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第六章 最終決戦 黒い勇者との戦い
第52話 引退か、継続か
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冒険に、もう出なくていいだって?
ボクは、ヒヒイロカネの表面を手で触れる。
ミスリルより強い魔力を、この盾から感じた。
「だから、お前さんはワラビと楽しく過ごせる。もう、危ない目に遭う必要もない」
でもセンディさんは、真顔で告げた。ヒヒイロカネを売却すれば、一生かかっても使い切れないほどのお金になると。
ミスリルでは、そこまでの暮らしはできない。ちょっと贅沢ができる程度だろうとのこと。
そのときは魔王との戦闘もあったし、戦闘の準備として必要だった。
「そうね。あなたはがんばったんですもの。引退を考えてもいい頃合いよ」
メイヴィス姫まで、センディさんと同じように、ボクに引退を勧めてくる。
たしかにボクは、ワラビにムチャをさせすぎた。正直ボク自身も、当分冒険はムリだろう。身体のあちこちに、ガタが来ていた。
ワラビも、まだ魔王戦の傷が癒えていない。
引退することも、視野に入れる必要があった。
「みなさんは、どんな特典が?」
頭を切り替えるために、ボクは話題をそらす。
「オレたちには、お前さんと同じミスリル銀の盾をもらったぜ」
ピンク色の盾を、センディさんが見せてきた。
「これで、刀を打ち直す。そしたらまた冒険に出るぜ」
「さっそく溶かして、新しい杖に作り替えたわ」
コルタナさんのもとにも、銀の盾が届いたらしい。
「わたしのところにも、銀色の盾が来ました。辞退しようとしたら、さっそくピオンが半分食べちゃって」
ワラビにインスパイアされたピオンが、同じ行動を取ったのか。
「残ったミスリルは、センディさんの鍛冶スキルでヨロイにしてもらいました」
やや露出が増えたけど、シャーマンらしい清楚なデザインである。
「あたしは、聖剣をたまわったわ。コンラッドがまた強くなったわよ」
メイヴィス姫は、ようやく王国に地球への滞在を認められたらしい。
『これでまた、我は国に奉仕できる』
聖剣を掲げながら、コンラッドがうっとりする。
みんなもう、次のダンジョン攻略を考えていた。
「それでね、ツヨシ。王国では、あなたを名誉国民にしようって話が出ているの」
「名誉国民とは?」
「異世界に土地を与えて、住んでもらおうか、って」
ボクだけの土地が、異世界にできるのか。
夢みたいな話だ。
「でも、ツヨシは既にこっちの土地があるでしょ? 愛着もあるだろうって提案して、保留にしてもらっているの」
ボクたちみたいな強い冒険者を囲んでおきたい思惑も、王国の側近にはあるらしい。姫の提案は、その事態を回避するためでもあった。国王も、同意見だという。
「あなたは、どうしたいの?」
メイヴィス姫から、質問がくる。
ボクは、どうだろう?
異世界で暮らすっていう話は、たしかに面白そうだ。一度行ってみるのも、いいかもしれない。
ただ、こっちにも未練がある。異世界の方も、管理しきれるかどうかわからない。
話が大きくなりすぎて、こんがらがってしまった。
「いいんですかね?」
「それだけのことを、あなたとワラビちゃんは成し遂げたの。我々王国としても、感謝しきれないわ」
とはいえギルドとしては、これ以上ボクとワラビに依存してしまうのはどうかと考えているらしい。他の冒険者が育たないからだ。
引退の打診も、その考えがあるという。
「ちょっと、考えさせてください」
しばらくダンジョン冒険をお休みして、ボクは休息することにした。
畑の雑草をむしって、土を耕す。
ほとんどそれも、ワラビがやってくれるんだけど。
ダンジョン冒険をしない生活なんて、実感したことがなかったからである。
冒険に出るのが、イヤになったわけじゃない。でも一度ダンジョンから離れてみて、自分を見つめ直すのもいいかも、と。
みんなは変わらず、冒険に出ている。
コルタナさんは休暇を取って、メイヴィス姫と日本のグルメを満喫した。二人からすれば、日本を堪能するほうが冒険だ。
センディさんは、ミスリルを打っている。
同じスライムテイマーであるヒヨリさんは、ダンジョンで薬草を採取してポーションに加工する業務を再開した。
今も、ピオンと一緒に支度をしている。
「手伝おうか?」
ボクは立ち上がった。
「大丈夫です、ツヨシさん。一層の浅いところへ向かうので、お構いなく」
「わかったよ」と、ボクは座りなおす。
「ありがとうございます。じゃあ、行ってきます。お昼は、冷蔵庫に入っていますから」
「ヒヨリさん、ありがとう。いってらっしゃい」
ふたりとも強くなったので、薬草取りもソロで向かっている。
ボクは、みんなのゴハンを作る担当に。さっそく、夕飯の下ごしらえを済ませた。
「ワラビ、一休みしよう」
誰もいない家の軒下で日向ぼっこしながら、ワラビと温かいお茶をたしなむ。
「平和になりましたね」
「ダンジョンを攻略していたときでは、考えられないよ。こんなのんびりとした生活は」
「あなたが勝ち取った生活です。楽しみましょう」
お昼ゴハンは、ヒヨリさんが用意してくれたおにぎりである。特製のタクアンには、ポーションのようなリラックス効果もあるらしい。すごいものを作っているなあ。
「どうしよう、ワラビ?」
おにぎりをあげながら、ワラビに問いかける。
「マスターツヨシの中では、答えは決まっていますよね?」
「う、やっぱり見抜かれていたんだね」
「ワタシは、マスターツヨシのテイムモンスターですから」
ワラビが、ウフフと笑う。
「センディさん」
ボクは、ミスリルを刀に加工しているセンディさんに、金の盾を差し出す。
「これで、剣を作ってください」
ヒヒイロカネの盾は、半分になっている。
ワラビが食べたのだ。
ボクは、ヒヒイロカネの表面を手で触れる。
ミスリルより強い魔力を、この盾から感じた。
「だから、お前さんはワラビと楽しく過ごせる。もう、危ない目に遭う必要もない」
でもセンディさんは、真顔で告げた。ヒヒイロカネを売却すれば、一生かかっても使い切れないほどのお金になると。
ミスリルでは、そこまでの暮らしはできない。ちょっと贅沢ができる程度だろうとのこと。
そのときは魔王との戦闘もあったし、戦闘の準備として必要だった。
「そうね。あなたはがんばったんですもの。引退を考えてもいい頃合いよ」
メイヴィス姫まで、センディさんと同じように、ボクに引退を勧めてくる。
たしかにボクは、ワラビにムチャをさせすぎた。正直ボク自身も、当分冒険はムリだろう。身体のあちこちに、ガタが来ていた。
ワラビも、まだ魔王戦の傷が癒えていない。
引退することも、視野に入れる必要があった。
「みなさんは、どんな特典が?」
頭を切り替えるために、ボクは話題をそらす。
「オレたちには、お前さんと同じミスリル銀の盾をもらったぜ」
ピンク色の盾を、センディさんが見せてきた。
「これで、刀を打ち直す。そしたらまた冒険に出るぜ」
「さっそく溶かして、新しい杖に作り替えたわ」
コルタナさんのもとにも、銀の盾が届いたらしい。
「わたしのところにも、銀色の盾が来ました。辞退しようとしたら、さっそくピオンが半分食べちゃって」
ワラビにインスパイアされたピオンが、同じ行動を取ったのか。
「残ったミスリルは、センディさんの鍛冶スキルでヨロイにしてもらいました」
やや露出が増えたけど、シャーマンらしい清楚なデザインである。
「あたしは、聖剣をたまわったわ。コンラッドがまた強くなったわよ」
メイヴィス姫は、ようやく王国に地球への滞在を認められたらしい。
『これでまた、我は国に奉仕できる』
聖剣を掲げながら、コンラッドがうっとりする。
みんなもう、次のダンジョン攻略を考えていた。
「それでね、ツヨシ。王国では、あなたを名誉国民にしようって話が出ているの」
「名誉国民とは?」
「異世界に土地を与えて、住んでもらおうか、って」
ボクだけの土地が、異世界にできるのか。
夢みたいな話だ。
「でも、ツヨシは既にこっちの土地があるでしょ? 愛着もあるだろうって提案して、保留にしてもらっているの」
ボクたちみたいな強い冒険者を囲んでおきたい思惑も、王国の側近にはあるらしい。姫の提案は、その事態を回避するためでもあった。国王も、同意見だという。
「あなたは、どうしたいの?」
メイヴィス姫から、質問がくる。
ボクは、どうだろう?
異世界で暮らすっていう話は、たしかに面白そうだ。一度行ってみるのも、いいかもしれない。
ただ、こっちにも未練がある。異世界の方も、管理しきれるかどうかわからない。
話が大きくなりすぎて、こんがらがってしまった。
「いいんですかね?」
「それだけのことを、あなたとワラビちゃんは成し遂げたの。我々王国としても、感謝しきれないわ」
とはいえギルドとしては、これ以上ボクとワラビに依存してしまうのはどうかと考えているらしい。他の冒険者が育たないからだ。
引退の打診も、その考えがあるという。
「ちょっと、考えさせてください」
しばらくダンジョン冒険をお休みして、ボクは休息することにした。
畑の雑草をむしって、土を耕す。
ほとんどそれも、ワラビがやってくれるんだけど。
ダンジョン冒険をしない生活なんて、実感したことがなかったからである。
冒険に出るのが、イヤになったわけじゃない。でも一度ダンジョンから離れてみて、自分を見つめ直すのもいいかも、と。
みんなは変わらず、冒険に出ている。
コルタナさんは休暇を取って、メイヴィス姫と日本のグルメを満喫した。二人からすれば、日本を堪能するほうが冒険だ。
センディさんは、ミスリルを打っている。
同じスライムテイマーであるヒヨリさんは、ダンジョンで薬草を採取してポーションに加工する業務を再開した。
今も、ピオンと一緒に支度をしている。
「手伝おうか?」
ボクは立ち上がった。
「大丈夫です、ツヨシさん。一層の浅いところへ向かうので、お構いなく」
「わかったよ」と、ボクは座りなおす。
「ありがとうございます。じゃあ、行ってきます。お昼は、冷蔵庫に入っていますから」
「ヒヨリさん、ありがとう。いってらっしゃい」
ふたりとも強くなったので、薬草取りもソロで向かっている。
ボクは、みんなのゴハンを作る担当に。さっそく、夕飯の下ごしらえを済ませた。
「ワラビ、一休みしよう」
誰もいない家の軒下で日向ぼっこしながら、ワラビと温かいお茶をたしなむ。
「平和になりましたね」
「ダンジョンを攻略していたときでは、考えられないよ。こんなのんびりとした生活は」
「あなたが勝ち取った生活です。楽しみましょう」
お昼ゴハンは、ヒヨリさんが用意してくれたおにぎりである。特製のタクアンには、ポーションのようなリラックス効果もあるらしい。すごいものを作っているなあ。
「どうしよう、ワラビ?」
おにぎりをあげながら、ワラビに問いかける。
「マスターツヨシの中では、答えは決まっていますよね?」
「う、やっぱり見抜かれていたんだね」
「ワタシは、マスターツヨシのテイムモンスターですから」
ワラビが、ウフフと笑う。
「センディさん」
ボクは、ミスリルを刀に加工しているセンディさんに、金の盾を差し出す。
「これで、剣を作ってください」
ヒヒイロカネの盾は、半分になっている。
ワラビが食べたのだ。
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