底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった

椎名 富比路

文字の大きさ
68 / 71
最終章 ドラゴンとの生配信バトル

第68話 最終話 これからも

しおりを挟む
 ボクの耳元で、ヒヨリさんがつぶやく。

「ツヨシさんの背中って、優しさで溢れています。『オレについて来い』ってタイプじゃなくて、守ってあげたいタイプですね」

 ヒヨリさんが、ボクの背中を撫でる。

 ちょっとくすぐったくて、心地いい。

「ずっとお礼がしたかったんです。ツヨシさん、ありがとう」

「そんな。ボク、ヒヨリさんにお礼を言ってもらうことなんて」

「こんな弱いわたしを、パーティに入れてくれて」

 他の冒険者では、相手にもしてもらえなかったという。

「これからもずっと、一緒にいてください」

 お風呂場で、プロポーズを受けるなんて。

「はい」

 とはいえ、ボクの心は決まっている。

「おめでとうございます、マスターツヨシ」

「おめー」

 ワラビとピオンも、祝福してくれる。
 


「ではみなさん、ありがとうございます」

「礼を言うのは、こっちだぜ。楽しかったよ」

 ショウトウルが、握手を求めてきた。

 ボクも手を差し出して、応じる。

「次は新婚旅行のときにでも、おいでよ」

「ランさん!」

「あはは。またな」

 ショウトウル夫妻に見送られて、ボクたちはドラゴンの里を後にした。


 後日、さっそくドラゴン装備を試す。

 六層あたりで、試してみた。

 グレーターデーモンを、相手にする。

「ワラビ、体当たりだ」

 デーモンの懐に、ワラビが飛び込んでいった。

 さすがに一発で倒せなかったデーモンを、ワラビが一撃で倒す。

「めちゃくちゃ強くなってるよ、ワラビ。すごいね」

 ドラゴン装備って、とんでもないな。

「マスターツヨシの魔力を、いただいているからですよ」

「いやいや、ボクなんて……うわ!」

 背後から、デーモンが飛びかかる気配が。

 ボクは、とっさに剣を構えた。

 剣に向かっていくように、デーモンが真っ二つになる。

「ふえええ」

 チリになったデーモンを見て、ボクは唖然となった。

「自分から突進して、斬られちゃったよ」

「あのデーモンは、自分がどうやって負けたのかも知らずに散っていったようですね」

 ダンジョンから、ボクらはスクーターに乗って帰宅する。

「おかえりなさい」

「おかえりー」

 ヒヨリさんが、ピオンと一緒に出迎えてくれた。


 
 この家は実質、ボクたちだけが住むことに。
 お互いの実家へあいさつに回った後、ささやかな挙式を上げた。
 ギルドの人たちがセッティングしてくれて、いい結婚式になったと思う。
 さすがに、「新婚旅行でダンジョンはやめておこう」と、二人の意見は一致した。

 あらかたの行事を終えて、今日ようやくダンジョンに潜ったのである。

 ダンジョン配信で得たお金があるため、もうダンジョンに潜る必要はない。

 でも、ボクはダンジョン攻略がスキだ。

 危ないところへは行かないけど、まだダンジョンへは潜り続けるつもり。
 
「薬草です。ワラビがいっぱい集めてくれました」

「ありがとうございます、ツヨシさん。ワラビさん」

 ワラビを抱きしめながら、ヒヨリさんが腰掛ける。 

「ピオンもお留守番をしながら、畑を見ていたんですね?」

 きちんと整理された畑を見て、ワラビが感謝を述べた。

「わがはい、おてつだいー」

 ピオンの周りには、同じようなスライムが大量に飛び跳ねている。ピオンが分裂繁殖して、農耕班を結成したのだ。

「おう、ヒヨリ。エプロン姿が板についてきたじゃないか」

 いつもの車から、センディさんが降りてきた。

「センディさん! お久しぶりです!」

「オレだけじゃないぜ」

 センディさんとコルタナさん、メイヴィス姫様の姿も。

 ヒヨリさんの筑前煮を食べながら、みんなでうっとりする。

「引退なさるんですね?」

「ああ。もうやり尽くしたからな」 

 センディさんは、本格的に鍛冶の仕事に就いた。「自分がやりたいことは、やはり鍛冶」だと気づいたそうだ。ものづくりの家系で育ったから、センディさんも同じ道を歩むという。

「ダンジョンにも、たまに顔を出すよ。後進の育成も兼ねて」

「ボクも、参加していいですか?」

「バカ言えよ。お前さんは、オレの指導なんていらねえじゃないか。カムロ師匠でさえ、持て余すって言っているくらいなのによお」

 ガハハ、とセンディさんは笑う。

「姫様とコルタナさん、異世界の方はどうなんですか?」

「聞いてよお。書類の整理が終わらないの」

 メイヴィス姫が、ワラビに慰めてもらっている。

 コルタナさんは、メイヴィス姫についていって、元の世界に一旦帰った。王国に報告するためである。

 ボクたちの働きで、魔王ルクシオを倒し、ショウトウルたちドラゴンとも和解した。そのことで、事務処理が大忙しになったのだそう。

「大変ですね……なにか、差し入れをお届けします」

「地球のグルメを、ギルド経由で送ってきてほしい! なんか、オススメある?」

「桃のムースが、ワラビのお気に入りですね」

 果肉入りなのが、すばらしいのだとか。

「それ! お願い!」

 いいのかなあ? コンビニスイーツだよ?

「そういうのがいいの! あたしたち異世界人は、コンビニスイーツのようなものにこそ、興味があるんだから!」

 メイヴィス姫の力説に、ボクは苦笑いをした。


 慌ただしい面々が帰っていき、ボクとヒヨリさんの二人だけに。

「ボクは、幸せです。ヒヨリさんとピオンがいて、みんながいて、ワラビがいる。底辺配信者だったときには、そんなこと想像もできなかった」

「わたしもです」

 ボクは、ヒヨリさんと手をつなぐ。ワラビをヒザの上に乗せながら。

「マスターツヨシ、ありがとうございます」

「ボクの方こそ、ありがとう。ワラビ。これからも、よろしくね」
 
 
(完)

(番外編に続く)
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。

しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。 しかし―― 彼が切り捨てた仲間こそが、 実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。 事実に気づいた時にはもう遅い。 道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。 “荷物持ちがいなくなった瞬間”から、 アレクスの日常は静かに崩壊していく。 短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。 そんな彼と再び肩を並べることになったのは―― 美しいのに中二が暴走する魔法使い ノー天気で鈍感な僧侶 そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。 自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。 これは、 “間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる” 再生の物語である。 《小説家になろうにも投稿しています》

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

処理中です...