔法使い ノー天気で鈍感な僧侶 そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。 自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。 これは、 “間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる” 再生の物語である。 《小説家になろうにも投稿しています》

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

処理中です...