43 / 47
最終章 国王、ちきゅうに立つ
第43話 国王、地球の文化に触れる
しおりを挟む
吟遊詩人・マティナ。
かつてオレがアコギの練習をしようと、【冒険の書】で辺境の山へ行ったときに出会った少女だ。カレーを食わせたお礼に、オレはマティナからギターを教わったのである。
冒険をしていない状態だと、こんなに大人の女性だったとは。
しかもマティナは、オレがソロガス・キヤネン国王であると知っている、唯一の冒険者だ。
「あなた、もういいわよ」
「えっ。でも」
「この人は、ローガンといってね。あたしのお得意先なの」
日鳥山 ティナ氏はさっきの女性店員を下がらせる。
「お得意さんとお話してくるから、あなたは接客をお願い」
「でしたら」と、女性店員はこちらをチラ見しつつも、他の客の応対を始めた。
「すまん。会計に手間取った」
「結構です。こちらで済まさせていただきます」
おまけに、採寸までしてもらえた。それもタダでいいという。
「いや、悪いよ」と断ったが、問答無用で話を通される。
「とんでもない。あなたとお話できる機会だけで、十分お代金分の経験をさせていただけるので」
そこまでしてもらえるなんて。
「ただ、両替はしておいたほうがいいわね。金貨を見せてください」
「うむ」
オレは、金貨数枚を、見せた。あと、宝石も。
「そうね。換金可能なアイテムは、ざっとこんなものでしょう」
現地のお金に変えられそうなものを、店主が適当に見繕ってくれた。
「確認いたしますが、『こちらの世界に、あちらのアイテムを持ち込んではいけない』とかのルールは、ございます?」
「問題ない。金貨などは、こちらの世界の物質に変わる。価値も変わらない」
「ならば結構。では、これだけご用意させていただきましょ」
結構な金額を、もらう。
「遠慮なさらず。両替しても、これ以上の額になることでしょう。その差額も、後にお渡しいたします」
日鳥山店長は、店を閉めた。
続いて、この世界の質屋に。そこでも、大金をいただいた。
「あっちの世界の金貨で、億万長者になっちまった」
あやうく、無一文扱いになるところだったが。
「いいんじゃない? どうせこっちのお金なんて、元の世界に帰ったら価値なんてなくなるわよ」
それもそうか。では、遠慮なくいただいておこう。
「すまんが、日鳥山氏。ここがどういう世界か、教えていただきたい」
オレが尋ねると、店主は「ティナでいいわ」と返答してきた。
「詳しい話は、お昼してからにしましょ」
「そうだな。今の時刻が昼間なのも気になっているし」
【冒険の書】を起動させたときは、深夜だったのに。
「何がほしいかしら?」
「オレたちといったら」
「わかるわ。カレーよね」
ティナの誘いで、この世界にあるカレー屋に案内してもらう。
こっちのカレーは、食券を買って食べるスタイルか。
「辛さも選べるわよ」
「いや。この世界の普通を味わいたい。味変は、それからだな」
「いい心がけね」
ティナは、「二〇倍は辛い」というメニューを頼んでいた。
おごると言ってくれたが、せっかくなので断る。
この際、自分で会計をしてみようではないか。
差込口に紙切れみたいなお札を差し込むと、ひとりでに吸い込まれていった。
「なんという、文明の力だ。こんな紙切れが、金の代わりなのか」
釣りの銅貨が、取り出し口から吐き出される。
「おお。これまた文化的だ」
ちなみにティナは、冒険者証のような薄い板を、コンソール板に当てていた。あれが、「電子マネー」というやつか。我々の国には、まだ早い文化だろうな。
さて、カレーが来たぞ。
「うまい!」
思わず、大声を出してしまう。
「今まで食ったこともない、なんの雑味もないカレーだ。こんなに洗練されているのか」
あまりに大きすぎる表現を出してしまい、オレはかしこまる。
「いいのよ。外国人観光客だって、似たようなリアクションを取るわ」
「しかし、最高にうまいな。何杯でも食えそうだ」
「何杯でもおかわりしてね」
「そうさせてもらう。おかわりだ」
オレはお代わりの際に、少しずつ辛さを上げてみた。
一〇倍を食って、己の限界を感じる。
「うむ。馳走になった」
これだけ食っても、そんなに金を取られないとは。
腹も心も満たしてくれる上に、財布にも優しい。
「普段、ギターは持ち歩いていないんだな」
「さすがに、本業では使わないわ。あれは、夜のバーで演奏するのよ」
昼は洋服売り場で働き、夜はバーにいるのか。それは楽しみだ。
「せっかくこっちに来たんですもの。時間の許す限り遊んでってちょうだい」
「驚かないんだな? いわゆる異世界からの訪問者だぜ?」
「見ず知らずの人物が訪ねてきたら、あたしだって警戒するわ。あなたは、信頼できるもの。ローガンって呼んだほうがいいかしら?」
「いや。ソロガスでいい」
ここに、オレのことを知る人物はいない。冒険者に発見されても、「そういうものなんだろうな」と片付けられるはずだ。第一、ティナがこんな反応だから。
「ティナよ、ここはどういう国なのだ? やけに高度な文化が発達しているようだが」
「ここですか。ここは地球ですよ。あなたたちの住む世界とは、まったく違う世界でしょうね」
ちきゅうとな?
かつてオレがアコギの練習をしようと、【冒険の書】で辺境の山へ行ったときに出会った少女だ。カレーを食わせたお礼に、オレはマティナからギターを教わったのである。
冒険をしていない状態だと、こんなに大人の女性だったとは。
しかもマティナは、オレがソロガス・キヤネン国王であると知っている、唯一の冒険者だ。
「あなた、もういいわよ」
「えっ。でも」
「この人は、ローガンといってね。あたしのお得意先なの」
日鳥山 ティナ氏はさっきの女性店員を下がらせる。
「お得意さんとお話してくるから、あなたは接客をお願い」
「でしたら」と、女性店員はこちらをチラ見しつつも、他の客の応対を始めた。
「すまん。会計に手間取った」
「結構です。こちらで済まさせていただきます」
おまけに、採寸までしてもらえた。それもタダでいいという。
「いや、悪いよ」と断ったが、問答無用で話を通される。
「とんでもない。あなたとお話できる機会だけで、十分お代金分の経験をさせていただけるので」
そこまでしてもらえるなんて。
「ただ、両替はしておいたほうがいいわね。金貨を見せてください」
「うむ」
オレは、金貨数枚を、見せた。あと、宝石も。
「そうね。換金可能なアイテムは、ざっとこんなものでしょう」
現地のお金に変えられそうなものを、店主が適当に見繕ってくれた。
「確認いたしますが、『こちらの世界に、あちらのアイテムを持ち込んではいけない』とかのルールは、ございます?」
「問題ない。金貨などは、こちらの世界の物質に変わる。価値も変わらない」
「ならば結構。では、これだけご用意させていただきましょ」
結構な金額を、もらう。
「遠慮なさらず。両替しても、これ以上の額になることでしょう。その差額も、後にお渡しいたします」
日鳥山店長は、店を閉めた。
続いて、この世界の質屋に。そこでも、大金をいただいた。
「あっちの世界の金貨で、億万長者になっちまった」
あやうく、無一文扱いになるところだったが。
「いいんじゃない? どうせこっちのお金なんて、元の世界に帰ったら価値なんてなくなるわよ」
それもそうか。では、遠慮なくいただいておこう。
「すまんが、日鳥山氏。ここがどういう世界か、教えていただきたい」
オレが尋ねると、店主は「ティナでいいわ」と返答してきた。
「詳しい話は、お昼してからにしましょ」
「そうだな。今の時刻が昼間なのも気になっているし」
【冒険の書】を起動させたときは、深夜だったのに。
「何がほしいかしら?」
「オレたちといったら」
「わかるわ。カレーよね」
ティナの誘いで、この世界にあるカレー屋に案内してもらう。
こっちのカレーは、食券を買って食べるスタイルか。
「辛さも選べるわよ」
「いや。この世界の普通を味わいたい。味変は、それからだな」
「いい心がけね」
ティナは、「二〇倍は辛い」というメニューを頼んでいた。
おごると言ってくれたが、せっかくなので断る。
この際、自分で会計をしてみようではないか。
差込口に紙切れみたいなお札を差し込むと、ひとりでに吸い込まれていった。
「なんという、文明の力だ。こんな紙切れが、金の代わりなのか」
釣りの銅貨が、取り出し口から吐き出される。
「おお。これまた文化的だ」
ちなみにティナは、冒険者証のような薄い板を、コンソール板に当てていた。あれが、「電子マネー」というやつか。我々の国には、まだ早い文化だろうな。
さて、カレーが来たぞ。
「うまい!」
思わず、大声を出してしまう。
「今まで食ったこともない、なんの雑味もないカレーだ。こんなに洗練されているのか」
あまりに大きすぎる表現を出してしまい、オレはかしこまる。
「いいのよ。外国人観光客だって、似たようなリアクションを取るわ」
「しかし、最高にうまいな。何杯でも食えそうだ」
「何杯でもおかわりしてね」
「そうさせてもらう。おかわりだ」
オレはお代わりの際に、少しずつ辛さを上げてみた。
一〇倍を食って、己の限界を感じる。
「うむ。馳走になった」
これだけ食っても、そんなに金を取られないとは。
腹も心も満たしてくれる上に、財布にも優しい。
「普段、ギターは持ち歩いていないんだな」
「さすがに、本業では使わないわ。あれは、夜のバーで演奏するのよ」
昼は洋服売り場で働き、夜はバーにいるのか。それは楽しみだ。
「せっかくこっちに来たんですもの。時間の許す限り遊んでってちょうだい」
「驚かないんだな? いわゆる異世界からの訪問者だぜ?」
「見ず知らずの人物が訪ねてきたら、あたしだって警戒するわ。あなたは、信頼できるもの。ローガンって呼んだほうがいいかしら?」
「いや。ソロガスでいい」
ここに、オレのことを知る人物はいない。冒険者に発見されても、「そういうものなんだろうな」と片付けられるはずだ。第一、ティナがこんな反応だから。
「ティナよ、ここはどういう国なのだ? やけに高度な文化が発達しているようだが」
「ここですか。ここは地球ですよ。あなたたちの住む世界とは、まったく違う世界でしょうね」
ちきゅうとな?
0
あなたにおすすめの小説
#密売じゃありません!ミツバイギフトで最高に美味しい果物作ったら、領主令息が夫になった件について
国府知里
ファンタジー
「がんばっても報われなかったあなたに」“スローライフ成り上がりファンタジー”
人生に疲れ果てた北村めぐみは、目覚めると異世界の農村で少女グレイスとして転生していた。この世界では6歳で神から“ギフト”を授かるという。グレイスが得た謎の力「ミツバイ」は、果物を蜜のように甘くするという奇跡の力だった!村を、領地を、やがて王国までも変えていく果樹栽培の物語がいま始まる――。美味しさが未来を育てる、異世界農業×スローライフ・ファンタジー!
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました
黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。
彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。
戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。
現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと!
「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」
ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。
絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。
伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進!
迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る!
これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー!
美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。
人生、逆転できないことなんて何もない!
【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~
月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』
恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。
戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。
だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】
導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。
「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」
「誰も本当の私なんて見てくれない」
「私の力は……人を傷つけるだけ」
「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」
傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。
しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。
――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。
「君たちを、大陸最強にプロデュースする」
「「「「……はぁ!?」」」」
落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。
俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。
◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる