おひとり国王サマ ~毎日忙しい国王は、スキル【冒険の書】で冒険者の旅先へ一瞬でワープして日帰りプチ家出する~

椎名 富比路

文字の大きさ
11 / 47
第五章 おひとりさま難易度暫定一位、ひとりナイトプール。

第11話 刺激がほしい

しおりを挟む
 おひとりさまを楽しんで、結構経つ。

 深夜のラーメンは、うまかった。

 ソロ活温泉も堪能できて、満足である。
 
 キャンプではカレー作りの他に、ギターという変わった形のリュートの弾き方も教わった。
 
 しかし、もっと刺激がほしい。

 激辛も楽しかったが、あのレベルを超える面白いことはないだろうか?

 難易度の高い、おひとりさまってないかな。

 そんなことを考えていると、JK冒険者三人組が現れた。白ギャルのレンジャーをリーダーとして、黒ギャルダークエルフが魔法使い、オタクっぽいドワーフが前衛を仕切る。
 三人とも、同じ魔法科学校のブレザーに身を包む。だからオレは、コイツらを勝手に「JK」と脳内呼称していた。

「あーしら、ダンジョンの赤い月の洞窟に行ってきたんよね~」

 そのダンジョンは、オレも知っている。
 たしか、天井がぽっかり空いていて、そこで月を覗くと赤く見えるのだ。
 有識者によると、「ダンジョンにある地底湖の魔力じゃね?」という。が、細かい原理は解明されていない。
 魔物も弱いので、デートスポットや観光地としての側面が強いそうな。

「あの月は、ヤバいよね。定期的に、ナイトプールしたい。カレシと行ったら、ムード最高すぎて大ハッスルだよね」

「……まじやば」

 残る二人のJKも、同じようなリアクションを取る。 

 この歳で、もうカレシ持ちなのか。お前らのほうが、まじやばだな。

 オレに、天啓が降りてくる。

 そうだよ。ナイトプールだ! すげえ、刺激的な響きである。楽しそうな予感。

 ただオレは、詳しいやり方を知らないんだよなぁ。

 うむ。コイツらに聞いたらいいか。

「その、ナイトプールとやらは、やり方はどうやるのだ?」

「おじ~、そういうの興味あるわけ~?」

 白ギャルエルフなリーダーが、ニヤニヤする。

「こちとら、あまり外出する機会がなくてな。孫娘ともてんで話が合わなくなってきたところだ。ぜひとも教わりたい」

「そっか~。おじ、阻害されてそうだもんね」

 おうとも。絶賛阻害され中だし~。

「ドリンク作ったり~、音楽聴いたり~、水にライト浮かべたりするんよ~」

「なるほど、なるほど」
 
 オレは熱心にメモる。

 ナイトプールいいな。なんたる耽美な響き。

 これは、楽しそうだ。

「おじ、興味あんの? いっしょにやる?」

 黒ギャルのエルフが、オレに声をかけてきた。

「……どすけべ。よくぼうにちゅうじつ」

 オタクドワーフが、冷たい視線を向けてくる。

「いや、滅相もない。女性陣からのお誘いはありがたいが、あいにく所帯持ちでな。おいそれと出向くわけにはいかぬ。気軽に国を離れられん、面倒な身でな」

 まあ、気軽に外出できる能力はあるのだがな。

「そっか~。おじも大変だね」

「また、声をかけるよ。王おじ」

 エルフ二人組は、手を振った。

「……くっころの、よかん。でも、きょうみはある」

 女ドワーフは、意味不明な言葉を漏らす。くっころってなんだ?

 JK三人組が去った後、王妃がこちらにナイフのような視線を送ってくる。

「あなた、まさかあの方々にお熱なことはございませんわよね?」

「ございませんよ。オレがJKに熱を上げるとお思いか? 王妃よ」

 ナイトプールに興味があるのであって、あの女生徒たちに入れあげるわけではなくってよ。

「殿方は例外なく、若い女性がお好きなのは把握しておりまして。ですが、節度をわきまえねば、どのようなウワサを立てられるかわかったものではございません。ご自重なされませ」

「オレだって、社交界のはしくれよお。礼節くらい、わきまえてらあ」

「そんなぶっきらぼうな口調では、説得力のかけらもございませんわね」

 ほっといてくれい。

「とにかく、ソロガス王。夜遊びもほどほどになさるように。どこぞとも知れぬ女性が、赤子を抱いて、『王位を次ぐ資格ありし、御子でございます』なんて城に駆け込まれたりしたら、わたくしは生きた心地がございませんことよ」

 オレのほうが、生きた心地しねえよ!

 まったく。王妃は妄想がすぎるぜ。

「今度、デートにでも行くか? それこそ、ナイトプールなんてどうよ?」

「お心にもないことを、おっしゃらないでくださる? わたくしはもう、そんなことを言われてときめく歳ではございませんのよ」
 
 気にしすぎだと思うけどねえ。

「お夕飯の時間ですわ。参りましょう、ソロガス」

「うむ」

 オレは深夜のナイトプールに備えて、アルコールを控えた。

「あなた、最近ワインの量が減りまして?」

「それがなにか?」

「身体を壊されましたの?」

「美容と健康のためですぞ。オレだって、いつまでも若くはない。ムチャに飲み食いすれば、病むんですぞ」

「ええ。ご自愛なさっているのなら、結構なことで」

 普通に信じたか。

 こいつ、チョロいわー。

「わたくしはただ、本格的に夜遊びに出歩いているものだとばかり」

 うーん。こいつ、さといわー。アンテナが鋭い。

 ヘタに外出できんではないか。
 
「オレは体調を気にしているだけでな。特に他意はない」

「わかっております。では、おやすみなさいませ」

「おう。気を付けて」

 あいつと寝室を別にして、どれくらい経ったろう?

 まあ、その分オレの深夜の大冒険ははかどるわけなのだが。

 さて、水着を用意して、【冒険の書】、発動だ!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~

ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。 休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。 啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。 異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。 これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。

【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ
ファンタジー
10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~ 大筋は変わっていませんが、内容を見直したバージョンを追加でアップしています。単なる自己満足の書き直しですのでオリジナルを読んでいる人は見直さなくてもよいかと思います。主な変更点は以下の通りです。 話数を半分以下に統合。このため1話辺りの文字数が倍増しています。 説明口調から対話形式を増加。 伏線を考えていたが使用しなかった内容について削除。(龍、人種など) 別視点内容の追加。 剣と魔法の世界であるライハンドリア・・・。魔獣と言われるモンスターがおり、剣と魔法でそれを倒す冒険者と言われる人達がいる世界。 高校の休み時間に突然その世界に行くことになってしまった。この世界での生活は10日間と言われ、混乱しながらも楽しむことにしたが、なぜか戻ることができなかった。 特殊な能力を授かるわけでもなく、生きるための力をつけるには自ら鍛錬しなければならなかった。魔獣を狩り、いろいろな遺跡を訪ね、いろいろな人と出会った。何度か死にそうになったこともあったが、多くの人に助けられながらも少しずつ成長し、なんとか生き抜いた。 冒険をともにするのは同じく異世界に転移してきた女性・ジェニファー。彼女と出会い、ともに生き抜き、そして別れることとなった。 2021/06/27 無事に完結しました。 2021/09/10 後日談の追加を開始 2022/02/18 後日談完結しました。 2025/03/23 自己満足の改訂版をアップしました。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

処理中です...