59 / 71
最終章 ドラゴンとの生配信バトル
第59話 この戦いが終わったら……
しおりを挟む
「よろしいのですか、マスターツヨシ? 戦闘データを取りに来たのでは、ないのですか?」
ワラビの頭は、常に戦闘モードに最適化されているらしい。今回の水族館デートも、戦闘データ採取のつもりだったのだろう。
「今日は、ただのデートだよ。肩の力を抜いて、海の生き物たちを鑑賞していればいいんだ」
ダンジョン攻略のことは、脇においておく。
「心得ました。マスターツヨシ」
ワラビは常に、ボクの役に立つ方法を考えてくれている。
でも、今日はもういいんだ。
「いつもありがとう、ワラビ。今日はさ、頭を空っぽにして、水族館をお散歩しようか」
「はい、マスターツヨシ。実にリラックスした時間を、過ごさせていただいています」
最後は予約したレストランで、夕飯を食べる。モンスター同伴OKのレストランなんて、初めて見たよ。
「本日のメインは、サバとリゾットのテリーヌでございます」
お魚を見に行ったのに、メインがお魚になっちゃった。
「お肉だったはずですよね?」
ボクは、ウエイターに質問をする。
「申し訳ございません。メインで出すはずのお肉が、お取り寄せできなくなりまして」
急な予定が入ったらしく、メインの肉料理はそちらに回ったらしい。
なんとも気まずい空気が、ボクとヒヨリさんの間に漂う。
「こういうときも、ありますよね?」
明るい声で、ヒヨリさんがフォローを入れてくれた。
「そうですよ。気にせず食べましょう」
シケた考えは、やめだ。ヒヨリさんと、ディナーを楽しむ。
「夜景が、キレイですね」
ヒヨリさんが、窓の向こうの景色を見つめていた。
街の明かりが、散りばめた宝石みたいだ。
「月も、あんなに丸く。まるで、ワラビみたいだ」
ボクは、ワラビと見つめ合う。
「マスターツヨシ、『月がきれい』という言葉は、本来想い人に送る言葉でして……」
「解説はいいよ。いつも、ありがとう。頼りになるよ、ワラビ」
「お役に立てて光栄です。マスターツヨシ」
帰る時間となり、ボクはヒヨリさんを家の近くまで送った。
「あの、ツヨシさん。ドラゴンとの戦いが終わったら」
「ヒヨリさん、やめましょう。それって死亡フラグなんで」
「そう、そうですよね! やめましょう」
苦笑いを浮かべながら、ヒヨリさんが家まで駆けていこうとする。
「あの!」
ボクは、ヒヨリさんを呼び止めた。
ヒヨリさんが、振り返る。
「どんなことがあっても、ボクの気持ちは変わりません」
「ありがとう、ツヨシさん」
「では、明日またダンジョンで」
「はい。またダンジョンでおちあいましょう」
翌日以降、決戦の時まで、ボクらは高難易度のダンジョン「七層」を往復した。アイテムドロップのためだ。
場所は、水族館からも近い遺跡である。
朝早くダンジョンへ赴いては、ヒヨリさんたちの力を借りて探索を繰り返す。
主に戦闘技術の向上と、防御面の強化のためである。
「てやあ!」
ボクはヒヒイロカネの剣をふるい、グレーターデーモンの首をはねた。
「マスターツヨシ、後ろにもう一体」
「ワラビ、任せた!」
ボクはワラビに指示を出し、グレーターデーモンの攻撃を誘う。
ワラビがカウンターで、デーモンの魔法攻撃を跳ね返す。ワラビもヒヒイロカネで強化されているため、最上位デーモンの攻撃魔法も意に介さない。
高威力の魔法とはいえ、デーモンには通じなかった。
「肉弾戦だ、ワラビ!」
「承知」
短く返答をして、ワラビが刃の形に変わる。ヒヒイロカネの刃と化したワラビが、袈裟斬りでグレーターデーモンを切りつけた。
両断されたデーモンが、アイテムをドロップしてチリとなる。
ヒヒイロカネの剣は、たしかに切れ味が鋭い。しかし、持ち手がボクではどうしてもポンコツ化してしまう。強力な防具が必要だ。盾ではなく、全身を包むヨロイが。
なので、強いモンスターが出てくるダンジョンを頻繁に訪れ、モンスターの素材をゲットしていく。
素材を加工しては、ヨロイへ改造するのだ。
メイヴィス姫も、グレーターデーモン相手に激闘を繰り広げた。
「七層が通過点だなんて、当時のあたしたちでは考えられなかったわね」
もはやメイヴィス姫も、コンラッドと同化せずに上位デーモンを打倒できる。
「お見事です、姫様」
「あんたほどではないわ、コルタナ」
「ですが、ドラゴンなどに勝てる気が、どうしても湧き出てきません」
「やるしかないわ。ひたすら、自力をつけるのよ」
デーモンから手に入れたアイテムを、ギルドへ持ち帰る。
とはいえ、劇的に強くなっていくのはセンディさんたちばかり。
「悪いな。いい素材をオレたちに回してもらって」
「構いません。ボクにはワラビという、最強の壁役がいますから」
七層程度のアイテムでは、ボクやワラビにとって強化に値しないのだ。
「申し訳程度の、強化にしかならないわね」
コルタナさんも、危機感をあらわにする。
ボクは防御を、ほとんどワラビに頼っていた。それが、今になって深刻になっている。
相手はドラゴンだ。魔王さえ一撃で消し飛ばす苛烈な攻撃を、ワラビだけで防ぎきれる保証はない。
ボクが強くなる必要があるのだ。
とにかく決戦の日まで、やれるだけのことをする。
「八層に向かいましょう」
メイヴィス姫が、提案をする。
ワラビの頭は、常に戦闘モードに最適化されているらしい。今回の水族館デートも、戦闘データ採取のつもりだったのだろう。
「今日は、ただのデートだよ。肩の力を抜いて、海の生き物たちを鑑賞していればいいんだ」
ダンジョン攻略のことは、脇においておく。
「心得ました。マスターツヨシ」
ワラビは常に、ボクの役に立つ方法を考えてくれている。
でも、今日はもういいんだ。
「いつもありがとう、ワラビ。今日はさ、頭を空っぽにして、水族館をお散歩しようか」
「はい、マスターツヨシ。実にリラックスした時間を、過ごさせていただいています」
最後は予約したレストランで、夕飯を食べる。モンスター同伴OKのレストランなんて、初めて見たよ。
「本日のメインは、サバとリゾットのテリーヌでございます」
お魚を見に行ったのに、メインがお魚になっちゃった。
「お肉だったはずですよね?」
ボクは、ウエイターに質問をする。
「申し訳ございません。メインで出すはずのお肉が、お取り寄せできなくなりまして」
急な予定が入ったらしく、メインの肉料理はそちらに回ったらしい。
なんとも気まずい空気が、ボクとヒヨリさんの間に漂う。
「こういうときも、ありますよね?」
明るい声で、ヒヨリさんがフォローを入れてくれた。
「そうですよ。気にせず食べましょう」
シケた考えは、やめだ。ヒヨリさんと、ディナーを楽しむ。
「夜景が、キレイですね」
ヒヨリさんが、窓の向こうの景色を見つめていた。
街の明かりが、散りばめた宝石みたいだ。
「月も、あんなに丸く。まるで、ワラビみたいだ」
ボクは、ワラビと見つめ合う。
「マスターツヨシ、『月がきれい』という言葉は、本来想い人に送る言葉でして……」
「解説はいいよ。いつも、ありがとう。頼りになるよ、ワラビ」
「お役に立てて光栄です。マスターツヨシ」
帰る時間となり、ボクはヒヨリさんを家の近くまで送った。
「あの、ツヨシさん。ドラゴンとの戦いが終わったら」
「ヒヨリさん、やめましょう。それって死亡フラグなんで」
「そう、そうですよね! やめましょう」
苦笑いを浮かべながら、ヒヨリさんが家まで駆けていこうとする。
「あの!」
ボクは、ヒヨリさんを呼び止めた。
ヒヨリさんが、振り返る。
「どんなことがあっても、ボクの気持ちは変わりません」
「ありがとう、ツヨシさん」
「では、明日またダンジョンで」
「はい。またダンジョンでおちあいましょう」
翌日以降、決戦の時まで、ボクらは高難易度のダンジョン「七層」を往復した。アイテムドロップのためだ。
場所は、水族館からも近い遺跡である。
朝早くダンジョンへ赴いては、ヒヨリさんたちの力を借りて探索を繰り返す。
主に戦闘技術の向上と、防御面の強化のためである。
「てやあ!」
ボクはヒヒイロカネの剣をふるい、グレーターデーモンの首をはねた。
「マスターツヨシ、後ろにもう一体」
「ワラビ、任せた!」
ボクはワラビに指示を出し、グレーターデーモンの攻撃を誘う。
ワラビがカウンターで、デーモンの魔法攻撃を跳ね返す。ワラビもヒヒイロカネで強化されているため、最上位デーモンの攻撃魔法も意に介さない。
高威力の魔法とはいえ、デーモンには通じなかった。
「肉弾戦だ、ワラビ!」
「承知」
短く返答をして、ワラビが刃の形に変わる。ヒヒイロカネの刃と化したワラビが、袈裟斬りでグレーターデーモンを切りつけた。
両断されたデーモンが、アイテムをドロップしてチリとなる。
ヒヒイロカネの剣は、たしかに切れ味が鋭い。しかし、持ち手がボクではどうしてもポンコツ化してしまう。強力な防具が必要だ。盾ではなく、全身を包むヨロイが。
なので、強いモンスターが出てくるダンジョンを頻繁に訪れ、モンスターの素材をゲットしていく。
素材を加工しては、ヨロイへ改造するのだ。
メイヴィス姫も、グレーターデーモン相手に激闘を繰り広げた。
「七層が通過点だなんて、当時のあたしたちでは考えられなかったわね」
もはやメイヴィス姫も、コンラッドと同化せずに上位デーモンを打倒できる。
「お見事です、姫様」
「あんたほどではないわ、コルタナ」
「ですが、ドラゴンなどに勝てる気が、どうしても湧き出てきません」
「やるしかないわ。ひたすら、自力をつけるのよ」
デーモンから手に入れたアイテムを、ギルドへ持ち帰る。
とはいえ、劇的に強くなっていくのはセンディさんたちばかり。
「悪いな。いい素材をオレたちに回してもらって」
「構いません。ボクにはワラビという、最強の壁役がいますから」
七層程度のアイテムでは、ボクやワラビにとって強化に値しないのだ。
「申し訳程度の、強化にしかならないわね」
コルタナさんも、危機感をあらわにする。
ボクは防御を、ほとんどワラビに頼っていた。それが、今になって深刻になっている。
相手はドラゴンだ。魔王さえ一撃で消し飛ばす苛烈な攻撃を、ワラビだけで防ぎきれる保証はない。
ボクが強くなる必要があるのだ。
とにかく決戦の日まで、やれるだけのことをする。
「八層に向かいましょう」
メイヴィス姫が、提案をする。
0
あなたにおすすめの小説
荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。
しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。
しかし――
彼が切り捨てた仲間こそが、
実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。
事実に気づいた時にはもう遅い。
道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。
“荷物持ちがいなくなった瞬間”から、
アレクスの日常は静かに崩壊していく。
短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。
そんな彼と再び肩を並べることになったのは――
美しいのに中二が暴走する魔法使い
ノー天気で鈍感な僧侶
そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー
かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。
自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。
これは、
“間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる”
再生の物語である。
《小説家になろうにも投稿しています》
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~
名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。
スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~
みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。
追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~
風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる